ただ、機器のインタフェースがオープンになったからといって、それぞれをつないでソフトウェアをインストールすれば終わり――というほど簡単にはいかないという。エリアやキャパシティーなどを想定通りの性能で運用していくには、ノウハウも必要になる。「キャリアとしての経験値を生かして、ネットワークデザインやコンストラクション、オペレーションやメンテナンス」(ドコモ説明員)はしていなければならない。
ベンダー任せでネットワークを構築してきたキャリアには、こうしたノウハウが足りない。ここで活躍するのが、ドコモのOREXや楽天シンフォニーというわけだ。どちらも、国内キャリアとして培ってきた経験やノウハウを応用している点は共通している。ドコモは、以前からクロスベンダーでネットワークを構築しており、「自分たちでもO-RANを利用しているので、その実績があった中で他のキャリアにお勧めしている」(代表取締役社長 井伊基之氏)。
対する楽天シンフォニーも、楽天モバイル参入当初からO-RANを用いた完全仮想化ネットワークを売りにしている。楽天グループの会長兼社長の三木谷浩史氏は、MWCで開催したイベントで「(楽天モバイルで)完全仮想化のO-RANネットワークがスケーラブルであることを証明した唯一の事業者だ」と語った。楽天モバイルでゼロからネットワークを構築できることを見せ、それを海外キャリアに導入していくという点では、立ち位置はドコモのOREXにも近いといえる。
この分野で先行しているのは、楽天シンフォニーだ。先に挙げたように、ドコモは5社の支援が決定していることをMWCに合わせて発表したのに対し、楽天シンフォニーは2022年度(2022年1月から12月)で、4億7600万ドル(約647億円)の売り上げを計上している。ドイツの新興キャリア1&1のネットワーク構築を支援するなど、“大型案件”の受注もあり海外での知名度は高い。「今年のMWCでは、誰もがO-RANの話をしている」(楽天モバイル、楽天シンフォニー CEO タレック・アミン氏)というほどO-RAN導入の機運が高まるなか、商機をつかんだ格好だ。
ドコモが競合ともいえるOREXを立ち上げたことに対しても、「何か実績はあるんですか? お手並み拝見でいいんじゃないか」(三木谷氏)と余裕を見せる。
三木谷氏は、「いろいろな周波数帯域があり、機器もいろいろ。仕様で決まっている部分だけではなく、それぞれの機器に個別の使い方があり、それに全部対応してなければならない。機能をつけていかなければならないし、パフォーマンスもある。オートメーションやオートヒーリングが本当に動くのか、というところもある」と、その難しさを語る。実運用で先行している分、楽天シンフォニーが有利との見方だ。
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