HTC NIPPON児島社長に聞く“スマホ復活”の背景 VRグラスとセットで勝負、課題は?(2/3 ページ)

» 2022年10月21日 11時09分 公開
[石野純也ITmedia]

VIVE Flowは手軽に使えるVRデバイス、ミッドレンジスマホでも動作

―― どちらかというと、機能性の高いVRヘッドセットを出していたイメージがありますが、改めてVIVE Flowの特徴を教えてください。

児島氏 メガネタイプにした第1弾の製品で、通信と融合し始めたデバイスともいえます。可能な限り軽量で、視覚的な印象を損なわないよう作ったものです。今後は、これも進化させ、より複雑なことができたり、より軽量だったり、より手軽に使えたりというものが出てきて、スマホとともに進化させることを計画しています。その第1弾がVIVE Flowです。

 VRChatの中に住んでいるようなガチな方にはあまり興味を持ってもらえないかもしれませんが、それよりも手軽に使っていただければと考えています。シニアでスマホだと難しい方や、メガネをかけるだけで医師や看護師に合ってお話したり、子育てに悩みを持った方がメガネをかけ、いろいろなことが相談できたり(※現時点ではオンライン診療のようなサービスは存在しない)。ちょっとした時間を有意義に使いたい方は増えています。そういう時間を充実させるための新しいデバイスとして使ってほしいと考えています。

HTC Desire 22 pro ガチなユーザーというよりは一般ユーザーの利用を想定した「VIVE Flow」

―― HTC Desire 22 proはミドルレンジモデルですが、VIVE Flowは普通に動きますね。

児島氏 ソフトウェアはグラスの中で動かしているからです。これ(スマホ)は通信デバイス兼コントローラーです。第2弾、第3弾と進めていき、クラウドの中で処理できるような形にして、薄いメガネのようにしていきたい。スマホの中で動かすというプランもありましたが、そうするとスマホが超ハイエンドに限定されてしまい、価格も相当高くなってしまう可能性があります。

―― ミドルレンジとはいえ、MiracastやHDCP 2.2(著作権保護規格)など、映像出力に必要な機能はきちんとそろっています。調べてみましたが、同クラスの端末だと、HDCPがないということはよくあるんですね。

川木氏 Snapdragon 695クラスの端末だと、われわれが調べた限りでは、HTC Desire 22 proだけです。対応するとラインセンス料がかかってしまうこともあり、なかなかこのクラスで実現するのが難しい。普通だと削ってしまうところです。

児島氏 Bluetoothがあればたいていのスマホはコントローラーとしては使えますが、NetflixやAmazon Prime Videoにはプロテクトがかかっています。これを全部見ようと思うと、HDCPが載っていないといけない。そういったものを一通り搭載しています。

川木氏 あくまでこのクラスで、という話ではありますが、このクラスで最適化することを目指しました。

HTC Desire 22 pro HTC NIPPONバイスプレジデントのバイスプレジデントを務める川木富美子氏

ミリ波を除く国内の5G周波数は全て対応、日本限定のレッドも

―― オープンマーケットの端末としては、日本仕様に対応しているところも魅力だと思います。

川木氏 日本のお客さまを念頭に置いて開発をしてきました。ミリ波を除いた全ての周波数に対応したのが1つと、おサイフケータイ、防水・防塵も入れています。これらもないと、日本のお客さまは満足しません。ここはしっかり対応しました。あとは何と言ってもカラーです。過去、「HTC U11」を出したときには赤がなかった。今回は日本にだけ特別に赤を作っています。この赤は、「HTC J butterfly」のときの色を意識して調色しています。

 他にも、日本語入力がオムロンさんのもの(iWnn IME for Android)を採用しており、細かなところもカスタマイズしています。過去にHTCのスマホを使っていたが方が違和感なく使えるよう、マイナーなところまでしっかり踏襲しています。

―― 対応周波数は特に難しかったのではないでしょうか。他メーカーを見ると、ドコモの「n79」に非対応の端末も少なくありません。

川木氏 難しかったですね。コストに跳ね返ってくるところです。対応周波数が多ければ多いほど、認証にも時間がかかってしまいます。そういったこととのトレードオフですが、中途半端に作ってファンの期待にこたえられないなら作らない方がいい。そういった思いもあり、ミドルクラスでありながらもしっかり対応しました。

―― n79対応というのは、ドコモへの納入を狙っていたのでしょうか。

児島氏 もちろん、ドコモだけでなく、KDDIやソフトバンクで取り扱っていただけるならその方がいいのですが、この端末はもともとSIMフリー(オープンマーケット)で出していこうと考えていました。

HTC Desire 22 pro 日本限定のサルサ・レッド

―― 販路という意味では、発表会だとオンライン以外で購入できる場所の案内がありませんでした。どういったところで売られるのでしょうか。

児島氏 ぶっちゃけたことを言うと、今も量販店やEC、MVNOなどとお話を続けています(インタビューは9月20日に実施)。こういったところは、順次決まっていくと思います。

 難しいこともあります。私たちが出向いて担当の方が実際に体験されると大好評なのですが、情報だけを流しているところは「なんだこれ?」で終わってしまう。そういったこともあるので、順番に行かなければと思い、1つ1つやっているところです。スペックと価格だけだと、「えーっ」と思ってしまう。メタバースといってもどんなものかが分からない。今回、それは痛感しました。

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