Googleが今、折りたたみスマホとタブレットを投入する理由(1/2 ページ)

» 2023年06月28日 06時00分 公開
[はやぽんITmedia]

 Googleが5月11日に発表した折りたたみスマートフォン「Pixel Fold」、タブレット端末となる「Pixel Tablet」。Pixel Tabletは6月20日に発売され、Pixel Foldは7月下旬の発売を予定している。Pixel Foldはドコモ、au、ソフトバンクの大手3キャリアも取り扱う。今回は、Googleがなぜこのタイミングでこれらの端末を出すのか。その意義について考えた。

“開発用の基準”が今まで存在しなかった折りたたみスマホ

  折りたたみスマホ(以下、フォルダブル端末)といえば、2018年に発売されたRoyoleの「FlexPai」に始まり、翌年に発売されたサムスンの「Galaxy Fold」で世間にその名を知らしめたジャンルの商品だ。

 その一方で、この“画面サイズが可変する”フォルダブル端末のソフトウェアについては、端末の画面サイズ検知や折りたたむ際の挙動が異なる理由などから、最適化されたアプリの開発が難しいと指摘されていた。今もなおGalaxyやHuaweiくらいしか「ソフトを含めて完成度が高い機種がない」と評価されるゆえんだ。

 そんな中、Android OSを束ねるGoogleも黙っているわけではなかった。世界的なフォルダブル端末の需要の高まりから、大画面への最適化を行った「Android 12L」をリリースした。

 Android 13以降は大画面に最適化され、フォルダブル端末もある程度根幹の部分が共通化されて使いやすくなった。ソフトウェア面も開発のハードルが下がったことで参入障壁も下がったのだ。これに伴い、OPPOやvivo、HONORなども本格的に参入し、多くのメーカーから製品が登場した。

折りたたみスマホ 大画面かつスライタスペンが利用できることも売りの「HONOR Magic Vs」

 意外かもしれないが、フォルダブル端末には「開発用の基準」や「レファレンス」と呼べる端末がなかったのだ。実質的なレファレンスとなっていたGalaxy Foldシリーズでも、最新OS対応には時間がかかり、オンタイムでの最適化や開発は難しいものがあった。

 今後、フォルダブル端末は多くのメーカーから発売されることが考えられ、折りたためる機構を生かしたコンテンツの登場や各種最適化も考えられる。そのような中で、最新OSを利用できる「Pixel」からフォルダブル端末が登場したことは大きな意味を持つ。

 各種アプリといったコンテンツの最適化などが早まり、市場全体でのフォルダブル端末におけるユーザー体験が向上するのではないかと考えられる。Googleがこのような商品を出すことはある意味、次世代のスマートフォンの形における「1つの答え」が出たと捉えてもいい。

折りたたみスマホ Google Pixel Foldはカバー画面が5.8型、メイン画面が7.6型となるフォルダブル端末だ。どちらの画面も120Hzのリフレッシュレートに対応している

 プロセッサはTensor G2を採用し、メモリは12GB、ストレージは256GBとなる。4800万画素のメインカメラ、1080万画素の超広角カメラと5倍望遠のカメラを備える。本体は防水に対応し、たたんだときの厚みは12.1mmに抑えた点が特徴だ。重さは283gとなる。

発売から7年が経過したレファレンスタブレットの置き換えが「Pixel Tablet」

 実のところGoogleがAndroidタブレット端末を出すことは初めてではない。かつての「nexus」の頃は「nexus 7」「nexus 10」「nexus 9」という、画面サイズの異なるレファレンスタブレット端末が登場していた。

 Pixelにブランディングされてからは「Pixel C」が2015年に登場したが、それ以降GoogleはChromebook端末に注力したこともあり、同社からAndroidタブレットは現れなかった。

折りたたみスマホ 2015年に発売されたPixel Cを最後に、Googleから長らくAndroidタブレットは出ていなかった

 2016年以降は「PixelBook」などのChromebookに力を入れていたGoogle。2016年にはPlay ストアのAndroidアプリがChromebookで動かせるようになるなど、Androidタブレットの存在意義すら問われたこともあった。

 そんな中で流れを変えたものが、中国におけるタブレット端末市場の拡大だ。新型コロナウイルスによる制限の中、中国ではロックダウンが行われるなど日本よりも厳しい規制を敷かれたことは記憶に新しい。

 これによってテレワークやリモート学習といった需要も拡大し、仕事や教育で使える端末が急きょ求められるようになったのだ。日本でも需要の大きかったChromebookがほぼ利用できない中国市場では、Windows PC以外ではAndroidタブレット端末が注目されるようになった。

 また、スマートフォンやPCとは別の「2台目」作業用端末を求める声もあり、中国で発売されている機種はある程度のグレードになるとおおむねペンやキーボードが利用できるようになっている。

 そしてここにも「Android 12L」の存在が影響してくる。世界的なフォルダブル端末の需要の高まりから、大画面への最適化を行ったものになるが、この中にはタブレット端末への最適化も含まれているのだ。

 このAndroid 12Lの登場以降、中国メーカーを中心にAndroidタブレット端末が多く登場している。フォルダブル端末とは画面サイズやコスト面で異なるジャンルとなり、Windows PCなどとも被らない部分でユーザーのニーズに応えている。Googleとしても中国市場の盛り上がりは、Androidタブレット端末の可能性や潜在需要を改めて把握するきっかけとなったと考えられる。

折りたたみスマホ Xiaomi Pad6シリーズは中国でも人気のタブレット端末となっている

 このような需要が増してくると、アプリ側の対応も急務になってくる。そうなると、Googleとしてもレファレンス端末が必要になってくる。先に述べたPixel CはAndroid 9.0でサポートを終了しており、今となっては完全に賞味期限切れだ。

 Pixel Tabletはスマートホームハブやスマホの拡張というGoogleらしい意味はもちろん、これからのAndroidタブレット端末の最適化の基準、一種のレファレンス端末として出す意味が強いのかもしれない。

 iPad Proに対抗するGalaxy Tab Sシリーズなどの端末とPixel Tabletが目指すコンセプトは異なるが、自由な発想でさまざまな商品を展開できるAndroidプラットフォームを生かした商品であることには変わりない。

折りたたみスマホ 「Pixel Tablet」

 Pixel Tabletは11型のディスプレイを備えるタブレット端末だ。プロセッサはTensor G2を採用し、メモリは8GB、ストレージは128GBまたは256GBとなる。

 Chromecast built-inに対応し、タブレット本体にChromecastで映像をスマートフォンなどから送ることが可能だ。付属のスタンドを用いてスマートスピーカーやスマートホームハブとしての利用も想定されている。

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