Y!mobile新料金プランで「値上げをした意識はあまりない」 ソフトバンク寺尾氏が語る狙い(2/3 ページ)

» 2023年08月25日 06時00分 公開
[石井徹ITmedia]
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データくりこしや1GB未満の割引は「やりたくなかった」

―― 「データくりこし」は現行プランを踏襲していますね。

寺尾氏 2021年8月から余ったデータ容量を翌月に繰り越せる「データくりこし」を導入していて、非常に好評をいただいています。データくりこしはお客さんからの要望が非常に多くあり導入を決めたサービスなのですが、僕は正直なところ、導入反対派でした。

―― なぜ反対されたのですか?

寺尾氏 データくりこしは、ARPU(1回線あたりの収益)をものすごく落とすんですよ。それでも、ユーザーインタビューを何回も繰り返して、非常に強いニーズがあることが分かったので、導入を決定しました。

ymobile ユーザーの強い要望を受けて導入されたという「データくりこし」

―― 新プランでは、MプランとLプランに自動割引が導入されて「月1GBしか使っていない月は最安1078円」という料金水準になっています。20GB以上のプランを選ぶユーザーが1GBも使わないという状況は、現実にあり得るのかと思ってしまうのですが……。

寺尾氏 これがあるんです。これも僕はやりたくなかったんですよ。

 実際こういうプランを想定してみると、ボーダーラインの1GBを時々下回る人がいるんですよ。普通に使っていて、数カ月に1回、旅行に行かれるのかどうか、その月だけ1GBも使わない、という方が一定数いらっしゃいます。そういう人がいるならやるか、と今回導入しました。

 この自動割引のポイントは、割引そのものが翌月適用となるので事前のプランの変更が不要なことです。旅行の月に料金プランをSプランにして、翌月にMプランに戻すといった操作を行う必要が一切ありません。

ymobile シンプル2のM/Lプランでは、データ利用料が1GB以下の月に自動で割引が提供される

―― 通話サービスはどのように変わったのでしょうか。

寺尾氏 シンプル2を対象とした新たなかけ放題サービスとして「だれとでも定額+」と「スーパーだれとでも定額+」をご用意しています。だれとでも定額+は月880円で10分間の国内通話がかけ放題、スーパーだれとでも定額+は月1980円で10分を超える国内通話がかけ放題です。

 これら2つの通話定額には従来有料オプションとして提供していた留守番電話プラス、グループ通話、割込通話、一定額ストップサービスという4つのオプションの利用料が含む形として、ご負担を小さくできるような形にいたしました。

ymobile 通話定額は「留守番電話プラス」などの有料オプションの利用料が含まれる形に整理された。従来プラン向けと比べると110円ずつ値上がりしている。

速度制限が2段階になった理由

―― 新プランでは「2段階目の速度制限」として、128kbpsの速度制限を導入するという予告されています。この制限はどのような狙いで導入したのでしょうか。

寺尾氏 今までの容量超過後の速度制限は、Sプランで300kbps、M/Lプランで1Mbpsに設定していました。今回のシンプル2では、2段階目の速度制限として、容量超過後に一定量以上お使いいただいている方に対して、128kbpsの速度制限を実施します。

 例えばSプランでは、フルスピードで提供する容量が4GBで、4〜6GBまでは300kbpsで提供します。6GBを超過した際には2段階目の128kbpsへ速度を制限して提供します

 この帯域制限の趣旨は、ネットワークリソースをより有効に活用して、容量増加に対するコスト増加を補うことです。

ymobile 低速時で長時間使い続けるユーザーに対して、2段階目の速度制限が適用される

 2段階目の制限がどのくらい適用されるかというと、ほとんどの方は対象にならないと考えています。現状の利用状況ですと、98%くらいのユーザーは、1段階目の帯域制限の枠内に収まっています。

 一方で、それを超えるデータ容量をお使いの残りの2%の方は、全体のネットワークのリソースの7〜8%をお使いになっています。

 この2%の方の使い方が現状、Y!mobileのサービス運営に深刻な影響を与えるかというと、そうではありません。ただし、収益を改善していくためにも運営上の収支を改善する必要があります。多くの容量をお使いの方には、ソフトバンクブランドなどの上位プランをお選びいただけるように、ご協力をお願いしたいと考えています。

―― 新プラン発表と合わせて、スティックタイプのLTEルーター「Stick WiFi」も発表されました。

寺尾氏 あれ、安かったでしょう。いろいろと試行錯誤していく中で試してみたアイデアの1つです。

 iPadやモデム搭載PCもそうですが、やっぱりセルラー機能を入れると、デバイスの値段って1万円〜1万5000円くらい上がっちゃうんですよ。それがモバイルWi-Fiルーターなら相当安いものもご用意できます。それに他社さんで先行した事業者さんもあったので、ちょっと勉強を兼ねて導入させていただきました。

ymobile 「Stick WiFi」。ソフトバンクとY!mobileで8月30日に発売する

 発表会でご紹介しましたが、Y!mobileにはシェアSIMという機能があり、副回線のSIMを3枚まで発行して、月間容量をシェアできます。IoT向けの取り組みも強化しこうということで、新プランでは月額利用料を改定しS/M/Lのどのプランでも539円でお使いいただけるようにしました。

ymobile シェアプランはS/M/Lのどのプランでも均一の料金となった。

―― 他社では常時速度制限がかかる条件で低価格なプランを提供している例もあります。

寺尾氏 もちろん、検討自体は行っています。ただし、実際に提供しようとすると、やはり「分かりやすさ」の点で課題を感じて、踏み切れていない状況です。

 「何Mbpsで月何百円です」というと条件をしっかりとお伝えすればいいわけですが、幅広い層のお客さんがいるY!mobileで、こうした条件を適切にお伝えするのは、おそらく困難だと考えています。

 仮にソフトバンクでこういった形のプランを提供する場合は、オンライン限定のLINEMOなどで他のプランと明瞭に区別できる形にするなど、提供形態に工夫が必要と考えています。

 別の観点で言えば、Y!mobileでは「3つのプラン」という分かりやすさを大事にしています。もちろん社内では新たなプランの議論もさまざま行っているのですが、それでも3つのプランという分かりやすさは崩さず、大切にしていこうという思いでいます。

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