そして、2007年発売の「INFOBAR 2」以来、約11年ぶりにケータイとして復活を遂げたのが「INFOBAR xv」だ。INFOBAR 2のようなストレート型の本体にタイル状のテンキーを搭載し、代名詞となったNISHIKIGOIに加え、淡いピンクを基調としたCHERRY BERRY、大正時代に流行した漬物のナスに近いNASUKONの全3色が用意された。
INFOBAR xvはディスプレイ面と背面がわずかに膨らんだ独特の形状が印象的な製品で、砂原氏は「球面を切ったような断面とフォルムにしたかった」との意図を語る。下部には側面には卓上ホルダとの接続や、データ転送に使う外部接続端子(Micro USB)を設け、往年のケータイユーザーにとって朗報となったストラップホールが設けられた。
発売年は2018年で、この頃は既に「スマートフォンが成熟していたため、20周年を記念した新作をどう打ち出すか」を悩んだと砂原氏は打ち明ける。ここでスマートフォンを世に出すとなれば、当然、A01やA03の流れをくんだモデルになるべきだし、他との徹底的な差別化も必要になる。ただ、当時は3Gケータイからスマートフォンの乗り換えを促しつつも、3G停波後も4Gケータイを選択肢として残したいKDDIの意図がくみ取られ、結果的にこのバー形状(スマートフォンではないモデル)が復活した。高さを初代INFOBAR、INFOBAR 2と同じ138mmにそろえ、昔のINFOBARユーザーが乗り換えやすくする工夫もあった。
気になるのが今後のINFOBARの姿だ。20年を迎える節目なのに新モデルはいまだに発表されない。筆者は砂原氏に今後はどうなるのかを聞いたところ、「諦めたわけではないが、出しづらい状況にある」との答えが返ってきた。
「でもファンの方からは『欲しいのはNFT(※来場者に配布されるデジタルコンテンツ)ではなく、本物のINFOBARだよ』という声を長らくいただいており、われわれとしてその声にお応えできていないのは申し訳ないと思う。本当は世に出していきたいけど、au Design projectでこれまでやってきた新しい技術を取り入れるなどのチャレンジを今やるべきではないと考えている」(砂原氏)
「やるならiPhone並みの機能性やクオリティーにエモーショナルな面をプラスしていかないと、やる価値がないと思う。今それをやろうとすると、1台あたりの価格はiPhoneより高くなってしまうし、ビジネスとして成立しない。新しいモデルへのチャレンジを辞めたわけではないが、今やるべきではないと判断している」(砂原氏)
「iPhoneで基本的に事足りる。GoogleのPixelも(中身は)すごいけれども、本体の形は他とほぼ同じだから、われわれとしては心が豊かになるような製品を世に送り出したい」(砂原氏)
その具体的なプロトタイプに砂原氏は下記2つを挙げる。
初代INFOBAR型Apple Watch ケースは20周年を記念し、初代INFOBAR(NISHIKIGOI)を模したケースで保護できるのが特徴。Ubicotは漫画やアニメの主人公のパートナーになるようなキャラクター性を持ち、あらゆる空間でユーザーと対話できる生成AIマスコットだ。これら2つは11月23日〜2023年12月10日に「21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3」で開催される「Digital Happiness / いとおしいデジタルの時代。展」に出展される予定だ。
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