10月12日、政府のデジタル市場競争会議事務局が、募集していたパブリックコメントを公開した。500を超えるコメントが寄せられるなど、世間の関心の高さが窺える。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2023年10月19日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
一般メディアでは、アップル・AppStoreのサイドローディングを取り上げる傾向が強いが、ここではリストの中で目立っていた「シャープ 通信事業本部」のコメントに注目したい。
シャープはAndroidスマートフォンを手がけるメーカーだ。それだけに、いまのスマートフォン市場に対して不満を感じていることも多いのだろう。
シャープが指摘しているのは、プラットフォーマーとの競争環境だ。例えば、iPhoneとの関係性においては、ユーザーのデータポータビリティがOS間のスイッチングのボトルネックになっていると指摘する。「OSを替えるとデータの移行に手間がかかるからやりたくない」というユーザーが多いようなのだ。
また、モバイル通信を必要としてないデータ共有機能、特にiPhoneのAirDropは、モバイル通信の消費量に敏感なユーザーによる依存度が高く、OS移行を阻害しロックイン効果が絶大だと指摘する(iMessageもしかり)。
ただ、シャープとしてはアップルだけに小言を言っているだけではなく、グーグルに対しても牙をむいている。
「OS提供事業者が同時にスマートフォン端末ベンダーだったりする。OSの一部機能が1stパーティメーカー以外のベンダーでは提供されないのはどうかと思う」と指摘しているのだ。具体的には「消しゴムマジック」の事を指しており、実際は3rdパーティOEM製端末にも提供されたが、相当、期間を経た後、さらに有償サービス契約者のみに提供されたのは、1stパーティメーカーが有利な条件で競争している、としているのだ。
確かに、新製品であるPixel 8シリーズでも「音声消しゴムマジック」や「ベストテイク」などの機能が提供されており、テレビCMで大量に放映されているとなるとAndroidのなかでもPixel 8を購入するきっかけになるのは間違いない。
政府のデジタル市場競争会議も、自分たちの意思を持たず、単に欧州の「サイドローディングの強制」をマルパクリで追いかけるよりも、アップルに対しては「AirDropやiMessegeの開放」、グーグルには「消しゴムマジック」の他メーカーへの提供を促す提案をできないものなのか。
それこそが日本の国民、さらには日本の産業を守るための「デジタル市場競争」のあるべき姿だ。国の会議がサイドローディングを強要して、国民をウィルスの脅威にさらしてどうするのか。
もっと、国民と日本メーカーのためになる政策を検討すべきだろう。
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