資金移動業者の参加における懸念点の1つに、「ことら送金対応に伴うUI/UXの変更」があるだろう。自社アプリに自信を持つ事業者は多く、ことら送金対応で改変を求められる可能性もある。
これを川越社長は否定する。ことら側はAPIを提供するが、APIに接続するためのUIに指定はない。「送金ボタン」のようなUIは必要だが、これは今までの送金ボタンと一緒で、ことら側からの指定は特にないという。
APIを呼び出すUIさえあれば、画面構成の指定もないし、「ことら」のアイコンや名称表記も不要だという。そのため、送金のUIの中に、ことらのAPIを呼び出す機能さえ追加すれば、UI/UXは従来通りで実現できる。
ただし、送金先を電話番号やメールアドレスで指定すると、ひも付いた送金先口座の名称が表示され、それを確認してから送金する、というフローは必須になる。とはいえ、「送金先が正しいか確認する」というワンクッションはいずれにしても必要だろう。
もう1つの問題が送金手数料だ。もともと高額な「全銀システム(全国銀行データ通信システム)」の手数料問題の解決を目指したのがことら。決済ネットワークとしてはCAFIS、電文などはJ-Debitという既存の仕組みを使うことでコストを削減。
さらに手数料は送金元(仕向)と送金先(被仕向)の双方から「広く薄く」(同)徴収することで、1回の送金コストを低減した。具体的な手数料は非公表だが、参加表明した銀行が無料化の判断ができる程度には低減できているようだ。
送金されるだけでも事業者に手数料が掛かる上に、競争上は有料化が難しくなった状態で、あまりに送金数が多くなると事業者の負担も増す。ただ、そもそもどれだけの需要があるのか、負担になるほどの利用があるのか、という点で、川越社長も「数値目標は置いていない」というほど、先が読めないサービスでもある。
現実的に、対応事業者さえ増えれば一定の利用はありそうだ。例えば「コミケ」「ジューンブライド」「忘年会」という一時的な増加はあるかもしれないが、日常的に頻繁に使うようなサービスではないため、負担はそれほど増えないと想定できる。
利用シーンの拡大では、税公金サービスへの対応も挙げられる。自治体からの税金の振込書などが届いたら、記載のQRコードを読み込んでことら送金を使って納付するという機能で、銀行側も自治体側も、J-Debitの経験があるためそれほど対応が難しくないというメリットがある。
この税公金に関してのみ、ことら送金では「上限10万円を撤廃する」ことが決まっている。固定資産税など、10万円を超える税金があるためだが、税公金以外では10万円の上限は維持する。
この上限に関しては、利用状況などを確認しながら検討していく考えだ。
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