誕生25周年の「Bluetooth」はどう進化していく? 距離計測やスピードアップ、5GHz/6GHz帯活用もマーケティング責任者が語る(2/3 ページ)

» 2023年10月16日 17時50分 公開
[井上翔ITmedia]

Bluetooth規格を支える「3つの潮流」

 誕生から四半世紀を経たBluetoohだが、規格やブランドとして長続きしたのは「3つの潮流」があったからだという。

3つの潮流 Bluetoothの成長を支える「3つの潮流」

ワイヤレスオーディオ:Bluetooth LE Audioでさらなる成長を

 「Bluetoothの出発点、原点」(コルドラップCMO)であるワイヤレスオーディオ(Bluetoothオーディオ)は、規格の黎明(れいめい)期からメジャーな用途となっている。

 当初は携帯電話向けのワイヤレスヘッドセットで使われ、自動車のハンズフリー通話でも利用され始め、現在では完全ワイヤレスイヤフォンを含むワイヤレスオーディオデバイスでもBluetoothが広く使われている。

 昨今では、スマホの普及に伴い、Bluetoothオーディオの機能を備える“補聴器”も現れ始めた。Bluetoothオーディオの最新規格であるBluetooth LE Audioでは、このようなBluetooth補聴器の標準サポートを盛り込んでいる。音声の一斉配信機能であるAuracast ブロードキャストオーディオも、音声に関するアクセシビリティー向上の観点から実装されたという。

 ABI Researchによると、Bluetoothオーディオ対応機器は2023年に13億台以上、2027年には17億台以上の出荷が見込まれるという。用途としては最古参ながらも、今後も成長が期待できる分野といえる。

ワイヤレスオーディオ ワイヤレスオーディオは、Bluetoothの原点の1つとなる用途。機能拡充によって、今後もニーズが高まっていくと予想されている

コネクテッドコンシューマーエレクトロニクス:あらゆるものをつなぐ

 「有線の束縛からの解放」を目指して、Bluetooth SIGがワイヤレスオーディオの次に取り組んだのが、コネクテッドコンシューマーエレクトロニクスの分野だ。平たく日本語でいえば「周辺機器や家電でのBluetoothの利活用」といったところである。

 同団体は2009年、低消費電力の通信モードである「Bluetooth Low Energy(BLE)を策定した。この規格は元々、Nokiaが2006年に開発した「Wibree(ワイブリー)」という規格だった。それを、同団体が標準規格として“引き継いだ”結果、Bluetoothの規格の1つとなった。

 BLEが真っ先に使われた用途の1つが、PCや携帯電話/スマートフォン向けのキーボード/マウスである。BLE以前(≒Bluetooth 2.3まで)のBluetooth規格を用いるよりも、消費電力を大きく抑制できるからだ。その後、BLEはスマートバンドやスマートウォッチを含む、スポーツ/フィットネス機器でも使われ始め、最近では医療機器や健康管理機器にも使われるようになった。スマートトラッカーなど、新ジャンルの電化製品にも用いられている。

 ABI Researchによると、Bluetoothを用いるコネクテッドコンシューマーエレクトロニクスデバイスは2023年に16億台以上、2027年には29億台以上の出荷が見込まれるという。Bluetooth規格の成長ドライバーといえそうだ。

コネクテッドコンシューマーエレクトロニクス 約10年前のBLE本格導入から、周辺機器/家電領域におけるBluetoothの普及に注力しているという。対応機器の出荷台数は現在はもちろん、今後も大きく伸びていくと予想されているという

コネクテッド産業:B2Bにも広がるBluetoothの世界

 従来のBluetoothデバイスは、どちらかというと「B2C」、つまり個人/家庭で使うものが多かった。Bluetooth SIGでは、その用途を「B2B」「B2B2C」といった産業向けにも広げる活動も行っている。

 工場における「予知保全システム」、ビルの照明を遠隔制御する「照明制御システム」、工場や倉庫において作業者の動向をトラッキングする「追跡システム」や、リアルタイムに価格を変えられる「電子値札(ESL)システム」にBluetoothが利活用されているという。

コネクテッド産業 B2B/B2B2C用途でもBluetoothを利活用できるようにする取り組みも行っている。これにより、Bluetoothに対応する産業用製品の出荷台数は、2023年に2億台以上、2027年には7億台以上が見込まれるという

 現在、Bluetooth SIGとして注力しているのが上記3分野だが、用途の拡大を支えているのが各種機能強化(プロファイルやプロトコルの追加など)である

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