また、マルチカメラを活用したズーム処理も、Snapdragonとより深く連携することで、スムーズさを維持したまま消費電力を抑えられるようになるという。スマートフォンは、焦点距離の異なる複数のカメラを搭載し、それらを切り替え、疑似的にズームを行うのが一般的だ。ただ、カメラそのものを切り替えているため、その際に露出やカラーバランス、フォーカスなどが変わってしまう。
これを防ぎ、シームレスなズームを行うには、あらかじめユーザーが使うであろう別のカメラをバックグラウンドで起動させておく必要がある。とはいえ、それだと3つのカメラがフルで動いてしまうため、単純計算でバッテリーの消費量も3倍に増えてしまう。搭載できるバッテリー容量に限界のあるスマートフォンでは、省電力性能も重視されるポイントの1つだ。
このトレードオフを解決するため、ソニーが取った方法が、使っていないカメラのフレームレートを3fpsまで落とし、露出合わせなど最低限の処理だけを維持するというもの。切り替え時には即座に30fpsまで上がり、普段通り、カメラとして利用できる。カメラ切り替えのスムーズさと省電力性能を両立させた技術といえる。これも、ジョイントラボの成果だ。
ソニーがQualcommとジョイントラボを設立したのは、センサーとプロセッサの役割分担を、細かくすり合わせていくところにあったという。御厨氏は、次のように語る。
「今回のQuad Digital Overlap HDRもそうだが、裏面センサーができることとISPがやった方がいいことをうまく組み合わせていかなければならないときには、われわれだけでは機能実現できない。Snapdragon側がこういう振る舞いをしてくれるとありがたいということがあり、そういったすり合わせを行いながら、現場のエンジニアを動かして動作検証もしている」
Quad Digital Overlap HDRは、ソニー側からの提案。「こういうことがユーザーのメリットになると提案し、Qualcomm側からもそれがいいとなった」(同)という。御厨氏によると、スピード感を出しながら新しい機能の開発に取り組めるのが、ジョイントラボを設立したメリットだという。
また、センサー側にもメモリやロジック回路が入るようになり、「センサーにより近いところで何をして、プロセッサとどう役割分担すべきなのかは考えなければいけない」。ジョイントラボのような形で連携を取っておくことで、それをセンサーの開発にもフィードバックできる。
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