非常時の事業者間ローミングはどこまで有効なのか? 検討会で浮き彫りになった課題石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2022年10月01日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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SIMなし発信にいたずら抑止策はないのか? eSIM活用にも課題が

 検討会の構成員からも、技術的にSIMなし発信時のいたずらを防ぐことができないのか? といった質問が出ていた。一例を挙げると、フィンランドでは、悪用やいたずらを抑止するため、SIMなしで緊急通報をする際には、IMEIと呼ばれる端末の識別番号を送付しているという。端末の識別番号が分かったところで、必ずしも所有者を特定できるとは限らないが、抑止力にはなる可能性がある。現状の緊急通報と同様、位置情報を送るといった手も考えられる。

事業者間ローミング 総務省の事務局が提出した資料。フィンランドではいたずら防止策として、端末のIMEIを送信しているという

 また、SIMなし発信は常時運用することが前提になっていたが、大規模障害時などの緊急時に限定して開放すれば、いたずら電話などはある程度防げるのではないか。基地局まで含めたネットワーク全体の設定をタイムリーに変えていかなければならず、技術的なハードルは高そうだが、大規模な通信障害までカバーできる方式のため、検討してみる価値はありそうだ。

 もう1つの方法としてキャリア側からは、eSIMを使ったバックアップ回線を常備しておく案も提案されている。具体的には、ユーザーが契約しているキャリア以外の回線をeSIMで端末にセットしておき、緊急時のみ有効にするというものだ。ソフトバンクの代表取締役社長兼CEOの宮川潤一氏は、8月の決算説明会で「他キャリアと議論しているわけではないが」と前置きしつつ、「各キャリアが他のMNOのMVNOになる構造で、緊急事態に切り替え可能なeSIMを用意しておく」案を語っていた。

事業者間ローミング ソフトバンクは、デュアルeSIMの活用も提案している。宮川社長も、決算説明会でその重要性を力説していた

 総務省の検討会でも、ソフトバンクはデュアルeSIMを活用した緊急時の通信手段を提案している。トラフィックへの影響が懸念されるが、「電話とWebが使えて何が起きているかが分かり、LINEで最低限の通信手段を確保する」ための回線で、速度は絞ることを想定しているという。eSIMの活用に関しては、ソフトバンクだけでなく、ドコモも幅広い手段の1つとして挙げられていた。eSIM対応、それもデュアルeSIMの端末はまだiPhone 13シリーズ以降に限られている点は課題だが、緊急時の通信手段としては悪くない選択肢といえる。

事業者間ローミング ドコモも、デュアルeSIMは幅広い手段の1つに挙げている

 ただ、IIJのMVNO事業部 ビジネス開発部 担当部長の佐々木太志氏は、同検討会で、「MVNOがデータeSIMを提供するなどして、自らの創意工夫で大規模障害時にも利用者に利便性を提供する。こういったビジネスは既に行われていて、多くの利用者にご利用いただいている」とくぎを刺す。実際、KDDIの通信障害時には、IIJmioがフルMVNOとして提供しているeSIMの契約者数が通常時の約8倍にも伸びたという。MNOでも、povo2.0のようなバックアップになりうるサービスはすでに提供されている。既存のサービスを改めて周知するなどして、コストを抑えながら個人でネットワークを冗長化する考え方を広げていくことも必要になりそうだ。

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