総務省で携帯電話の「非常時ローミング」の議論が始まる 12月下旬に方向性を取りまとめへ(3/3 ページ)

» 2022年09月29日 06時00分 公開
[井上翔,ITmedia]
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日本の大手キャリアは「賛同」 細かい主張には個性も

 非常時に事業者間ローミングを行う――この方向性において、日本の大手キャリアは各社共に議論を進めることに賛同はしている。ただ、各社の主張を見てみると、微妙な方向性の違いが見受けられる。

NTTドコモ:まず「緊急呼ローミング」を

 非常時の事業者間ローミングを実現するには、設備面での準備も欠かせない。しかし、あらゆる通信を対象にすると幅広い設備に対して改修を加える必要がある。また、不通になったキャリアのトラフィックが一気に押し寄せることで、自社ユーザーが「もらい事故」にあう可能性も高まる。要するに、通信障害が発生した他キャリアのユーザーのトラフィックが自社設備の障害/輻輳(ふくそう)を引き起こし、結果として自社ユーザーにも通信障害が生じてしまうリスクがあるのだ。

 そのこともあり、2021年10月に大規模な通信障害を起こしたドコモは、迅速かつ効果的に行える対策としてまずは緊急呼に限って「LBO(ローカルブレイクアウト)方式」の非常時ローミングを導入するべきだと主張している。加えて、「デュアルeSIM端末の普及」「公衆Wi-Fi(無線LAN)の活用」「衛星携帯電話の普及」「公衆電話の利用」といった多様な手段を使った通信確保の重要性も訴えている。

ドコモ ドコモは「まず緊急呼からローミングを」という立場である(総務省提出資料より:PDF形式)
ドコモ 多様な通信手段を活用することを検討しつつ、ローミング実現に当たっての費用負担をどうするのかの議論もすべきとの立場である(総務省提出資料より:PDF形式)

KDDI:「一般呼ローミング」も検討すべき

 今回の議論を巻き起こす直接のきっかけとなったKDDIも、基本的にはまずLBO方式による「緊急呼のローミング」を検討すべきという立場だ。ただし、先の技術基準に含まれていた「呼び返し(コールバック)」へと確実に対応するために一般呼(緊急通報以外の通話)も含めて非常時ローミングを検討すべきともしている。

 ただ、一般呼も対象に含める場合、より確実に接続できる「S8HR(S8 Home Routed)方式」によるローミングも合わせて検討しなければならない。S8HR方式でローミングする場合、回線認証にまつわる設備への負荷が大きくなるため、災害/障害の範囲に応じてローミングの可否を判断するための運用基準の策定が必要だと主張している。

KDDI KDDIは、緊急通報機関からのコールバックを確実にできるようにするために一般呼のローミングも合わせて検討すべきだとしている(総務省提出資料より:PDF形式)
KDDI 確実なコールバックをするためには、S8HR方式によるローミングを利用した方が良い……のだが、ローミングを受け入れる側(救済側)のネットワークに小さくない負荷をかけてしまうため、ローミングを受け入れるかどうかを判断するための“明確な”運用基準を定めるべきともしている(総務省提出資料より:PDF形式)

ソフトバンク:緊急呼以外は「デュアルeSIM」を活用すればいいのでは?

 2018年12月に大規模通信障害を起こしたソフトバンクは、どちらかというとドコモと考えが近く、非常時に通信を確保する方法は幅広く検討すべきという立場だ。

 その中で、緊急呼を確保する方法として、先の2社と同様にまずはLBO方式によるローミングが妥当(優先して検討すべき)と主張している。加えて、TDoS攻撃のリスクや発信元の特定が困難になるため、SIMなし緊急通報は提供すべきでないともしている。

 緊急呼以外の通信確保方法としては、Wi-Fiの活用に加えて他のMNO/MVNOの回線を一時的に使える仕組みの導入、具体的には緊急時のみ有効化できる回線を提供して、デュアルeSIM端末に書き込んでおくといった対策も考えられるのではないかとしている。

ソフトバンク ソフトバンクも、非常時ローミングについてまずはLBO方式による緊急呼対応から検討すべきとしている(総務省提出資料より:PDF形式)
ソフトバンク 一方で、リスクが大きいことからSIMカードなしでの緊急通報はできるようにすべきではないとする(総務省提出資料より:PDF形式)
ソフトバンク 一般呼のバックアップは一時的に使えるMNO/MVNO回線を提供するなどの対策を考えればいいとしている(総務省提出資料より:PDF形式)

楽天モバイル:「プラチナバンド」の必要性を訴える

 9月4日に大規模通信障害を起こした楽天モバイルは、緊急呼をできることを最優先すべきとしつつも、各キャリアのネットワーク設備状況を鑑みつつローミングの範囲を段階的に拡大(充実)させていくべきとしている。

 設立から間もないこともあり、同社には他キャリアのトラフィックを救済するほどの設備のキャパシティを持っていない。自社エリアのカバー範囲も狭いことから、他キャリアの救済をするためにプラチナバンド(800MHz/900MHz帯)の割り当ても求めている(この検討会は周波数帯の再割り当てを目的としたものではない)。

 上記を踏まえて、同社は緊急呼のローミングを「フェーズ1」として急いで導入し、設備や容量(エリア)面での不安を解消できたら「フェーズ2」として一般呼を含む他の通信におけるローミングを検討すべきとしている。

楽天モバイル 楽天モバイルは、他社とは異なり自社の設備やエリアに関する不安を訴えている(総務省提出資料より:PDF形式)
楽天モバイル ただし「まず緊急呼からローミングを」というのは他3社と同様である。それ以外のローミングについては、設備/容量面での懸念が解消できた時点で段階的に進めるべきだとしている(総務省提出資料より:PDF形式)
楽天モバイル ローミング検討のロードマップも示している。まず2025年までに緊急呼ローミングを開始し、その後5年以内に他の通信のローミングを実現する考えのようだ(総務省提出資料より:PDF形式)

会合は全5回予定

 会合は今回を含めて5回開催される予定である。次回(第2回)は10月4日に開催されることが決定しているが、それ以降の開催日は未定だ。次回以降の主な議題は以下の通りである。

  • 第2回:技術方式の検討、災害時の通信確保の重要性
  • 第3回:緊急通報機関(警察庁、総務省消防庁、海上保安庁)からのヒアリング
  • 第4回:ローミング以外の非常時通信の確保についての検討
  • 第5回(12月下旬予定):方向性のとりまとめ

 今回の議論だけでも、検討すべき事項が多岐に渡ることが判明した。総務省が予定している通りに5回“だけ”の議論で方向性を決められるかどうか不透明な面もある。

スケジュール 今後の開催予定
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