スマホ復活のHTCは“激戦区の日本市場”でどのように再起を図るのか石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2022年09月03日 08時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 約4年ぶりに、HTCが日本市場にスマートフォンを投入する。10月1日に発売されるのが、メタバースを売りにした「HTC Desire 22 pro」だ。HTCは、スマートフォンメーカーとして老舗だが、2016年ごろからVRにも注力してきた。2017年には、Googleが同社のスマートフォン事業の一部を買収。旧HTCのチームは、Pixelシリーズの開発に従事している。スマートフォン事業を売却という形で縮小したこともあり、最近ではむしろVIVEのメーカーとしての名を聞くことの方が多くなっていた。

HTC HTC NIPPONは、9月1日に約4年ぶりとなる新モデルのHTC Desire 22 proを発表した

 一方で、Googleが買収したのは、あくまで事業の一部。HTC自身もスマートフォンの開発は継続していた。このような状況の中、同社は自身の強みであるVRやメタバースのブランドを、スマートフォンに展開。その第1弾となるモデルが、HTC Desire 22 proだ。長らく日本市場へのスマートフォン投入を見送っていたHTCだが、なぜ今、再始動するのか。ここでは、そんなHTCの狙いを読み解いていきたい。

VIVEで培ったノウハウをスマートフォンに注入、端末の最適化でVR初心者層も狙う

 HTC Desire 22 proは、日本市場で約4年ぶりとなるHTCのスマートフォン。2018年7月に発売されたフラグシップモデルの「HTC U12+」以来となり、同社は長らく日本のスマートフォン市場から姿を消していた格好になる。ミッドレンジモデルのシリーズであるDesireが投入されるのは7年ぶり。2015年に発売された「HTC Desire EYE」や「HTC Desire 626」以降は、上記のようなハイエンドモデルに特化してきた。

HTC HTC Desire 22 proは、同社の発売するVIVE Flowに最適化したスマートフォンだ
HTC ミドルレンジのDesireシリーズは、実に7年ぶり。写真は2015年10月に発売されたHTC Desire EYE(左)とHTC Desire 626(右)

 グローバルでは、2017年にGoogleが同社のスマートフォン事業を一部買収して以降も端末の開発は継続していたが、ラインアップは大幅に縮小している。ライセンス提供を受けた別の企業がエントリーモデルのWildfireシリーズを展開するなど、ブランド自体は継続していたものの、「日本では、HTCにハイエンドが求められてきた」(HTC NIPPON 代表取締役社長 児島全克氏)こともあり、投入が見送られてきたという。

 その間、HTCはVRやメタバースに活路を見いだし、VRヘッドセットのVIVEシリーズを開発。グローバルはもちろん、日本でも“VRの会社”としての知名度が高まっている。MWCなどのイベントでも、スマートフォンではなく、VIVEを中心としたVRの展示が中心になっていた。HTC Desire 22 proは、そんなVIVEで培ったVRの技術やブランド力を生かした端末だ。

HTC 2016年ごろからVRの比重が高まっていることが分かる。このノウハウやブランド力を、もともと得意としていたスマートフォンと融合させた

 同モデルは、HTCのメタバースプラットフォーム「VIVERSE」に対応しており、スマートフォンと接続して利用するVRグラスの「VIVE Flow」に最適化されているという。単体販売に加え、VIVE Flowの同梱販売も予定。スマートフォンのいち周辺機器としてVRなりメタバースなりがあるのではなく、中心はあくまでVIVE Flow。HTC Desire 22 proは、それ快適に動かす“エンジン”としての役割に近い。スマートフォンとVR、双方の技術開発を続け、ブランド力を磨いてきた同社ならではの端末といえる。

HTC 単体販売はもちろん、VRグラスのVIVE Flowとのセット販売も行われる

 とはいえ、VIVE Flowはスマートフォンとの接続を前提にしており、既に販売されているVRグラスだ。対応する端末さえ持っていれば、HTC Desire 22 proをあえて選ぶ必要はない。一方で、VIVE Flowは接続にMiracastを使い、著作権保護が施された動画の再生には「HDCP」も利用しているため、特にエントリーモデルやミドルレンジモデルの場合、接続できたとしても全ての機能を使えない恐れがある。

HTC ミドルレンジモデルながら、VIVE Flowとの接続に必要となる全ての仕様を満たしている

 最新モデルで一例を挙げると、ソニーの「Xperia 10 IV」はHDCPに非対応。シャープの「AQUOS sense6」は、Wi-Fiでのディスプレイ出力自体が利用できない。より廉価な「Xperia Ace III」や「AQUOS wish2」は言わずもがなだ。これに対し、HTC Desire 22 proは「Snapdragon 695 5G」を採用するミドルレンジモデルながら、MiracastとHDCの双方に対応している上、「VIVE Flowを駆動させるための給電機能も備える」(HTC NIPPO バイスプレジデント 川木富美子氏)。

 接続用のアプリやVIVERSEへのリンクも備えており、買ってきてすぐにVIVE Flowを楽しめる。「このコンビネーションで、われわれの考えるメタバースの世界に簡単につながれる」(同)というわけだ。VRやメタバースを体験してみたいものの、自分のスマートフォンが対応しているかどうか分からない。HTC Desire 22 proは、そんなハードルを下げるための端末だ。その意味では、初心者をVRなりメタバースなりの世界に導くための1台といえる。

HTC
HTC VIVE Flowとの接続に使うアプリや、VIVERSEへのショートカットなどがプリインストールされている。買ってすぐにメタバースを楽しめるというわけだ
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