Appleが掲げた、2030年に向けて完全なカーボンニュートラルを達成するという大きな目標。今回の新製品発表は、同社がその目標である「Apple 2030」達成に向けて、さらに取り組みを加速させたことを強く感じさせた。
Apple Watch全製品が、使用マテリアルの見直しからパッケージング、輸送までを見直し、さらには購入者が製品の充電に使う電力までAppleが生み出す電力でオフセットするという。この世界でも初めての完全カーボンニュートラル製品になったというニュースは、今はまだピンとこない人が多いかもしれないが、これから先、十数年が経ち他社も追いついてきた頃に「そうか。あれが全ての始まりだったんだ」と思い出す、そんな発表なのではないだろうか。
ただ、この話は一旦脇に置いて、気になる新発表の製品を振り返りたい。
まずは個人的に最も心動かされた「iPhone 15 Pro」「iPhone 15 Pro Max」からだ。新しいチタンボディーが画面に映し出された時に、製品がとても引き締まっていて美しいと感じた。
背面にある3つのレンズ、隆起したレンズプレート、ガラスコーティングされた背面、金属製の側面と製品を構成する基本要素は、これまでのiPhone Proと同じなのに一体どこが違うのか。
宇宙探索機器にも採用される高い剛性を持つ金属のチタンを採用したことで、画面を囲むベゼルをこれまでで最薄にできたことが大きな要因の1つだ。このおかげで、本体サイズも1mm未満の単位ではあるが小さくなっている。
さらに小さな部分のディテールだが、今回のiPhone 15 Pro/Pro Maxでは「丸みを帯びた角」を採用している。実は、これが見た目にも触り心地にも大きな違いを生み出している。
実際、この製品は見た目にも美しいが、それに負けないくらい触り心地も良い。金属とガラスの塊なのに、まるで人の肌に触れているようななまめかしい心地よさがある。
製品の色合いも美しい。チタンの地色を生かしたナチュラルチタニウムは、まるで工芸品のようだ。ブルー/ホワイト/ブラックのモデルも製品の触り心地に一切の影響を与えず、まるでこれが地色であるかのような美しさを放っている。
かつてデザイナーの深澤直人さんが、Appleの製品作りは大量生産品であるにも関わらず工芸品のような作りだと「インダストリアル・クラフトマンシップ」という言葉で説明していたが、まさにそれを感じさせる。
これまでのiPhoneの見た目も十分良かったが、例えデジタル機器といえど「モノとしての美しさは、それだけで十分所有欲をかき立てる」と改めて感じさせてくれた。
もちろん、ただ美しいだけの製品ではない。搭載された最新プロセッサ「A17 Pro」は画面描画で大きな違いを生み出すGPU処理を中心に性能が大きく飛躍した。最大20%速いといわれているが、光の反射などを正確に計算してコンピューターグラフィックを描きだすレイトレーシングの性能に至っては、最大4倍の性能差があるという。
増え続けるAI系アプリで重要なNeural Engine系の処理も最大2倍だ。CPUを使った標準的処理も10%高速だという。
Appleはいよいよ2024年、空間コンピューティングのための新製品「Apple Vision Pro」を米国で発売するが、そのApple Vision Pro用のコンテンツを用意するには、これまで以上のグラフィックス性能が要求される。それに備えるという意味もあったのかもしれない。
実際、本製品ではApple Vision Pro上では立体映像として再生される空間ビデオを撮影する機能も後日、提供予定だ(iPhone上では普通の平面映像として再生される)。
利便性を感じる特徴としては「着信/サイレントスイッチ」に代わって採用された「アクションボタン」を挙げることができる。上下の音量ボタンの上に用意されたこの小さなボタンは、購入直後の初期設定では着信/サイレントスイッチと同じ働きで、消音モードのオン/オフを切り替えられるようになっている。そして「設定」アプリを使って集中モードの切り替え、カメラの起動、フラッシュライトのオン/オフ、ボイスメモの起動、翻訳の起動、拡大鏡、ショートカット、アクセシビリティ機能の呼び出しといった役割を担わせることもできる。
さらに、例えばカメラの起動でも自撮り撮影モード/ビデオモード/ポートレートモード/ポートレードモードでの自撮りと撮影モードの指定まで行える。
続いて、カメラや接続端子回りの変更を見ていこう。
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