USB規格ではホストデバイスからクライアントデバイスへの給電に対応しています。ただし、素の規格における給電能力は以下の通りで、消費電力の大きなデバイスには不向きです。
(※8)オプション規格の「USB Battery Charging 1.2」を利用する場合は5V/最大1.5A(7.5W)
そこで生まれた給電/充電用の規格が「USB Power Delivery(USB PD)」です。現在の最新バージョンは「Revision 3.1」です。
USB PDを利用すると、通常のUSBよりも大きな電流が流れる傾向にあります。そのため、流す電流が大きくなるとケーブル自体の発熱が大きくなり、最悪の場合は発煙や発火につながってしまいます。
そこで、USB PDでは60Wを超える電流に対応するケーブルに「eMarker(イーマーカー)」と呼ばれるICチップを搭載することが義務付けられています。加えて、100Wを超える電流に対応するケーブルはeMarkerに「Extended Power Range(EPR)」に関する情報を付与した上で、ケーブルにEPR対応である旨の表示をしなければなりません。簡単にまとめると、60Wを超える電力を供給するには、対応を明記したケーブルが必須ということです。
USB-IFでは60W超の給電能力に対応することを示す「パワーレーティングロゴ」を策定しています。同組織の認証を受けたUSB PD対応機器やUSBケーブルでは、通電できる最大許容電力が一目で確認できるようになっているので、ぜひ確認してみてください。
パワーレーティングロゴがない場合は、USB PDへの対応の有無、対応している場合は最大許容電力をよく確認してから買うようにしましょう。
先に少し触れましたが、USB Type-C端子ではUSB規格以外の信号を流す「Alternate Mode」に対応しています。その用途として一番メジャーなのは「DisplayPort Alternate Mode」です。
その名の通り、DisplayPort Alternate Modeは「DisplayPort(ディスプレイポート)」規格のデジタル映像/音声信号を流します。このモードに対応するUSB Type-C端子を備えるスマホ/タブレット/PCと外付けディスプレイを用意すれば、USB Type-Cケーブル1本で映像のやりとりができます。USB PDに対応していれば、電源アダプターも不要になります(※9)。ディスプレイ側に「USBハブ」機能があれば、ディスプレイ側にUSB機器をつないでおくとさらに便利に使えます。
(※9)つなげる機器の双方がUSB PDに対応している必要があります(受電/給電できる電力は機器により異なります)
……と、少し本筋から外れそうになりました。DisplayPort Alternate Modeを使う場合は、USB Type-CケーブルはUSB 3.0以上に準拠したものを用意してください。DisplayPort Alternate Modeでは映像/音声の伝送でより多くの信号線を使うため、USB 2.0準拠のケーブルでは信号線が足りないのです。
「USB Type-C対応のディスプレイとPC(スマホ/タブレット)を買ったのに映像が出てこない!」というトラブルが発生した場合、原因は複数考えられますが(今回は原因の解説は割愛します)、「使っているUSB Type-CケーブルがUSB 2.0規格だったからダメだった」というのは想像以上に多いです。
ただ、USB 3.0以上に準拠するUSB Type-Cケーブルでもうまく映像を出力できないことがあります。一番確実なのは「(DisplayPort)Alternate Mode対応」「映像伝送対応」と明記されているUSB Type-Cケーブルを買うことです。
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