楽天モバイルとKDDIの思惑が一致した「新ローミング契約」 ただし通信品質の改善は未知数?石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2023年05月13日 13時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 楽天モバイルとKDDIは、5月11日に新たなローミング契約を締結したことを発表した。これを受け、楽天モバイルは12日に記者会見を開催。新料金プランとして、「Rakuten最強プラン」を導入することを明かした。

 同プランはこれまでと同様、既存ユーザーにも6月1日から自動で適用される。最大の特徴は、KDDI回線を使うローミングエリアでの通信が、楽天モバイルの自社回線と同様、容量無制限になることだ。ここでは、その特徴や新料金プランの提供に至った背景を解説しつつ、今度の行方を占っていきたい。

楽天モバイル 楽天モバイルは、6月1日にRakuten最強プランを導入する。既存のユーザーも、料金プランは自動で切り替わる

料金は据え置き、ローミング時の5GB制限は撤廃に

 新料金プランと銘打たれたRakuten最強プランだが、ベースとなる料金自体は、2022年7月から提供してきた「UN-LIMIT VII」から変わっていない。3GBまでは1078円(税込み、以下同)、20GBまでは2178円、以降は無制限で3278円だ。楽天市場でのポイント付与率が最大2%上がる契約者特典も変わっていない。最大の特徴は、パートナー回線のローミングにある。

楽天モバイル 料金自体は、現行のUN-LIMIT VIIから変わっていない。20GBを超えても、3278円で済む

 新規参入のため大手3社と比べて基地局が少ない楽天モバイルは、その穴を埋めるため、KDDIにローミングし、サービスを提供していた。この期限は、2026年3月に設定されている。一方で、当初から自社回線が比較的整備されていた東京、名古屋、大阪などの屋外はローミングをしていなかった。また、ローミング費用がかさんだこともあり、楽天モバイルは基地局整備を前倒しした上で、パートナーエリアを次々と終了していた。

楽天モバイル
楽天モバイル 参入直後は人口カバー率が低く、その穴を埋めるため、KDDIのローミングに頼っていた。一方で、楽天モバイルはエリアを急速に拡大。その比率を一気に減らしていた

 ただ、楽天モバイルが4G用に使う周波数は1.7GHz帯のみ。800MHz帯などのいわゆるプラチナバンドと比べると浸透率が低い電波特性もあり、東京23区のような大都市圏でも、地下にある店舗や高層ビルなどで一部つながらないスポットが点在していた。また、都道府県単位で見るとローミングを縮小しているものの、人口の少ない地域などには、依然として楽天モバイル回線が提供されていないことがある。

 こうした中、楽天モバイルとKDDIは新たなローミング契約を締結したことを11日に発表。新協定は6月1日に開始され、終了期間も2026年3月から2026年9月に約半年間延長された。既存のローミングエリアの期間を延ばしただけでなく、サービスイン当初から自社回線だけでエリアを構築していたいわゆる東名阪でも、新たにローミングを開始する。Rakuten最強プランは、この新ローミング協定を反映させたものだ。

楽天モバイル 11日、新たなローミング契約の締結を発表した。同じプレスリリースは、KDDIからも出ている

 ローミングエリアの変更に合わせ、パートナー回線接続時のデータ容量は5GBから無制限に拡大する。UN-LIMIT VIIまでは、楽天モバイル回線のデータ容量は無制限だった一方で、ローミング時には5GBという上限が設けられていた。この容量を超えると、通信速度は1Mbpsに制限される。同じ料金ながら、ユーザーがいるエリアによってネットワークの使い勝手が変わってしまっていたというわけだ。

楽天モバイル ローミング時のみ、容量制限があるがゆえにユーザー体験が低下しているのは大きな課題だった。Rakuten最強プランでは、これを解消できる

 楽天グループの会長兼社長三木谷浩史氏も「5GBを上回ったら1Mbpsに落ちるということだったが、かなりの方が(追加でデータ容量をチャージせず)1Mbpsの設定のまま使っていたが、そうなるとKDDI回線に行くと遅くなってしまう」と語る。「そのスロットリングがなくなるので、他社と同じ水準に持っていける」(同)というのが、新料金としてRakuten最強プランを導入する狙いの1つだ。

楽天モバイル 5GB超過後も低速のまま使っているユーザーが多かったと語る三木谷氏
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