HTC NIPPON児島社長に聞く“スマホ復活”の背景 VRグラスとセットで勝負、課題は?(1/3 ページ)

» 2022年10月21日 11時09分 公開
[石野純也ITmedia]

 約4年ぶりとなるHTCのスマートフォンが、日本で発売された。「HTC Desire 22 pro」がそれだ。同モデルは、いわゆるミッドレンジモデル。プロセッサやメモリ、カメラなど、スマートフォンの指標になるスペックは、ベーシックな端末に見える。おサイフケータイや防水・防塵(じん)といった日本仕様には対応しているものの、コストパフォーマンスが抜群に高い、というわけでもない。ボリュームゾーンを狙える仕様な半面、とがったところが少ない端末に見えてしまうのも事実だ。

 では、HTCらしさはどこにあるのか。最大の特徴は、同社が展開するVRグラスの「VIVE Flow」に最適化されているところにある。いち早くVRやメタバースに目をつけ、ヘッドセットやプラットフォームを展開してきたHTCだが、その技術やブランド力をスマートフォンに合流させた格好だ。細かなスペックを見ると、確かにVIVE Flowを接続するための仕様がしっかり盛り込まれている。

HTC Desire 22 pro VRグラスの「VIVE Flow」とセットで販売するスマートフォン「HTC Desire 22 pro」

 端末を最適化しただけでなく、VIVE Flowとのセット販売も行う。VRやメタバースを始めようと思っていた人が、HTC Desire 22 proとVIVE Flowをまとめて購入することで、簡単かつ気軽に第一歩を踏み出せる――セット販売にはそんな狙いが込められているという。徐々に拡大するVRやメタバースの市場だが、HTC Desire 22 proに勝算はあるのか。HTC NIPPONで代表取締役社長を務める児島全克氏と、バイスプレジデントを務める川木富美子氏に話を聞いた。

スマホ単体ではなく、突き出した特徴で勝負

―― 4年ぶりの復活ということで、その間、HTCは何をやっていたのか。まずはそこからお聞かせください。

児島氏 グローバルでは、スマホを1年に1機種、2機種ぐらいの割合で一応は出していました。あとはそれを日本仕様にしてマーケットに投入するかどうかの判断になっていました。実際、いくつか考え、検討もしていました。ただ、HTCのかつてのユーザーやファンはとんがったハイエンドやプレミアムモデルが欲しいという方が多かった。一方、グローバルで出していたのはミドルレンジやローエンドです。その中でもめぼしいものはピックアップし、検討はしていましたが、日本の方がHTCに求めているものと合わないだろうということで断念しました。

 ただ、ずっと時機は見ていました。そういった中で、昨年(2021年)11月にVIVE Flowというスマホとつなげて使うグラス型のデバイスを出すに至りました。VIVE FlowはAndroidであれば一通りつなげることはできますが、端末によっては機能に制限がつくこともあります。やはり、きちんとつながり、最高のパフォーマンスが出せるHTC製のスマホは必要だろうとなりました。両方をセットで使ってもらうというのが最初のターゲットです。

 本当はセットで10万円以下で出したいと思っていました。ミドルレンジのスマホとしては高い値段ですが、セットでメタバースやVRも体験できる。安価で高機能なスマホはたくさん出ていますが、単体で勝負するのではなく、1つ突き出したような特徴があるスマホがあればということで、HTC Desire 22 proを発売することになりました。

HTC Desire 22 pro HTC NIPPONの児島全克社長

―― セット価格は11万4900円(税込み)なので、10万円は超えてしまいました。

児島氏 スマホは1年がかりで作るものです。当時はそのぐらいで出せる目算はありましたが、今年(2022年)に入ってから、とんでもなく円が安くなってしまい、今の値段になりました。実はいろいろなプロモーションも考えていたのですが、そういったものを削ってでも、可能な限り価格は下げなければいけないと思い、コストとの兼ね合いでギリギリの中、今の価格になっています。

―― どちらかというとVIVEはスマートフォンと別軸で動いていたようにも見えました。ようやくHTCの両輪が合流するということですね。

児島氏 確かにVIVEはVIVEで、スマホとは別次元のものだと思っていました。VIVEファンの方とスマホファンの方は、ある程度セグメントも分かれているので、それぞれに合った活動をやろうとしていました。一方、最近はメタバースという言葉がいろいろなところで出てきています。日本はその中でも、最も進んだ国の1つだと思っています。バーチャルのタレントが出てきて、事務所もある。ここまでの盛り上がりは、世界トップクラスだと思います。特に「VRChat」では、その中で生活している人も出てきています。

 そんな中でもHTCはVRでバーチャルな世界を見せつつも、スマホや通信とは両立させていこうとしていました。4G、5G、6Gと通信の世代が上がっていけば、いずれVRアプリケーションを動かすのはクラウド上になると思っているからです。5Gが始まり、エッジコンピューティングも出てきましたが、いずれはそうなります。ですから、VRと通信の融合は、当初から考えていました。

 実際、CESやMWCでも、クラウドVRのデモをしています。デモをした当時はスマホではなく、「5G HUB」という(ルーターのような)デバイスでしたが、HUBを通じてVRを実現させるというのは当初からやっていたことです。その方面の研究開発は今も続けています。最終的には、そこが融合して、1つのインフラというかプラットフォームができるのではないかと思います。

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