NTTドコモは4月26日に5Gネットワークの戦略説明会を開催した。
ドコモが2020年に5Gサービスを開始し、2023年で3年が経過した。社会インフラでも多種多様のサービスとしての活用が今後見込まれる5G。今、ドコモはどう考えているのか。
ネットワーク部長の引馬章裕氏が説明した。内容は5G時代に使われる技術、ユースケースの多様化、増大するトラフィックにどう対応するのか――この3つだ。
まずは「5Gネットワークの目指す姿」と題した内容。5G時代はもちろん、6G時代を見据え、多様化と増大するトラフィックに対応する、柔軟かつ高品質なネットワーク構築を目指す。
5Gは、以下のような場面で活用することが想定される。
ただ、これらは全て同じネットワークを使うわけではなく、それぞれのシーンに適したネットワークを使う。
それは引馬氏が説明した、ユースケースの多様化に大きく関わる内容だ。5Gは高速大容量、安定通信、低遅延といった複数の異なる要素を併せ持つ。さまざまなユースケースにどう応えるのか。通信事業者が用途やサービスに合わせて、柔軟にネットワークを提供するためには、「5G SA(スタンドアローン)」のネットワークスライシングという技術が欠かせない。
5G SAのネットワークスライシングでは、ネットワークを仮想的に分割してサービスごとに特徴付けが可能になる。5G SAで使用する周波数はSub-6帯(3.7GHz帯/4.5GHz帯)で、通信速度は下り最大1.7Gbps、上り最大143Mbpsとなっている。
ただ、この5G SA、ドコモ5G開始時には未提供で、NSA方式を提供してきた。5G SA方式でのネットワークの提供が法人向けに始まったのが2021年12月13日。個人向けはさらに後の2022年8月24日だ。しかし、5G SAの提供エリアは主要駅、商業施設にとどまっており、その恩恵をフルに受けられるほどの規模感ではない。
5G SAのエリアは今後拡大していく。「駅、空港、大学、スタジアム、商業施設といった、アップロード需要が見込まれる場所など、実際に使われるであろう場所を見極めて展開したい」(引馬氏)
ネットワークスライシングについては、2024年の本格展開を目指すとしている。1端末で複数のネットワークを切り替えて使える、1端末複数スライス制御を行う。端末1台で片方はプライベートのネットワーク、もう片方は法人用のネットワークという具合に使い分けが可能になる。引馬氏は「用途に応じて最適なネットワークのリソースを割り振り、通信をコントロールするため、高品質かつ安定した通信が可能」と補足的に説明した。
2024年の本格展開に向けては、1端末複数スライス制御に加え、無線区間の制御に関する実証実験を行うとしている。
引馬氏はドコモ肝いりワードといえる「瞬速5G」について改めて伝えた。この瞬速5Gは専用周波数帯で5Gのネットワークサービスを提供するもの。ドコモでは大都市を中心に積極的に瞬速5Gを展開してきた。エリア展開図を見ても、これまで点だった狭いエリアも面になり、拡大しているという。ただ、トラフィックの多い場所から優先的に瞬速5Gを展開していく考えは、これまでと変わらない。
このように着実な進化を遂げるドコモの5G。一方でここ数カ月の間に「主に大都市でつながりづらい」「ドコモ回線の速度が通常より遅い」などといった声がSNSで上がっている。
これについて、引馬氏は「SNSなどでドコモの通信品質に対するご心配のお声をいただいているのは認識している。特に都市部で混雑する時間帯に通信品質が低下する」と認め、元々、ドコモとして想定していなかった複数の要因があり、このような問題を引き起こしていることを明らかにした。トラフィックの増大の他にも再開発、4G収容量のひっ迫などが要因だという。
「エリアの構築に関しては、そのエリアのトラフィックを想定しながら設計しているが、再開発が多い。基地局を撤去しなければならなかったり、人の流れが変わったりすることで、そこにトラフィックが集中してしまう」(引馬氏)
では、ドコモとしてこの問題にどのように対応していくのか。大きく2種類のチューニングを行う。
1つはカバーエリアの調整。瞬速5Gを構築中で4Gでしかまかなえない場合、余裕のある瞬速5Gのエリアを伸ばすことで、全体のトラフィックをバランスよく吸収していくことを指す。もう1つは特定の周波数(1.7GHz、1.5GHz、2GHz、800MHz)に偏らないよう、分散制御を行うこと。
引馬氏は「これらを併せて2023年夏ごろまでには十分な速さを体感できない問題改善を図る方針」を示した上で、その後もドコモとして継続的に続けていく考えを明かした。
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