世界の折りたたみスマートフォン市場でシェアのほとんどを握っている製品はSamsungの「Galaxy Z Fold」「Galaxy Z Flip」シリーズだ。Samsungの後に折りたたみスマートフォンの市場に参入したHuaweiはグローバルでは存在感を失っているが、中国市場では強さを見せている。だが折りたたみスマートフォンを出しているメーカーはこの2社だけではない。2023年は後発の中国メーカーが一気に攻勢をかけようとしている。
2023年2月27日から3月2日までスペイン・バルセロナで開催された世界最大の通信関連イベント「MWC Barcelona 2023」では、スマートフォンメーカーの新製品発表が相次いだ。その中で目立っていたのが折りたたみスマートフォンだ。OPPOは「Find N2」と「Find N2 Flip」の横折り式、縦折り式の2つのモデルを展示。このうちFind N2 Flipはグローバル展開が発表されたばかりで、MWCの同社ブースの一番目立つ場所に多数の製品が展示されていた。
Find N2 Flipは6.8型ディスプレイを搭載しつつ、本体を半分にたためば75.2(幅)×85.5(高さ)×16(奥行き)mmと手のひらに収まるコンパクトな大きさに変形させることができる。最大の特徴は3.26型という大きなアウトディスプレイを搭載していることで、閉じたままでも天気予報や通知を十分な広さで表示できる。また、閉じた状態でカメラを起動し、メインカメラを使ってアウトディスプレイでプレビューしながら高画質な自撮りも可能だ。
OPPOは2021年12月に横折り式の「Find N」で折りたたみスマートフォン市場に参入、2022年12月に後継機であるFind N2と、初の縦折り式のFind N2 Flipの2製品を投入した。Find Nは開くと7.1型、閉じると5.49型のディスプレイが現れる比較的小ぶりな横折式モデルで、Fnd N2はヒンジ構造の改良で本体厚みを薄くした。一方、縦折り式のFind N2 Flip2は小型かつスタイリッシュなデザインで高い人気を誇っている。
中国の調査会社CINNO Researchによると、2023年1月の中国の縦折りスマートフォンで、シェア1位はOPPOとなった。それまではHuaweiの「P50 Pocket」と「Pocket S」が高い人気を誇っていたが、パープルなど美しいボディーカラーや前述したアウトディスプレイの大きさが受け、OPPOが製品投入から1カ月で一気にトップに立ったのだ。
中国全体のスマートフォンの販売台数でそれまでトップを走っていたのはHuaweiの縦折りモデル「Pocket S」だった。横折り式モデルは画面サイズが大きくタブレットとしても使用できるため、ビジネスやクリエイティブツールとしての需要が高く、価格が高いこともあってややニッチな製品である。
それに対して、縦折り式モデルは大きい画面を小さくたたんで持ち運べるだけではなく、外観もよく今のスマートフォンの進化系といえる。はるか昔にガラケーが、大型化するとともにフリップスタイルが主流になったときと同じ道を歩んでいくのだろう。
縦折り式モデル人気は他の国でも顕著になっている。2022年8月にSamsungが韓国でGalaxy Z Fold4とGalaxy Z Flip4を発売したとき、予約台数は縦折り式のFlip4が65%、横折り式のFold4が35%だった。また調査会社カウンターポイントが4カ月おきに行っている各国のスマートフォン販売台数上位5機種の調査結果で、2022年10月はSamsungのGalaxy Z Flip4が4位に入ったほどだ。OPPOはこの「縦折りスマホ人気」のトレンドを先取りしようと、Find N2 Flipをグローバルで展開する予定だ。
OPPOに合わせるようにHONORも「HONOR Magic Vs」のグローバルローンチを発表している。HONOR Magic Vsは横折り式のスマートフォンで、ライバルはSamsungのGalaxy Z Fold4だ。ディスプレイは開くと7.9型、閉じると6.45型で、Galaxy Z Fold4の7.6型/6.2型より大きい。カメラも5000万画素を2つ搭載するなど高性能だ。またヒンジ部分は閉じても隙間のないゼロギャップ構造としており、外観上の完成度も高めている。
Huaweiから分離独立したHONORは高性能カメラを搭載した「Magic」シリーズのカメラ性能がDXOmarkでトップスコアを記録するなど高い技術力を誇っているが、ブランド認知度がまだ低い。横折り式モデルの投入はHONORの知名度を広げるものになるだろう。
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