「Xiaomiはブランド認知に課題がある」 ソフトバンクと三度目のタッグを組んだ先に見据えるもの石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2022年12月10日 11時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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 Xiaomiは、12月16日にフラグシップモデルの「Xiaomi 12T Pro」を発売する。大手キャリア(MNO)では、ソフトバンクが独占的に販売。ソフトバンクが取り扱うXiaomi 12T Proは256GBのストレージを搭載しているが、Xiaomi自身も128GB版のオープンマーケット版を用意した。MVNOでは、IIJmioがいち早く取り扱いを表明している。いずれのモデルも日本向けにカスタマイズされており、おサイフケータイに対応する。

 Xiaomi 12T Proは、日本で発売されるスマートフォンとして、初めて2億画素のカメラを採用した。ピクセルビニング技術で画素を束ねることで、1250万画素相当の明るい写真を撮れるのが特徴。プロセッサには、Snapdragon 8 Gen 1の処理能力を高めたSnapdragon 8+ Gen 1を採用する。ディスプレイは最大120Hz。高リフレッシュレートで、滑らかな表示を実現する。

Xiaomi 12T Pro 12月16日に発売される「Xiaomi 12T Pro」。MNOではソフトバンクが独占的に販売する

 一方で、ソフトバンクとXiaomiは、同モデルの特徴として、120Wの急速充電を「神ジューデン」として訴求していく。120Wの急速充電自体は、2022年に発売された「Xiaomi 11T Pro」も対応している機能。新モデルだけに搭載された特別な機能というわけではない。では、なぜ2社はこの特徴に焦点を当てたのか。ソフトバンクとXiaomi、それぞれの思惑を読み解いていく。

ソフトバンクと三度タッグを組んだXiaomi、狙いは販路拡大やブランド力向上にあり

 日本上陸直後にKDDIとタッグを組んだXiaomiだが、おサイフケータイの採用やエントリーモデルへの取り組みはソフトバンクと進めてきた。「XiaomiとDNAが似ているところがあり、リスクを取って新しい技術や新しいものに対して前向きに取り組んでいる」(Xiaomi Japan 代表取締役社長 スティーブン・ワン氏)というのが、その理由だ。ソフトバンクが持つ販路も、参入してから日が浅いXiaomiにとって魅力があるという。特に、キャリアはアップグレードプログラムを提供していることもあり、ハイエンドモデルを販売しやすい。

 「ソフトバンクは、(Xiaomiより)もっと大きな販売チャネルを持っている。ハイエンドを売るときには特に効果的だと学んだ。そのことにより、いろいろなことを学べている。これは製品を広めるための第一ステップで、ハイエンドのメインストリームになりたいと思っている」(同)

Xiaomi 12T Pro Xiaomi Japanを率いるスティーブン・ワン氏

 もう1つの理由が、マーケティングだ。端末を独占的に提供することで、ソフトバンク側も“一押し”としてプッシュしやすくなる。実際、同社はXiaomi 12T Proの発売にあたり、俳優の吉沢亮や女優の杉咲花を起用したテレビCMを展開。先に述べたように、神ジューデンとして最短19分でバッテリーを満タンまで持っていける急速充電機能を大々的にアピールする。日本では比較的小規模の企業として展開しているXiaomiにとって、ソフトバンクの後ろ盾があるのは心強い。Xiaomi Japanのプロダクトプランニング本部 本部長の安達晃彦氏は、次のように語る。

 「Xiaomiは、(日本での)ブランド認知に課題があると思っている。スマホ好きの方のサポートは根強く、非常によくしていただいているが、それ以外の一般ユーザーにもXiaomiというブランドやテクノロジーの優位性をお届けしたい。そのためにソフトバンクのお力をお借りしている。日本でハイエンドの商品に取り組むにあたり、いい関係になっている」

Xiaomi 12T Pro 安達氏は、ソフトバンクの力でブランド力や技術力を広めたいと語る
Xiaomi 12T Pro ソフトバンクのCMキャラクターを務める吉沢亮、杉咲花がXiaomi 12T Proをアピール。神ジューデンをテーマにしたCMも放映される

 Xiaomi自身もオープンマーケット版を展開しており、「ソフトウェアに関してはソフトバンク仕様として細かなところに手を入れているが、基本的な商品としては変わらない」(安達氏)。協業によって培われたブランド力は、ソフトバンクに納めたXiaomi 12T Proだけでなく、同社全体に影響を与える可能性もある。後発のメーカーが伸びていくには、キャリアの力が不可欠だったというわけだ。

 独占的に取り扱うラインアップを増やし、ドコモやKDDIと差別化を図りたいソフトバンクの思惑とも合致した。ソフトバンクは、ライカ全面監修の「Leitz Phone」や、バルミューダの新規参入モデル「BALMUDA Phone」など、他社が扱わないモデルを意図的に増やしている。ソフトバンクの常務執行役員 菅野圭吾氏は「たまに失敗もあり、独占が全て成功しているとは正直自信を持っては言えないが、われわれが見ている限り、ほぼほぼ販売の意図などは伝わっている」と語る。

Xiaomi 12T Pro ソフトバンクの菅野氏。独占モデルを増やし、ラインアップで差別化を図っている

 ソフトバンクとの協業は、2021年2月に発売され、おサイフケータイに初対応した「Redmi Note 9T」や、2022年4月に投入した後継機の「Redmi Note 10T」に続く3機種目。当初は、「エンジニアリングの部分が難しく、ソフトバンクの情報を集めて全て翻訳をするところから始まり、そこからカスタマイズが始まるので大変だった」(ワン氏)ものの、そのやりとりも徐々にスムーズになっていった。今では「情報をいただければ、エンジニアがすぐに分かる状態になっている」(同)という。

 一方で、過去に投入した2モデルとは異なり、Xiaomi 12T Proはハイエンドモデルでエントリーモデルやミドルレンジモデルと比べると価格は高い。そのため、どちらかといえばマーケティング面での連携に苦労があったという。安達氏も「過去の商品はミドルレンジやベーシックモデルで、そこまでテクニカルではなかった。そのため、コミュニケーションの仕方や、やりとりに関しては今までより大変だった」と語る。

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