―― 最近だと、1万円台や2万円台前半の端末もありますが、そこでは勝負しないということでしょうか。
児島氏 ラインアップの中には、1万円台の価格の端末もありますが、これは特別な地域に向けた、特別な端末です。このクラスの端末は今すごくたくさん出ていますが、ここではHTCは戦えないと思っています。安く作れるメーカーさんに真っ向から戦いを挑んでも、勝つことができません。何か1つ、HTCならではのものがある製品でないとダメだと思います。
―― きちんと作り込んでいるという意味では、日本のあまりメジャーではない周波数までしっかりカバーしているのはさすがだと思いました。グローバルメーカーでここまでやるのも珍しいですね。
児島氏 お金がかかりますからね。日本でのHTCは、そこまで大きな存在ではありません。知っている人は知っているぐらいでしょうか。そこは課題ですが、逆に、ドコモモデル、KDDIモデル、ソフトバンクモデルを作ることができないため、簡単にいえばジャパンモデルとして、必要な周波数を1台でカバーしています。その中にどの周波数を入れ込んでいくのかは、われわれの方で検討しています。
―― 今後、日本市場でどのようにしていきたいのでしょうか。目標などがあればお聞かせください。
児島氏 今回、HTC U12+を出しましたが、これが1つの試金石になり、2020年に向けて変化をしていきます。その変化の1つとして、新しい試みをいろいろな分野で進めているところです。説明だけでは分かりづらいかもしれませんが、HTC U12+自体も進化させていきます。
グローバルでは今年、セキュリティフォンということで、「Exodus」という端末を出します。これは何かというと、ブロックチェーンスマートフォンです。ハードウェア的にブロックチェーンを組み込んだまったく新しい端末ですが、その一部のソフトウェアをHTC U12+にも出していく予定です。
「クリプトキティーズ」という、猫を勝って交配させ、それを売買したりするゲームですが、これはビットコインのように、猫を育てることが投資にもなっています。ブロックチェーンを試してもらうために、まずはHTC U12+にこれを入れていく予定です。
また、5Gも実際の製品を今開発しているところで、近々見ていただけるようになります。5Gのレーテンシー(遅延)になれば、極端な話、プロセッサごとクラウド側に置いておくこともできます。そうすれば、VIVEよりももっと軽いVRがグラスもできる期待もあります。そういうものも目指しています。
VR、ARやAI,ブロックチェーンなど、さまざまなものがこのスマートフォンの上で動くようになります。われわれはHTC U12+をその第一歩と位置付けていて、まだお話できないものも含め、今年中にも何回か発表をさせていただくことになると思います。
結果としてSIMロックフリースマートフォンとして発売されたHTC U12+だが、児島氏の話を聞く限り、やはり同時に大手キャリアへもアプローチしていたようだ。価格を考えると、SIMフリー市場ではどうしても販売できる台数が少なくなってしまう。一方で、キャリアから出せない時点で端末そのものの投入を見送ってしまうと、ブランドが途切れてしまうことになる。その意味で、SIMフリースマートフォンとしてHTC U12+を発売した判断は、正解だったと感じた。
SIMフリースマートフォン市場全体を見ても、ここまでのハイエンド端末は少なく、差別化はしっかり図れている印象だ。特に2018年は、HuaweiのP20 ProがSIMフリー市場になく、偶然だが、HTC U12+がカメラに強いスマートフォンとしてその空白を埋めた格好になる。3万円前後のミドルレンジモデルのように、一気にたくさんの数は売れないが、じわじわと販売を伸ばしていくのではないかと感じた。
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