得意のVRやメタバースを武器に、スマートフォン市場で再起を狙うHTCだが、同社不在の4年間で、市場の構造は大きく変わった。2019年10月には電気通信事業法が改正され、端末購入補助への制限がかかり、それと前後してミドルレンジモデルが台頭。この市場でシェアを伸ばしていたHuaweiが米国の制裁でスマートフォンを発売できなくなる中、OPPOやXiaomiといった中国メーカーが続々と日本に参入している。約4年前より競合が増え、今やミドルレンジの市場は激戦区だ。
新規参入を果たしたOPPOやXiaomiは、コストパフォーマンスの高さを売りにしている。Snapdragon 695 5Gを搭載するHTC Desire 22 proと同クラスの端末は、4万円台が相場。「もともと1ドル=110円ぐらいで見積もっていたが、今は為替が1.2倍、1.3倍ぐらいになっている。何とかギリギリの線で抑えた」(児島氏)というものの、6万4900円(税込み、以下同)という価格設定はやや割高なように見える。VIVE Flowとのセットは11万4900円で、それぞれを単体で購入するより安くなるが、価格面でのインパクトは弱い。
4年間、店頭から不在だったこともあり、販路をどう再構築していくのかも課題といえる。児島氏は、「現時点では希望になるが、いろいろなMVNOや家電量販店を含め、発売に向けて順次販路を広げていきたいと思っている」と語るが、現時点では、VIVEシリーズを扱う同社のECサイトでしか予約ができない。サポート体制について明かされていない点が多いのも、購入を検討するユーザーにとっての不安材料だ。
一方で、VRやメタバースは、キャリア各社も力を入れようとしている分野。コンシューマー向けの5Gと相乗効果を生む、キラーサービスの1つと目されているからだ。例えば、ドコモはAR技術を活用した「XR City」を7月に商用化。KDDIも、「バーチャル渋谷」などの取り組みを通じてメタバースに推進している。ソフトバンクは、メタバースプラットフォーム上に仮想の携帯ショップを開設した他、福岡PayPayドームもメタバース化した。
VIVE Flowに最適化したHTC Desire 22 proはこうしたサービスを生かせる端末で、サービスを花開かせたいキャリア側にもタッグを組むメリットはある。HTC J、HTC J butterflyを開発、発売したときのような連携は、HTCがスマートフォン市場で復活するために不可欠といえる。スマートフォンとVR、メタバースの両輪で継続的に走り続けてきたほぼ唯一のメーカーなだけに、一歩進んだ取り組みにも期待したい。
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