かつて大手キャリアはハイエンド中心のスマートフォンをそろえていたが、SIMフリー市場が拡大された影響もあり、近年では廉価なスマートフォンも多く投入している。
一方で、スペックが低い廉価なスマートフォンが「初心者向け」と称して販売されていることがあり。こうしたキャッチコピーを当てにして買ったところ、性能が足りずに不満に感じるという声も聞く。今回は、そのような機種がスマートフォンの「初心者」に向いているのか。改めて考えてみる。
廉価であまり性能の高くないスマートフォンを指して「初心者に最適」としている広告を、キャリアショップや家電量販店で見かけることが多い。
現在のキャリアが示す「スマホ初心者」は、ガラケーからの移行で初めてスマートフォンを持った人に焦点を当てている。正直、ガラケーで“何とかなっている人”が乗り換える機種なので、使用用途も通話やメッセンジャーアプリが主だったものとなる。特段スペックも必要としないだろうというものがキャリアの見解とも取れる。
基本的にこのクラスは3Gケータイの他、4Gの「ガラホ」からの乗り換えも狙っている。後者では2万円の割引しか適用できないため、必然的に廉価になる。
その一方で、「スマホ初心者」というキャッチコピーの主語はかなり大きいものだ。このため、機種選びを失敗したという意見も後を絶たない。
スマホ初心者は年齢層が高い人ばかりではない。初めてスマートフォンを持つ学生や、単純にスマートフォンにあまり詳しくないが、「スマートフォンをよく利用する」というユーザーも少なくない。保護者が子どもに与える初めてのスマートフォンもここに該当する。
そのようなユーザーが2万から3万円の性能の低い機種やストレージの少ない機種を選ぶと、使っていくうちに不満を感じるようになってくる。加えて、自身でスペックを見極めて選べる人はそこまで多くない。筆者の周りでも、店頭スタッフに言われるがままに購入、後にスペックが低くて後悔したという声を聞いた。
こうした不満が出るのは、キャリアが想定している「ガラケーからの乗り換え層」と、ここでいう「初心者」に、スマートフォンで求めるものにギャップがあるからだ。スマートフォンに特段詳しくなくても、ゲームで遊び、SNSだってガッツリ利用するユーザーもいる。「スマートフォンに詳しくない初心者」=「スマートフォンのライトユーザー」とは限らない。
また、近年のアプリは最新の環境向けに設計されていることも多く、最低限の性能しか備えていないスマートフォンを数年も使い続けるのは厳しい。このようなことからも、廉価で性能の低い機種を「初心者向け」としてプッシュしていくのには無理があると考える。
そもそも、3万円以下の機種の場合、ほとんどが「割り切り」を求められるものとなっており、さまざまな機能を妥協したりすることで安価な設定となっている。そのため、自分がスマートフォンに対して何が必要で何が不要なのか。妥協したスペックでも用途や期間に対して十分利用できることを理解できる人向けの商品だ。
その意味では、スペックを抑えた機種は、スマートフォンについて何も知らない初心者というよりは、ある程度調べてスペックなどに理解のある「上級者」向けの機種といえる。
一般に多機能なものが「上級者向け」という位置付けになるが、スマートフォンの場合、機能を最低限に削った廉価でストイックな機種の方が、むしろ高度な使いこなしを求められるのだ。
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