クアルコムがiPhone向けモデムの供給を3年間延長――中国メーカー向けが厳しくなる中、アップルと仲直り?石川温のスマホ業界新聞

» 2023年09月24日 12時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 クアルコムは9月11日(現地時間)、アップル「iPhone」向けモデムチップの供給を3年間、延長すると発表した。これにより、2026年、iPhone 18(仮称)まで、クアルコム製モデムが搭載されることになる。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2023年9月16日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。


 アップルはiPhoneやiPad、Macにおいて、アプリケーションプロセッサの内製化に注力している。いまではインテル製よりも、高性能で省電力のチップとして定評があるが、モデムに関しては開発に苦労している印象がある。

 モデムに関して、様々な人材を確保し、開発を進め、クアルコムとの調達契約を2023年に終了し、2024年からは自社開発に切り替えるとみられていたが、結局は断念した模様だ。

 通信業界内から見れば、アプリケーションプロセッサは内製化できても、モデムに関してはアップルを持ってしても難しいのではないか、というのが前々から予想されていた。

 クアルコムはモバイル通信に関して、豊富な特許を取得している。また、4Gや5Gにしかつながらないモデムチップを作るのは決して難しくは無いのかも知れないが、3Gさらにはヨーロッパやアフリカではまだ現役だと思われる2G(GSM)まで対応するとなると相当、高いハードルにならざるを得ない。

 世界各国のキャリアには複数の異なる周波数帯が割り当てられており、さらにそれらが複雑にキャリアアグリゲーションして、通信を提供している。下手をしたら、億を超える組み合わせの周波数帯に対して、安定して通信を提供するというのは、相当なノウハウが必要であり、これこそがクアルコムが得意とする一方で、新規参入組には手が出しにくい領域となっている。

 アプリケーションプロセッサはアップルさえ頑張れば、いかようにも進化していけるものではあるが、モデムに関しては、端末側だけでなく、基地局ベンダーやキャリアとの調整も必要になってくる。

 メディアテックなども通信モデムを作っており、値段の安さで導入するところも増えているが、なかなかメジャーになりきれず、クアルコムを倒せないというのは、既得権益もある一方で、技術的な信頼、実績が大きいのは間違いなさそうだ。

 アップルとしてはクアルコム依存を脱したいのだろうが、現実的にはかなり難しいのではないか。当面は2026年までとされているが、今後も延長される可能性は十分にあると言えるだろう。

 クアルコムとしても、中国メーカーからの調達が減っていく事が予想されるため、アップルと仲良くしていることをアピールすることで株価の維持につなげたいという狙いがありそうだ。

© DWANGO Co., Ltd.

アクセストップ10

2025年12月26日 更新
  1. 「駅のQRコードが読み取れない」――ネットに落胆の声 なぜ“デジタル時刻表”が裏目に? (2025年12月25日)
  2. mineo料金プラン改定の真相 最安狙わず「データ増量+低速使い放題」で“ちょうどいい”を追求 (2025年12月25日)
  3. 3COINSで1万1000円の「プロジェクター」を試す 自動台形補正、HDMI入力、Android OS搭載で満足度は高め (2025年12月24日)
  4. 若いiPhoneユーザーの間で「クリアケース」に人気が集まっている理由 すべては“推し”のために (2025年12月25日)
  5. 時刻表が“QRコード”だけになった──SNSで「不便」「むしろ不要」と賛否 横浜市営地下鉄は元に戻すのか? (2025年11月21日)
  6. 関東地方で5G通信が速いキャリアは? ドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルでICT総研が比較(2025年12月) (2025年12月24日)
  7. iPhone 17 Proで話題になった「8倍光学品質ズーム」って何? そのメカニズムを解説 (2025年12月25日)
  8. Apple CarPlayもPlayストアも使える車載ディスプレイ「オットキャスト OttoScreen AI」が30%オフの3万5080円に (2025年12月24日)
  9. iPhoneのロック画面で「カメラが起動しちゃった」を防げるようになった! その設定方法は? (2025年12月24日)
  10. 「威嚇するような態度をとられた」──“撮り鉄”の迷惑行為に苦言続々 JR東日本も警鐘 (2025年12月24日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー