Googleは、Pixel aシリーズの最新モデルとなる「Pixel 6a」を7月28日に発売する。Googleのオンラインストアで販売されるのに加え、キャリアではKDDIとソフトバンクが取り扱う。価格はGoogle直販が5万3900円(税込み、以下同)。KDDIはそれよりやや安い5万3270円で、ソフトバンクは6万7680円で販売する。KDDIとソフトバンクは、約2年後に端末を返却すると残債の残価や半額が免除されるアップグレードプログラムにも対応する。
Pixel aは、Pixelの普及を後押しするために開発された廉価モデルのシリーズだ。初めて登場したのは2019年のこと。Pixel 3をベースにしたミッドレンジモデルとして「Pixel 3a」が発売された。その後も、「Pixel 4a」「Pixel 4a(5G)」「Pixel 5a(5G)」と立て続けに後継モデルが投入されてきた。一方で、新たに発売されるPixel 6aは、その役割が既存のモデルとは少々異なっている。ここからは、Googleが廉価モデルの位置付けを変えようとしていることがうかがえる。
もともとのPixel aシリーズは、プロセッサの性能やボディーの素材感などをフラグシップモデルのPixelから削りつつも、カメラ性能を維持することで、ミッドレンジモデルの中で差別化を図っていた。AIを最大限活用したコンピュテーショナルフォトグラフィーは、Googleが得意とする分野。その魅力をより多くのユーザーに体験してもらうために導入されたのが、Pixel aシリーズだった。一言で特徴を表すなら、フラグシップモデル並みの撮影ができる廉価モデルといえる。
一方で、プロセッサの違いもあり、コンピュテーショナルフォトグラフィーの処理にはやや時間がかかることもあった。アルゴリズムの改善で、世代を経るごとに差分は少なくなっていたが、処理能力の違いはカメラ以外にも影響を与える。アプリ、特にグラフィックスを多用したゲームはその1つだ。本体の素材感も価格なりのチープさで、色数も抑えられていた。ミッドレンジモデルを開発する限られた予算を、カメラに集中投下したがゆえに、他にしわ寄せがきていたことは否めない。
これに対し、GoogleはPixel 6導入時に、その戦略を大きく転換した。同社のプロダクトマネジメントディレクターのソニヤ・ジョバンプトラ氏は、「Pixel 6の世代からカスタムSoC(System on Chip)を使い、さまざまなユーザーエクスペリエンスを実装していく戦略に切り替えている」と語る。この方針は廉価モデルにも適用しており、「頭脳であるSoCや、Wi-Fi、Bluetoothといった通信機能およびセキュリティを(上位モデルと廉価モデルで)共通化する方向に変えている」(同)という。
実際、Pixel 6aは2021年10月に発売された「Pixel 6」や「Pixel 6 Pro」と同じ、「Tensor」が採用されている。Tensorは、Googleが培ってきたAIの技術を最大限生かせるよう設計されたプロセッサ。これを搭載することで、カメラの画質を向上させた他、リアルタイムに字幕を出せる翻訳機能やデバイス上で全ての処理を完結させる文字入力機能などを実現。後からTensor非搭載にPixelにも拡大したが、ボイスレコーダーの日本語文字起こしも、Pixel 6で導入された機能だ。
Pixel 6aも、Tensorを採用することで、これらの上位モデルと同じ機能を利用できる。Googleが注力したのは、「Pixelのコアとなるユーザーエクスペリエンスを、そのまま維持すること」(同)。廉価モデルゆえに、メモリ(RAM)は6GBでPixel 6やPixel 6 Proより少なく、カメラもセンサーを変更しているが、「ユーザーエクスペリエンスが落ちることがないよう、ソフトウェアチームと協力し、ハードウェアの“譲歩”を補完した」(同)。
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