「ああ、なるほど! iPhone 15がUSB Type-Cになるのだから『持ち歩くケーブルは1種類だけ』の理想を実現するために、AirPods ProもUSB Type-Cに対応したんだな」――多くの人が、ただそれだけのニュースだと思ったはずだ。そもそも製品名も既にあった「AirPods Pro(第2世代)」そのままだ。
だが、実は本製品とLightning搭載の第2世代AirPods Proには、他にも違いがある。全員が恩恵を受けるのが防じん性能の強化だろう。防じん試験用粉じん(直径75μm未満)が入ったとしても所定の動作及び安全性を損なわないIP5Xと、製品に対するあらゆる方向からの水の飛まつに対し保護されるIPX4の特徴を併せ持ったIP54に対応した(従来の第2世代モデルはIPX4のみ対応だった)。
AirPods Proと言えば同じiCloud+に登録したiPhone/iPad/Macなどの機器間で自動的に接続を切り替えてくれる機能も特徴の1つだが、この切り替えの速度も向上している。例えばiPhoneで音楽を聞きながら、MacのSafariのブラウザでYouTubeの動画などを再生すると、iPhoneの音楽再生が一時停止し、すぐさまMacで再生しているYouTubeの音がAirPods Proから聞こえ始めてくる。
これ以外に、もう1つまだ試せていない機能の違いがある。2024年に登場予定の「Apple Vision Pro」と、ロスレスオーディオで接続する機能だ。2024年に、まずは米国から発売予定のApple Vision Proは立体的な映像だけでなく、リアルな空間オーディオの音体験ができるデバイスでもあるが、通常の利用では本体に内蔵されたスピーカーから音が再生される。
このため、乗り物の中など知らない人がいる屋内ではAirPods Proの装着が推奨されている。その際、このUSB Type-C版AirPods Proを使えばワイヤレス接続であるにも関わらず、20bit/48KHzという十分な高音質の空間オーディオが、品質が損なわれることのないロスレスの音質で、しかもほとんど遅れなくリアルタイムで再生されるという。
Bluetooth接続などでは不可能な音体験は、Appleが独自開発し特許も取得した最新技術で実現するという。いずれApple Vision Proを入手したいと思っている人には、本製品が現時点で唯一の選択肢となりそうだ。
それでは、同製品の最大の特徴であるUSB Type-Cを使った充電について見てみよう。ケーブルやコネクターの端子の内側まで美しく作るのがAppleだが、本製品もその伝統に違わない。付属する高級感のある編み込み式のUSB Type-C充電ケーブルは、よく見ると片側に小さな文字で、その製品の品質を保証するようにケーブルの型番やシリアル番号がデボス加工で刻印されている。
デジタル機器同士を繋ぐケーブル類には、メーカー純正品よりも値段が安い他社製品がよく出回る。そしてそういった低品質のケーブルは、しばしば動作不良を巻き起こしたり、場合によっては製品の故障や最悪火事を引き起こす要因になったりすることもあり得る。
自社製品での体験に責任を持つAppleは、ユーザーがこうした粗悪ケーブルで悪い思いをしないように、これまで他社製品であっても検品して、基準を満たしたものだけに「Made for iPhone」の承認を行い、承認した製品にだけ提供される特別なチップを搭載しないと充電ができない、という厳しい方法で品質を管理した。
賛否両論がある方法かもしれないが、技術に詳しい人が自己責任でケーブルを選ぶ他のスマートフォンと違い、テクノロジーに詳しくない人にも安心して勧められる製品を作っているAppleらしい良い手段だったと筆者は思っている。
これからはMac、iPhoneだけでなく、AirPodsまで玉石混交の業界標準規格であるUSB Type-Cに移行するわけだが、安心して製品を使いたい人は要注意だ。特に初心者には、これまで以上に純正品を、純正品以外が欲しい場合でも値段で選ばずに名の知れたブランドのものを買うことをお勧めしたい。
Appleのこだわり抜いたケーブルの作りは、品質にこだわって作るとこうなるという1つの手本のようなケーブルになっている。新しいAirPods Proには、この上質なUSB Type-Cケーブルが標準で付属する。
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