あると便利 でも不便な面も? 鉄道車両の「座席コンセント」を考える

» 2023年05月05日 17時00分 公開
[井上翔ITmedia]

 特急型を中心に、最近はスマートフォン/タブレットやPCを充電するための「コンセント」を備える鉄道車両が増えてきました。

 万が一モバイルバッテリーを家に置いてきてしまっても、ACアダプター(充電器)さえあれば充電できるので便利なのですが、ちょっとした不便さを覚える場面もあります。どういうことなのでしょうか……?

特急列車たち 特急型車両を中心に、コンセントを備える車両が増えてきましたが……

コンセントは「100V/2A」仕様が多い

 鉄道車両のコンセントは、交流100V/2A出力のものが多いようです。ワット換算すると、最大で200Wまで行けるということで、思った以上に余裕はあります。

 周波数は車両の仕様によってまちまちで、基本的には60Hz出力のものが多いです。ただし、今どきのACアダプターは50Hzと60Hzの両方で問題なく使えるので、周波数が問題になることはないでしょう。

 コンセントの位置は、前方の座席(各車両の最前列席の場合は前方の壁またはテーブル)の案内表示に書かれていますので、それを参考にして探してみましょう。

リバティー 東武鉄道の500系電車(通称「リバティ」)は、全座席に「100V(60Hz)/2A」のコンセントが全座席に付いています。直流区間専用の電車は、60Hz出力の車両が多いように思えます
2700系 JR四国の2700系気動車は、全座席に「100V(60Hz)」のコンセントが付いています。最大出力は書いてありませんが、一般的なスマホやノートPCであれば問題なく充電できます
E6系 60Hz出力のコンセントが多い中、JR東日本(東日本旅客鉄道)のE6系電車(秋田新幹線「こまち号」用の車両)は「100V(50Hz)/2A」のコンセントが装備されています。これは走行する路線が全て50Hz(交流2万5000Vまたは2万V)で電化されていることに起因するものと思われます

問題はコンセントの位置

 鉄道車両のコンセントは、出力“だけ”を見ればスマホ/タブレットやスマホの充電には十分すぎる容量を備えています。極端に大きな電力を必要とするゲーミングノートPCでも使わない限りは、困らないはずです。

 では何が「ちょっとした不便さ」なのかというと、コンセントのある場所だったりします。コンセントを備える鉄道車両は、その設置位置が車両によってまちまちで、一長一短なのです。

パターン1:座席の「肘掛け」にある

 東海道・山陽新幹線のN700S系電車の普通車や、JR東日本(東日本旅客鉄道)のE259系電車(成田エクスプレス用車両)などは、座席の「肘掛け」にコンセントがあります。

肘掛け 東海道・山陽新幹線のN700S系電車の普通車には、肘掛け部分にコンセントがあります

 このタイプの場合、左右どちらかの肘掛けを探せば、すぐにコンセントが見つけられることがメリットです。一方でACアダプターのプラグの形状によっては肘掛けの機能に悪影響を与えてしまったり、腕(肘)の動きですぐに外れてしまったり、うまく差し込めなかったりするデメリットもあります。

 肘掛けで使うことを前提にすると、プラグ近辺のスリムな(≒ACコードが別体の)ACアダプターの方がベターかもしれません。

一見すると問題なさそうだが…… 肘掛けにコンセントがある車両の場合、ACアダプターとの組み合わせによっては腕(肘)の動きですぐはずれてしまいます。写真はJR東海(東海旅客鉄道)のHC85系の普通車の肘掛けコンセントで、先に紹介したN700S系電車と同じ形状となっています

パターン2:座席の「前方の基部」にある

 前の座席の「基部(支持部)」にコンセントが備えられている車両も多いです。このパターンの場合、視線を下にやるとすぐに見つかることが何よりのメリットです。肘掛けにあるパターンよりも見つけやすいかもしれません。

 新幹線としては初めて全座席へのコンセント配備を実現したJR東日本のE7系電車とJR西日本(西日本旅客鉄道)のW7系電車では、窓側席を除く普通席のコンセントをこのように設置しています。

遠方 JR東日本のE7系電車とJR西日本のW7系電車の普通車では、窓側席以外のシート用のコンセントが前方座席の基部にあります(最前列席を除く)

 しかし、この設置パターンの場合、座席を回転させると利用できないことがあるという問題があります。ゆえに、最近は「パターン1」で紹介した肘掛け設置が多くなっているのだと思われます。

 もっとも、E7系/W7系の場合、座席を回転させても窓側席用のコンセントは利用できるようにはなっています(1つだけなのですが……)。

パターン3:壁面設置

 車内の給電装置の性能限界もあってか、コンセント付き座席の黎明(れいめい)期は車両の側壁(≒窓側席)または最前列(最後列)席の壁面にのみコンセントを配置するパターンも多くありました。

 東海道・山陽・山陽新幹線のN700系電車や、山陽新幹線の700系電車(レールスター)はその典型例です。先に少し触れた通り、E7系/W7系電車も、窓側席と最前列席のコンセントは壁面設置となっています。

 また、車両の改造でコンセントを後から設置した車両も、側壁または最前列/最後列席にのみ設置というパターンが多いように思います。

E6系 先に紹介したE6系電車は、側壁面と最前列/最後列席にコンセントを用意しています。側壁面のコンセントは、写真のように床面に近い位置にありますが、これはN700S系を除くコンセント付き新幹線車両の普通車も同様です
E257系 JR東日本のE257系電車の一部は、改造によって側壁の窓の下方にコンセントが追設されました

 この設置パターンの場合、ひとまず窓側(あるいは最前列)の席を確保できればコンセントにありつけることがメリットです。ただし、側壁のコンセントは窓側席専用“とはうたわれてはおらず、理屈の上では窓側以外の席の人でも利用可能です。窓側以外の席の人が「コンセントを使わせてほしい」と言われたら、相談に応じるようにしたい所です。

 一方、特に側壁下方にコンセントが設置されている場合は、ACアダプターの構造/形状次第でケーブルが支障したり、そもそもうまく入らなかったりすることがあります 差し込む方向を変えると解決できる場合もありますが、パターン1と同様にプラグ近辺のスリムな(≒ACコードが別体の)ACアダプターを使うと悩まずに済むと思います。

 側壁下方に設置の場合、ACアダプター本体やプラグを不用意に蹴飛ばしてしまうこともあります。これも注意したいポイントです。

 加えていうと、最後列の席の場合、後方壁面のコンセントを利用できないこともあります。最後列座席でも、側壁などにコンセントを設けている場合はよいのですが、最前列(最後列)席だけ、側壁のコンセントを省いている車両もあるので気を付けましょう。

E7系とW7系 「最前列席」は、反対方向に走行する際は「最後列席」になります。そのことを考慮してか、先にも登場したE7系/W7系では、最前列席(最後列席)の側壁にもコンセントを設置しています。そのため、座席を回転しない限り、進行方向を問わず最後列席でもしっかりとコンセントを利用可能です

「使う人の立場」でコンセントの設置位置は考えてほしい

 このように、位置による長短こそあれど、座席でコンセントを利用できる鉄道車両(列車)は確実に増えています。私自身は車内でノートPCを開いて仕事(原稿の執筆、編集や整理)を行う機会が多いので、コンセントで充電(給電)できるだけでものすごく助かります。特に、コンセントを使えない取材先が連続した場合は「ああ、コンセント様……」と(心の中で)感涙してしまうほどです。

 ただ、中には「もうちょっと設置位置を考えてよ……」と思ってしまうこともあります。例えば、コンセントが座席の“内側”にある車両が存在します。この場合、高確率で太ももとプラグがぶつかります。こうなるのは、座席の構造の都合だと思われるのですが、検討の段階で「ももがぶつかっちゃう!」という指摘はなかったのでしょうか……?

内側 東武鉄道の500系電車は座席の“内側”にコンセントがあります。そのため、太ももがプラグとぶつかってしまいます。プラグ一体型のACアダプターの場合、気付いたらプラグが外れていたなんていうこともよくあるんですよね……

 あるだけで、断然助かる鉄道車両のコンセント。これからはただ「付ける」だけでなく、どんなACアダプターでも使いやすい配置を検討してほしいなと思う今日この頃です。

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