実機に触れて分かった「iPhone 15 Pro」の美しさ 新しいApple Watchはカーボンニュートラルで製造業の歴史に名を刻む(2/4 ページ)

» 2023年09月14日 06時00分 公開
[林信行ITmedia]

特に進化したiPhone 15 Pro Maxのカメラ回り

 例年通りではあるが、このカメラの機能が2023年のiPhoneの魅力を大きく引き立てる役割を担っている。特に今年は一回り大きなiPhone 15 Pro Maxだけ、望遠レンズの性能が大幅に向上し35mm換算で120mm相当の望遠レンズを内蔵している。

 大きい本体内の空間を生かし、レンズの下でガラスを折りたたみ、光線を4回連続して反射させることでレンズとセンサーとの間の距離を稼いだという。また、手ブレが大きくなりがちな望遠撮影のために、最大毎秒1万回の微調整を行うiPhone史上、最も先進的な手ブレ補正システムも備える。

 なお、搭載するレンズは3種類だが、デジタルズームを使わない光学撮影でマクロ撮影(接写)、35mm換算13mm/24mm/28mm/35mm/48mm/120mm(標準レンズに対して5倍)相当の7種類のレンズ相当の撮影ができる(標準サイズのiPhone 15 Proでは最望遠で標準レンズに対して約3倍の77mm相当)。

 4800万画素の高精細なセンサーを内蔵しているが、センサー素子4つを1つとして機能させることで他の画角を生み出している。

Apple Event 2023 iPhone 15 Pro Maxは、マクロから5倍ズームまでの光学撮影に対応する。ちなみに、ロケーションはさりげなく日本だ
Apple Event 2023 光りを4回反射させて、5倍ズーム相当の120mmを実現している

 もっとも、こういったスペックからは伝わってこないのが、実際の写真の描写性能だ。これについては是非、今後実機を使ったレビューで検証していきたい。

 動画撮影も進化した。個人的には、シネマティックモードでズームの切り替えが可能なのもうれしい(これまでは撮影を開始すると、ズーム倍率が固定されてしまった)が、それに加えてメジャーな映画製作の世界的な色彩基準である「ACES」(Academy Color Encoding System)に、スマートフォンとして初めて対応した。着実にプロ用映像機材として地歩を固めているのが伝わってくる。

Apple Event 2023 ACESのサポートなど、今まで以上にプロユースでの動画/静止画撮影が進む可能性がある

LightningからUSB Type-Cに

 これだけでも十分な魅力があるが、それらに加えて今回、発表前からうわさがあった通り、Lightning端子がUSB Type-C端子に取って代わった。

 筆者個人は、USB Type-Cは良いデザインのケーブルだとは思っていない。これまでのLightning端子では抜け防止のために側面に凹みが用意されており、製品に差した時にカッチリとハマる感触の心地よさがあったり、粗悪なケーブルや周辺機器が出回らないように「Made for iPhone」というプログラムを通して他社製品の品質をしっかりと管理していたりした。

 これに対してUSB Type-Cはオープンな業界標準ではあるが、単純な作りで抜けやすく、壊れやすい。おまけに同じ形状で異なる機能のケーブルが乱立していれば、粗悪品も少なくない。

 Appleが常に大事にしてきた、機械に詳しくない人でも迷う事なく満足のゆく製品体験ができるという目標を維持するのには難のある規格だ。しかし、欧州連合(EU)の要請により業界標準の端子に切り替える必要があった。

Apple Event 2023 従来のLightningからUSB Type-Cに切り替わった
Apple Event 2023 新たにUSB Type-C端子の採用により、従来必要だったLightning→USB Type-Cのケーブルや変換アダプターを使わずに、USB Type-Cケーブル1本でMacBookなどと直接接続できるようになった

 ただ、さすがにAppleは戦略的で全てのユーザーが行う「充電」に関しては、本体裏に埋め込まれた円形の磁石を使って製品を非接触充電するMagSafeを2020年から用意している。こちらはカチっと本体が充電のスイートスポットに吸い寄せられるような感触の心地よさがある。

 最新のiOS 17では、このMagSafeを使って充電している間、iPhoneを他の情報も表示して置き時計としても活用できるスタンバイという機能を用意し、ユーザー体験の劣るUSB Type-CではなくMagSafeで充電するようにうまく誘導している。

Apple Event 2023 iPhone 12から採用されたMagSafe。対応アクセサリーも続々と増えている

 またUSB Type-C端子も、搭載するからにはその利便性を最大限に生かすべく毎秒最大10Gbpsのデータ転送ができるUSB 3.2規格が使える機能をA17 Proプロセッサに備えており、例えば撮影する高精細大容量のProRes動画を、直接外付けのストレージに記録するといったことも可能だ。

 もちろん、この速度を生かすには、それに対応したケーブルを用意する必要があるが、対応ケーブルも非対応ケーブルも見た目は同じで区別することができないため、購入時に注意した上で覚えておくしかない。これはUSB Type-Cの規格としてのデザインの悪さの問題でAppleの責任ではない。

 できればAppleには乗ってしまった船なので、是非ともテクノロジー業界のデザインリーダーとして、このUSB Type-Cの混乱を緩和すべくAppleが推奨する安心して使える品質のケーブルなどを認証するプログラムを提供したり、見た目の美しさを犠牲にせず異なる種類のケーブルを見分けられるようにしたりするデザイン言語を開発して貢献をしてほしいと思う。

 なお、iPhone 15 ProとPro Maxには、これ以外にも修理をしやすくするための設計変更などあまり語られていない魅力も数多くある。これだけ大きく進化しているにも関わらず、製品の価格は米国ではこれまでと変わらず999ドルを維持しているのも実はすごいことだろう。しかし、このすごさを現在の日本の円安が台無しにしているが、これもAppleのせいではない。

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2024年05月09日 更新
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