「MNPワンストップ方式」がモバイル業界に与える影響 流動性はどこまで高まるのか石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

» 2023年05月20日 09時00分 公開
[石野純也ITmedia]

MNPワンストップ化に期待する楽天モバイル、ワンクリック契約も開始

 中でも鼻息が荒いのが、楽天モバイルだ。同社は、MNPワンストップ方式の導入や、6月1日に開始される「Rakuten最強プラン」に合わせ、6月末から「ワンクリックお申し込み」を導入する。これは、eSIMを活用し、楽天市場のバナーをワンクリックするだけで、契約用サイトに飛び、申し込みとeSIMプロファイルのダウンロードができるという仕組みのこと。楽天市場で登録したユーザー情報を活用し、手続きを簡略化する。

MNPワンストップ化 楽天モバイルは、6月末から楽天市場などの会員情報を活用したワンクリックお申し込みを開始する。当初はデータSIMのみだが、音声通話契約にも拡大していく方針

 楽天モバイルの常務執行役員でCMO(チーフマーケティングオフィサー)を務める河野奈保氏は、ワンクリックお申し込みを「最強のサインアップフロー」と自信をのぞかせつつ、MNPワンストップ方式に対する期待を次のように語る。

 「今までのMNPは、もともといたキャリアで予約番号を取得し、新しいキャリアで申し込む必要があった。予約番号を取るのが手間で、予約日を含めて15日以内という期限がある。忙しい人は、手続きをした上で新しいキャリアに乗り換えるのが手間だった。料金プランのベネフィットを比較できるというより、お店に行って1時間、2時間と説明を受け、乗り換えをするのが大変だった。料金が安くなり、価値を実感できるプランがあっても尻込みする。ワンストップサービスで、新しく加入したいキャリアで手続きをするだけになる」

MNPワンストップ化 楽天モバイルの河野氏は、ワンクリックお申し込みを「最強のサインアップフロー」と語った

 本人確認の問題もあり、当初はデータSIMでサービスがスタートするため、当初はMNPの対象にならない可能性もあるが、やや遅れて音声通話の契約もワンクリックお申し込みの対象にしていくという。楽天グループの会長兼社長、三木谷浩史氏は、「データSIMについては6月中に始めるが、それ以外も2カ月遅れ程度で開始できる」と見通しを示した。「乗り換えにくい、本人確認が面倒、そういうところを全部取っ払ってしまえというもの」(同)で、1億を超える会員基盤を持つ楽天グループにとっては追い風だ。

MNPワンストップ化 三木谷氏によると、約2カ月で音声通話にも対応していく方針だという

 ドコモの代表取締役社長、井伊基之氏もMNPワンストップ方式を「変更する側(のキャリア)だけでの受け付けで済むため、お客さまにとっての利便性は高い」と評価する。「流動性を高める施策として導入されたもので、ますますお客さまの移動がしやすくなる。出ていく方もそうだが、入ってくる方もそう。ポジティブに受け止め、対処するしかない」というのが、井伊氏の考えだ。KDDIの代表取締役社長、高橋誠氏も「チャンスと捉え、われわれに来ていただけるユーザーを増やすよう、努力をしていきたい」と語る。

MNPワンストップ化
MNPワンストップ化 ドコモの井伊氏、KDDIの高橋氏は獲得を増やすチャンスが増えることに期待をのぞかせた一方で、流出には警戒感も示している

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