ただし、それはPixel FoldやPixel Tabletが市場で受け入れられればの話だ。端末が行き渡らなければ、かつてのAndroidタブレットと同様、対応アプリが十分そろわない事態も起こりうる。サムスン式ともいえる、縦長のまま画面を大型化するフォルダブルスマートフォンがスタンダードになる可能性もある。日本では、Pixelの知名度を生かし、いかにPixel Foldを普及させていけるかがカギになりそうだ。
同シリーズの販売当初と比べ、Pixelシリーズの知名度は大きく上がり、廉価モデルのPixel aシリーズは売れ行きも好調だ。特にチップセットに自社開発のTensorを採用して以降、その勢いが顕著になった印象だ。いったんはPixelシリーズの取り扱いを見送っていたドコモも、「Pixel 7a」で販売を再開し、販路を拡大した。Pixel Foldも3キャリアが取り扱う。
MM総研が5月に発表した2023年度通期のメーカー別出荷台数調査では、Googleがシェア4.6%で6位につけている。ハイエンドモデルからエントリーモデルまで、幅広いラインアップを持つ他のメーカーには及んでいないが、Androidでは、シャープ、ソニー、サムスン電子、FCNTに次ぐ順位で、徐々に日本市場でPixelブランドが定着していることがうかがえる。
Pixel Foldは価格が約25万円からと高額で、廉価モデルのPixel 7aはもちろん、ハイエンドモデルの「Pixel 7」や「Pixel 7 Pro」と比べても販売台数は少なくなりそうだが、Pixelシリーズの知名度を生かせば、Galaxy Z Foldの対抗馬になりえる。ドコモとKDDIしか取り扱っていないGalaxy Z Foldに対し、3キャリアとGoogle自身が販売するPixel Foldは、より価格競争が起こりやすい点も普及の後押しになるだろう。
また、日本では事実上、Pixel Foldが2つ目の横開き型フォルダブルスマートフォンになる。先に挙げた中国メーカーの端末はいずれも展開国に偏りがあり、日本市場には未投入だからだ。Galaxy Z Foldのライバルとして競争が起これば、フォルダブルスマートフォンがより一般化する契機になりうる。対抗馬が登場することで、“サムスンの特殊なハイエンド端末”という位置付けを脱することができるからだ。
一方で、Pixel Foldは、展開国が従来のPixelより限定されており、現時点では米国、英国、ドイツ、日本の4カ国にとどまっている。価格が高く、生産台数も少ないため、販売国を絞り込んだと見ていいだろう。ただ、アプリを含めたエコシステムを確立するには、やはりグローバルで一定程度、端末が普及している必要がある。4カ国展開では物足りないのも事実だ。このジレンマを、Googleがどう解決していくのかにも注目したい。
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