―― KDDIは、iPhoneの「eSIMクイック転送」に対応しています。この機能にMVNOが対応するのは難しいのでしょうか。
亀井氏 あれは端末側の仕組みによるものなので、Appleと(直接)やれるキャリアにならないとできません。
―― 冒頭でiPhoneから物理SIMがなくなったら巻き上げなければいけないというお話がありましたが、そういった動きは事前に察知していたのでしょうか。
亀井氏 そういうふうになるという業界のウワサはありました。その方が、防水性を強くできたり、使い勝手もよくなったりしますからね。利用者視点だと物理SIMがなくなって不便になることはありますが、デザインの観点でもなくなる日は来ると思っています。
辻氏 特別な情報が何かあったというわけではありませんが、そういうウワサが出ていました。キャリアもeSIMを出しているので、やろうと思えば(日本でも)できない環境ではなかったと思います。
亀井氏 日本でも、そうなる可能性はあると思います。お客さまが全てeSIMじゃないとダメとなったときの対応をどうするかは悩んでいました。
―― そうなると、eSIMに対応していないMVNOが大変なことになりそうですね。
亀井氏 われわれもOEMで出しているところには、eSIMを使えるよう準備をしています。ドコモでやるときには、同時にできるようにしなければいけないと考えています。
―― 話は変わって、前回取材した際には、まだ楽天モバイルがUN-LIMIT VIIを発表していませんでした。その後、IIJmioに移るユーザーは増えましたか。
亀井氏 (実質無料が終わるのは)10月末ですが、最後の方が来ていることが分かります。11月はさすがに落ち着いているとは思いますが、楽天モバイルから移行する方の比率は高かったですね。
―― どのぐらいでしょうか。
亀井氏 (料金の)アナウンスがある前と比べると、倍ぐらいです。数字はあくまで一例ですが、10%だったのが20%になったような感じですね。もともとターゲット層が近かったので、移りやすかったのかもしれません。移行先の料金プランは2GBですね。eSIMや、音声通話対応で端末を買っていただけることも多いです。端末に関しては、転入時のキャンペーンで買っていただけることが増えています。
―― 楽天モバイルは、段階的な移行として8月末までキャッシュバックをしていましたが、やはり8月末は転入が多かったのでしょうか。
辻氏 8月は多かったですね。その動きが9月にちょっと落ち着きました。
亀井氏 8月が山としては一番高かったです。
―― もう1つ、KDDIの通信障害があり、eSIMの加入者が増えたというお話もありました。
亀井氏 はい。フルMVNOのeSIMは増えました。8倍という言い方をしていましたが、かなり増えましたね。どんどんなくなっていくので、在庫の懸念もありました。eSIMのプロファイルも在庫化しておかないといけないため、そこはヒヤヒヤしたところです。ここが自動じゃないのは意外と思われるかもしれませんが(笑)。
―― そういう方はどういう料金プランを契約したのでしょうか。
辻氏 ギガプランで2GBだったり、4GBだったりに入っています。当初はデータプラン ゼロが増えるかとも思いましたが、認知度の部分でギガプランでした。この点は、われわれもちゃんと(データプラン ゼロの)プロモーション活動をしなければいけないと反省しています。
亀井氏 一方で、タイプAのお客さまにはわれわれも影響を与えてしまいました。そのため、僕らも同額ぐらいをおわびとしてユーザーにお戻ししています。同じau回線を使っている方に、そん色ないように(補償が)できればと出した対応です。その後、強いご意見をいただくことなく、全ての処理が終わっています。
―― ギガプランが登場して、1年半がたちました。その間、税込み表記への対応などで料金改定はありましたが、今後どのようにしていきたいとお考えでしょうか。
亀井氏 外部評価でも1位をいただいていますが、商品の中身を掘り下げ、いただいた要望を反映させする時期が来ていると考えています。既存の申し込みにeKYCを入れてみたり、データ使用量が多くなっている印象があるので容量を工夫してみたり、アプリの使い勝手を直していったりすることで、継続して好きになっていただければと思っています。
au回線のタイプAに導入したeSIMサービスだが、やはり、本来はドコモ回線のタイプDで開始したかったようだ。EIDの入力を必須している仕組みなどが、その障壁になっていることがうかがえる。ドコモ側は、セキュリティ対策として導入しているものだが、煩雑なうえに、利用できる端末が限定されてしまうのが難点。MVNOにeSIMを提供する際には、何らかの改善が必要だと感じた。
インタビューの話を聞くと、端末、特にiPhoneの完全eSIM化に備えていることがうかがえる。結果として、iPhone 14シリーズは米国版のみ、物理SIMスロットを排除した仕様だったが、今後、これがグローバルに広がる可能性は十分ある。MVNOも、そのときに備えておく必要が出てきたといえそうだ。
一方で、バックアップ回線としてすぐに使えるようになるのは、eSIMならではのメリット。現状では、ギガプランしか使えないため、その強みが十分発揮できていない。データプラン ゼロのような新たな料金体系にも期待したいところだ。
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