スマホカメラが進化した裏側で起きていること ソニーのイメージセンサー開発部隊に聞く(1/3 ページ)

» 2022年08月31日 11時30分 公開
[荻窪圭ITmedia]

 ここ数年のスマホカメラの進化ってすごいよなと思うのである。

 4K動画を当たり前のように撮れるとか、夜景モードを使えばどんなに暗くてもきれいに撮れるとか、カメラを3つも4つも搭載しているとか、そういうスペックで分かりやすいところじゃなくて、気がついたら写真がゆがまなくなったよなとか、気がついたらすごく暗い場所でもAFが効くようになったとか、気がついたらダイナミックレンジが広くなったとか、そういうなかなかスペックで語られない基本性能が上がっているのだ。

 そしてとうとう、ハイエンドコンデジと同じ1型センサーまで登場した。

 そのカメラ性能の進化を見ていると、何が起きているのか、なぜ1型という大きなセンサーが出てきたのか、なぜデフォルトは1200万画素(以下、12MPと記す)なのに4800万画素とか1億画素なんて画素数が必要なのか、気になるよね。

 そういう性能や技術の話は、端末メーカーではなく、カメラの大本に聞かねば話は始まるまい、ということで、行ってきたのである。目指すは神奈川県厚木市にあるソニーセミコンダクタソリューションズ。

ソニーセミコンダクタソリューションズ 今回取材にお邪魔したソニーセミコンダクタソリューションズ。神奈川県厚木市にある

 カメラの心臓部である「イメージセンサー」を開発している会社だ。多くのスマートフォンがソニーのイメージセンサーを搭載しているし、中には堂々と「うちはソニーのIMX989」を採用していますと型番まで明記するメーカーもある。それだけソニーのイメージセンサーにはブランド力があるのだ。

ソニーセミコンダクタソリューションズ これが1型サイズの新型センサー「IMX989」(提供:ソニーセミコンダクタソリューションズ)

 そこで、モバイル向けイメージセンサーの最新技術について、ソニーセミコンダクタソリューションズ モバイルシステム事業部 副事業部長である小関賢氏の元に突撃し、同時に最新イメージセンサーのデモも見せてもらってきたのである。

ソニーセミコンダクタソリューションズ ソニーセミコンダクタソリューションズ モバイルシステム事業部 副事業部長の小関賢氏

ゆがまない秘密は高速化にあり

―― ここ数年で、スマホカメラの基本性能が気付かないうちにぐんぐん上がっているなと感じています。その秘密について伺いたいのですが、まず知りたいのは「ゆがみ」。

 昔のスマホカメラは撮るときに素早く動かしたり、高速に動くものを撮ったりすると、斜めにゆがんで写ってしまいましたよね。今は、ゆがまないとはいえないまでも、ほとんど気にならないレベルになっています。これはCMOSセンサーの技術の進歩によるものですよね。

ソニーセミコンダクタソリューションズ 昔に比べて今のスマホカメラは高速な被写体のゆがみが激減している(写真はどちらも新幹線の車窓から真横を撮ったもの。明らかにゆがみ具合が違う)

小関氏 今のCMOSセンサーは原理的にゆがみます。ゆがみを抑えるにはいかに速く読み出すかが重要です。それにはいったんメモリにためるなど複数のやり方がありますが、今はその読み出しが速くなっていまして、通常の撮影ではほとんどゆがまない映像を撮影できるようになっています。

―― ソニーは一時期Xperiaなどで「アンチディストーションシャッター」という名で、高速な被写体でもゆがまないのをウリにしていました。最近その言葉を聞かなくなったのはもはやゆがまないのが当たり前になっているからでしょうか?

小関氏 そうです。全ての機種で速くなったので「アンチディストーション」をアピールせずともよくなったのです。CMOSイメージセンサーの一番の特徴は受けた光をセンサーチップ上でデジタル化して出力することですが、半導体の高速化でそれが速くなっているのです。そのトリガーとなっているのが積層技術です。世代の進んだ高速な半導体を積層構造に作ることで、出力するデータのスピードを上げることができているのは、大きな技術の進化といえます。今のモバイル向けセンサーでは、ほぼ積層型が採用されていると思います。

※積層型にすることでより大規模な回路をチップ上に搭載できるようになった(参考リンク)。


 CMOSセンサーはラインごとに信号を読み出すので、どうしても最初と最後でタイムラグが発生し、結果として斜めにゆがんだ映像になってしまう。積層型はその信号処理をセンサー内で行うことで高速化され、タイムラグが短くなり、高速な被写体を撮影してもゆがみが少なくなるということだ。

 今は多くの端末がこの積層型になっているということなので、古い機種の人は買い換えるとそこが改善されるかも。これは魅力的。

 そして積層型という構造は、この後もあらゆるところで効いてくるのだった。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年09月09日 更新
  1. 「Suicaのペンギン」卒業騒動にまつわる背景と誤解 JR東日本に聞いた (2025年11月14日)
  2. “折りたたみiPhone”だけじゃない もうすぐ開催のAppleイベントで登場する新製品のうわさを総まとめ (2026年09月08日)
  3. 折りたたみiPhoneは30万〜40万円超に? ダミー画像から見えたスペックと品薄の懸念 (2026年09月07日)
  4. ドコモの純正スマートウォッチがAmazonで14%オフの約6000円に 心拍や睡眠の測定も可能 (2026年09月08日)
  5. なぜLINEは“ちょっとした気遣い”で重宝された「ミュートメッセージ」を有料化したのか? (2026年09月08日)
  6. 「おサイフケータイ」のリセット方法を改めてチェックする(新しめの機種限定) (2026年09月07日)
  7. 3COINSで1320円の「コイル充電ケーブルAtoC」を試す 伸縮式よりも“ラフ”に扱えて便利 ただしキーボードにはアンマッチ? (2026年09月08日)
  8. 車内を大画面エンタメ空間にする「VANBAR ディスプレイオーディオ」がセールで20%オフの2万8777円に (2026年09月08日)
  9. 「Pixel 6a」で製品起因が疑われる発火事故が発生 消費者庁が「消費生活用製品の重大製品事故」として公表 (2026年09月07日)
  10. パスポート型折りたたみスマホ「Galaxy Z Fold8」と「HUAWEI Pura X Max」の実機比較で見えてきた違い (2026年09月07日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー