2022年夏商戦向けのスマートフォンの中でも高価な「AQUOS R7」。大きな特徴はカメラだ。1型のCMOSイメージセンサーを搭載し、ライカ(Leica)が画質監修をした。全画素AFと改良されたAI被写体認識により、オートフォーカス性能がAQUOS R6から向上している。その他にも、240Hz駆動の6.6型Pro IGZO OLEDディスプレイを備え、ディスプレイ内に3D超音波指紋センサーを搭載している。
そんなAQUOS R7のカメラ、ディスプレイには、いったいどんな技術や機能が詰め込まれているのか、シャープでAQUOS R7の企画開発に関わった方々に話を聞いた。
―― これまでAFが遅かったのはなぜでしょうか。またAQUOS R7ではどこを改善したのでしょうか
宮崎氏 まずセンサーの種類が異なります。1型センサーをスマートフォンAQUOSとして初めて搭載したのはAQUOS R6でしたが、デジカメ用の1型センサーでしたので、モバイル向けのイメージセンサーとは異なりました。加えて、ToFセンサーによるレーザーAFですので、太陽光などの影響によりピントがうまく合わないといったデメリットが生じていました。
一方のAQUOS R7では、モバイル向けのイメージセンサーを採用しています。さらに、1つの画素に8つの像面位相差センサー付きのOcta PD AFに対応していますから、AQUOS R6比でAFスピードが約2倍に向上した他、AI処理の速度が1.5倍に向上したため、人の顔や瞳を検出し、かつピントが合いやすくなりました。
―― Octa PDについてもう少し詳しく教えてください。
宮崎氏 AQUOS R5GではDual PDでした。1画素にフォトダイオードが2個含まれています。AQUOS R7のOcta PDは1画素にフォトダイオードが8個あります。ともに仕組みとしては同じですが、AQUOS R7では暗所なら4つの画素を1つの画素として撮影する明るさ優先モード(11.8MP/3.2um)が有効になり、昼間など明るいシーンでのズーム撮影なら解像度優先モード(47.2MP/1.6um)が有効になります。
47.2MPで撮影/保存できるのはハイレゾモード(カメラアプリの「その他」→「ハイレゾ」)を使用したときのみです。写真モード(オート)の場合は、明るい環境下かつズーム時(UI上で2倍ぐらいから)に解像度優先モードに切り替わります。さらに、ズームの倍率に合わせてセンサーの使う領域が47.2MPからクロップされ、保存時に設定サイズにアップスケール処理をし、11.8MPにしています。
―― 12cm程度まで被写体に近づいて撮影できるようになりました。これはどんな利用シーンを想定していますか。
宮崎氏 テーブル(料理の撮影)と、花などに近づいて撮るマクロを想定しています。もう1つはPayPayアプリなどでQRコードを読み取って使うユースケースです。
これまで読み込みに時間がかかる、といった意見をいただいていましたので、その読み込み時間をなるべくなくすべく修正を行いました。
少し補足しますと、AQUOS R6よりもAQUOS R7の方が、レンズとモジュールを限界ギリギリまで繰り出すような作りとなっています。このあたりはAQUOS R6よりもAQUOS R7の方がシビアに調整しています。そのため、多くのユースケースに対応することが可能になりました。
―― 複眼化が流行する中、AQUOS R7のカメラはなぜ単眼なのでしょうか。改めて教えてください。
小野氏 考え方ですよね。スマホの場合はメインカメラにいいセンサーをつけて、周りのカメラにはそれよりもグレードを落としたセンサーを付けて多眼化していますが、お客さまはその時々で最もいいセンサーで写真を撮りたい、と考えていると思います。
そのため、このボディーに収まる最大サイズを使いたい、という思想に基づき、1つであらゆるシーンをしっかりとカバーできるようにしました。広角から標準、そして望遠に至るまでをしっかりカバーしないと、いくら単眼にしても駄目です。先ほどの内容と重なる部分にはなりますが、別のセンサーを付けなくてもズーム時の画質をよくするという部分において、先ほどのビニングとリモザイクが欠かせないということになります。
宮崎氏 補足しますと、どうしても2つのカメラが離れて付いていたり、そもそも異なるカメラが複数付いていたりすると、いろいろなシーンに対して切り替える必要はありますが、注意深くズームしてもかくつきが出てしまいます。
AQUOS R5Gでも違和感のないように、できるだけ合わせこむようにしていますが、限界はあります。一方でAQUOS R7ではカメラが1つですから、切り替えても画角が大きくずれたり色味が大幅に異なってしまったり……ということが起こりません。
―― では複眼化のメリットは何でしょうか。
平嶋氏 高倍率のズームができるのが複眼化のメリットの1つではあります。この先どうなるのか、具体的なことは明かせませんが、AQUOS R6以降の単眼というポリシーは今後も続くと思います。
―― ポートレートにもこだわったとの説明がありました。AQUOS R6と比べてどう進化したのでしょうか。
宮崎氏 AQUOS R6は1型センサーとToFセンサーで構成しました。一方のAQUOS R7には1型センサーと深度測定用のモノクロカメラが備わります。ハードウェアとしての進化はこれだけでなく、解像感の向上を挙げたいと思います。
ToFが40キロピクセルなので解像度しては少ないです。一方のモノクロカメラは約2メガピクセルなので、双方を比べると圧倒的に解像感が違います。ある程度の画素数があった方が、髪の毛や服などの細かいディテールを表現できたと考えています。あえてモノクロにしたのはカラーと比べて約2倍の光量を取り込めるためです。そのため、暗所(ナイトポートレートを含む)撮影での性能も向上しています。
―― ポートレートモードではデフォルトで美肌効果がかかるようですね。
小野氏 人の肌の質感、色の部分を見直しました。人に最適な調整が何かを考えたときに、若い人は比較的肌がきれいなのでそこまで補正は要りません。ですが、年齢を重ねると肌荒れなどが目立ってしまう……。かといってそれに補正をかけすぎると不自然ですから、ほどよく補正を行うようにしています。あえて一律で同じようなビューティー補正をかけないことで、人に合わせてきれいに撮れるようになっています。
肌もそうですが、メガネに光が当たったときの反射が目立たないようにしています。
―― この補正は動物には対応しないのでしょうか。
小野氏 はい。人に特化したものになります。ただ、処理の内容によっては重たくなります。肌やボケの処理を合わせますと、時間を要してしまいますが、AQUOS R7ではそれらの処理速度に時間がかかりすぎないようにしています。
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