Glyph Interfaceで他社と差別化をした一方で、機能的にはミドルレンジ上位のモデルとしてそつなくまとめられているNothing Phone(1)だが、日本での価格は6万9800円(税込み)と手ごろで、コストパフォーマンスは比較的高い。スマートフォン市場に新規参入し、これまでの端末とは違った方向性を打ち出す方針を聞くと、どうしてもBALMUDA Phoneを思い出してしまうが、こと価格に関しては、適正範囲といえる。
一方で、ローカライズに関しては、今後の課題だ。代表的なのが、おサイフケータイ。Nothing Phone(1)に搭載されているNFCはType-A、Bのみで、FeliCaには非対応。日本初参入どころか、スマートフォンの開発も初めてのメーカーにおサイフケータイ対応まで求めるのは少々酷な要求かもしれないが、先に挙げたBALMUDA Phoneのように、第1弾モデルから対応した事例もある。海外メーカーのミドルレンジモデルが軒並み搭載しているなか、道具として使うには物足りなさを感じた。
そもそも、Nothing Technologyがこうしたニーズを把握しているのかにも疑問が残る。同モデルの発表に先立ち、日本で開催されたプレブリーフィングでは、おサイフケータイに対応しているかどうかの質問が挙がっていた。これに対し、Nothing Technologyのマーケティングを統括するアキス・イワンジェリディス氏はブロックチェーン対応のウォレット機能の話を始め、質問と回答がかみ合っていない一幕があった。参加申し込み時に集めた質問を読み上げるだけで、訂正や確認の機会がなかったのは非常に残念だと強調しておきたいが、日本市場に対する解像度は低いことがうかがえる。
Nothing Technologyが起業した際には、「日本市場の優先順位は高くなった」(ペイ氏)という。ところが、Nothing ear(1)発売後の反響を見て、「その結果が考えを変えた」(同)。同社のWebサイトには日本からのアクセスも多く、国別では5位につけていたという。また、「日本は世界の文化的な中心の1つで、日本でスタートしたトレンドは世界中に広がる」(同)ことも、日本市場に早くから参入した理由の1つだ。
Nothing ear(1)発売後の判断となると、市場の分析に十分な時間が取れなかった可能性もある。同社設立時からアイデアはあったというNothing Phone(1)だが、実際の「開発を始めたのは2021年9月ごろ」(同)。発売まで1年にも満たない。仮にニーズをくみ取れていたとしても、製品に反映させるのは難しかったはずだ。ペイ氏が「日本におけるローカルチームを強化しなければならない」と語っていたように、こうした点は同社でも課題だと認識しているようだ。
とはいえ、おサイフケータイがないからと言って、必ずしもその端末が売れないわけではない。実際、オープンマーケットに投入されたスマートフォン、特に廉価モデルの中には、グローバル版ほぼそのままの仕様ながら、それなりにヒットしているモデルもある。独自性の高いGlyph Interfaceや、洗練されたデザインが評価されれば、日本市場に爪あとを残すことができそうだ。現時点では公式ストア以外の販路が明かされていないが、どのように販売されるかにも結果は左右されそうだ。
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