インタビュー
» 2018年08月13日 11時32分 公開

SIMロックフリースマホメーカーに聞く:約10万円 SIMフリースマホ「HTC U12+」の勝算は? HTC NIPPON児島社長に聞く (1/3)

SIMロックフリースマホ「HTC U12+」のお値段は約10万円。3万円前後の端末がボリュームゾーンになるSIMフリースマートフォン市場で、異彩を放つ存在といえる。HTCの勝算はどこにあるのか? HTC NIPPONの児島社長に聞いた。

[石野純也,ITmedia]

 Snapdragon 845を搭載し、カメラもデュアルカメラで仕上がりがよく、しかもおサイフケータイにも対応しているスマートフォン。それが、HTCのフラグシップモデルとなる「HTC U12+」だ。同モデルの価格は約10万円(HTCオンラインストアで税別9万5000円)。3万円前後の端末がボリュームゾーンになるSIMフリースマートフォン市場で、異彩を放つ存在といえる。

 日本市場では主にキャリア向けにフラグシップモデルを提供してきたHTCだが、3月上旬にはauやソフトバンクが販売していた「HTC U11」をSIMロックフリーモデルとして発売。2社が取り扱いを見送っていたソーラーレッドを送り出した。その流れを受け、最新モデルのHTC U12+は当初からSIMフリー市場で3色展開する形となった。

HTC U12+ 「HTC U12+」。左からフレームレッド、トランスルーセントブルー、セラミックブラック

 一方で、SIMロックフリースマホといえば、やはりミドルレンジが主戦場だ。月々サポートや毎月割、月月割といったいわゆる“端末購入補助”が付かないこともあり、どうしても売れ筋の価格帯は3万円前後に集中する。このような状況の中で、HTCの勝算はどこにあるのか。HTC NIPPONで代表取締役社長を務める児島全克氏に話を聞いた。

SIMフリーでおサイフケータイに対応させる苦労

HTC U12+ HTC NIPPONの児島全克社長

―― このタイミングでハイエンドモデルを投入したことには驚きました。かなり思い切ったのではないでしょうか。

児島氏 かなりのチャレンジですね。税別で10万円を切るよう、価格設定ではかなり無理をしましたが、そういう端末は世の中にあまりありません。これは、相当なチャレンジだと思っています。

 理由の1つは、HTC U11のソーラーレッドが好評だったことです。メインの購買層はほとんどがHTCのファンでしたが、そういうものがウケている。SIMフリー市場全体を見ても、安いものだけでなく、だんだんと高機能なものも出ています。そこでチャレンジをして、市場の反応を見たいというのが1つの狙いです。

 もう1つの理由としては、今年(2018年)はキャリアモデルを出していないことが挙げられます。キャリアモデルとなると、数も大きくなり、お客さまにとっても大きな割引があるため、最初から出さないという方針で臨んだわけではありません。ただ、今回はこのような形になり、どうしようかというところがありました。

 HTCは未来を見据えています。ですから、年に1回、2回の商品を出すことで、ブランドを示すチャレンジをする必要があるとか思いました。

―― HTC U11のソーラーレッドも対応していましたが、海外メーカーの端末がおサイフケータイにしっかり対応しているのも、珍しいと思いました。

児島氏 これは難しかったです。HTCは海外メーカーですが、早くからFeliCaを搭載したメーカーでもあるので、テクニカルに難しいというわけではありませんが、ワークロード的に非常に厳しいものがありました。もう1つは、FeliCa NetworksさんやJRさんなどとの契約があり、それ以外にも楽天Edyの楽天さんなど、おサイフケータイにはいろいろな会社があります。そういう契約を、(SIMフリーの場合)メーカーが1つ1つ取り付けていかなければなりません。

―― そこはSIMフリースマートフォンを出すメーカー向けに、もっと簡略化できる仕組みが欲しいですね。

児島氏 そうですね。お客さまのデータも、キャリアの端末の場合、キャリアのサーバ側にデータベースを持つ仕組みになっています。SIMフリーの場合、キャリアと同じ立ち位置のところがないので、その対応も必要でした。

―― 確認ですが、HTC U11のソーラーレッドに載っていたものも、キャリア版とは別に開発したのでしょうか。

児島氏 HTC U11とHTC U12+は、完全に別になります。キャリア版をそのまま流用するということはできません。

―― そこまで苦労して搭載したのは、なぜでしょうか。海外メーカーの中にはおサイフケータイは見送るところも少なくありません。

児島氏 もともと載せるつもりでした。ハイエンド端末で防水やFeliCaがなく、しかも10万円を超えている端末はありえないと思ったからです。ハードルは非常に高いことは承知の上で、あえて搭載に踏み切りました。

最初は“のっぺらぼう”のようなデザインだった

―― これはグローバルでの共通仕様ですが、電源キーやボリュームキーまでセンサーになっています。かなり思い切った仕様ですね。

児島氏 HTC U11のときにボタンレスのデザインも作っていて、どうしようかという話がありました。さすがにないとマズいのではということで、HTC U11では搭載することになりましたが、そのコンセプトをHTC U12+で実現した形になります。

―― 一度は見送ったコンセプトを、再度採用したのはなぜでしょうか。

児島氏 HTC U12+も、当初はボタンの形すらない、まったくの“のっぺらぼう”でした。ただ、さまざまな試行錯誤を重ねましたが、やはりこれはまだ早いということで、ボタンのようなふくらみは残しています。一歩先を考えて、半歩ずつ下がる形になっていますね(笑)。市場の方々のフィードバックを聞きながら、考えています。

―― ボタンではありませんが、ボタンのような形にしたのはなぜでしょうか。

児島氏 そこにボタンがあるということを認知してもらうためです。エンジニアリングサンプルでは完全なフラットで、私たちが見たときもちょっとへこみがあるぐらいのデザインでしたが、マーケティング調査をかけたら、やはり分かりづらいということで今のような形になっています。

―― メリットとしては、やはり防水を実現しやすいことや、可動部が少なくなることによる故障を防げることがあるのでしょうか。

児島氏 それもありますが、もともとは究極のコンセプトとして、握り方、触り方、持ち方の組み合わせで、電源オンから操作までを全てできるというものがありました。最終的にはそれを目指していますが、HTC U12+でも、ボタンを押すのではない、電源オンの形を実現しています。

―― ナビゲーションキーにソフトウェアキーとして電源キーを置けるのも、その一環ということですか。

児島氏 何であんなに複雑なナビゲーションキーになったのかは、よく分りません(笑)。マーケティング調査の結果、シンプルなものと複雑なものを両方入れ、ユーザーさんに選んでいただくようにしました。

HTC U12+ 握る、持つ、タップするだけでさまざまな操作ができる「エッジセンス2」に対応
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