東京都のデジタルサービス局は2022年9月12日、西新宿エリアで5Gや先端技術を活用したサービスの社会実装を加速させるべく、「西新宿先端サービス実装・産官学コンソーシアム」の設立を発表。今後5つの分科会で、参加する企業や団体などが自動運転やXR、デジタルツインなどを活用したサービスの実装に向けた議論や実証を進めていくという。
5Gを活用したサービスの社会実装に向け多くの企業や団体が取り組んでいるが、中でも積極的な取り組みを見せているのが東京都だ。都はデジタルの力で都民が質の高い生活を送ることができる「スマート東京」の実現に向け、5つの「スマート東京先行実施エリア」で5Gや先端技術を活用した取り組みを進めているのだが、その1つとなっているのが西新宿エリアだ。
その西新宿エリアで、5Gなどを活用したサービスの社会実装を加速するべく、2022年9月12日に設立されたのが「西新宿先端サービス実装・産官学コンソーシアム」だ。これは東京都と、西新宿のエリアマネジメント団体である一般社団法人新宿副都心エリア環境改善委員会とが事務局となり、地元企業やサービス提供事業者、大学発のスタートアップなどを呼び込み産官学が連携するコンソーシアムである。
9月16日にはその発足式が実施され、東京都やコンソーシアムに参加する企業らの代表者が登壇。具体的な取り組みや今後の方針などについて説明した。
東京都の副都知事である宮坂学氏によると、西新宿エリアでは2020年5月に「西新宿スマートシティ協議会」を設立し、同エリアの課題を抽出するとともに、8つのデジタルを活用したサービスの実証実験を進めてきたという。そして2022年度は、協議会での取り組みを具体的に都市実装する段階へとステップアップする必要があるとし、「産官学が一体となって、2024年度までに西新宿に新たなサービスを実装させていく」ためにコンソーシアム設立に至ったとのことだ。
また東京都デジタルサービス局の丸山洋三氏によると、参加する企業や団体は61に上るそうで、その顔ぶれは大企業から地元企業、さらには大学や大学発のスタートアップなど非常に幅広いものとなるようだ。産官学連携により課題を解決して具体的なサービス実装とビジネスモデル構築を推し進めていく方針のようだ。
具体的なサービスとしては自動配送ロボットやデジタルツイン、XR、スマートシティアプリを活用した4つのプロジェクトの他、先端技術を持つ大学発のスタートアップと連携したプロジェクト3件が採択。それらに5Gを組み合わせ、サービスとしての実装を目指すとしている。
また新宿副都心エリア環境改善委員会の小林洋平氏は、これまでの西新宿エリアでの取り組みから、街づくりでにぎわいを生み出し、都市を成長させるには都市空間とサービスの組み合わせが大事だと説明。今回のコンソーシアム発足により多くの人達がプロジェクトに参加し、デジタルを活用した都市空間とサービスを組み合わせた取り組みを進めて事業化への道筋を作り出してほしいと期待を述べている。
同コンソーシアムではプロジェクトごとに大きく5つの分科会を立ち上げ、社会実装に向けた取り組みを産官学のチームで実証や議論を進めながら具体化していく形になるとのこと。今回の発足式ではそれら5つのサービスの代表者が登壇し、個々の取り組みについて明かした。
1つ目は「新たな都市物流を実現する自動配送分科会」。分科会の代表である川崎重工業の西谷美貴弥氏によると、こちらはEコマースの利用が増え人手不足が顕著になっている物流分野と、医療機器などの運搬などを効率化して本来の医療行為に人員のリソースを割きたい医療分野をターゲットとして、労働人口減少を解消する取り組みになるという。
具体的には5Gに対応した自動配送ロボットを用いての配送ソリューションをパッケージにまとめ、それを西新宿エリアの企業などに提供するとのこと。ユースケースの1つは、フードデリバリー事業者のmenuと連携してロボットが配送するというもの。もう1つは薬や医療関連物資の配送で、提携薬局や病院、自宅の間を走行して物資の配送・回収を担うという。なお分科会では事業者だけでなく、学生のインターンなどからも意見を募り、課題抽出と対策を進めたいとしている。
2つ目は「感触制御技術を活用した社会課題の解決手段の検討分科会」である。その代表となるモーションリブは、離れた場所にある物体の触感を再現する間隔制御技術「リアルハプティクス」を開発している大学発のスタートアップで、この技術を用いて新宿中央公園を舞台に仮想の動物と触れ合うことができる「新宿感触動物園Haptic Zoo」を2023年2月中旬に実現することを目指しているという。
具体的にはリアルハプティクスを実現する機器とスマートフォン、そして5Gのネットワークを活用し、AR空間に再現された動物に機器を通じて触れ、その感触を知ることができるというもの。分科会ではその実現に向けた取り組みだけでなく、リアルハプティクスなどの技術活用で社会課題を解決する、ワークショップ形式の議論を進めていきたいとのことだ。
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