ただ、現行の端末購入補助に関するガイドラインでは、2万2000円以上の割引が禁止されている。これを超えてしまった場合は、行政指導の対象になるなど、運用も厳格だ。過去にはうっかりミスや見解の相違といったレベルですら、キャリアに行政指導が行われたこともあった。一見すると、Xiaomi 13T Proが発売日初日から実質24円になるのは、規制破りにも思えるだろう。では、なぜソフトバンクの販売方法は“セーフ”なのか。
端末購入補助で規制されているのは、回線契約にひも付く場合の割引だ。Xiaomi 13T Proの例でいえば、MNPや22歳以下のユーザーが新規契約し、ペイトク無制限などの料金プランに入った際に適用される2万1984円の割引がこれに該当する。一方で、新トクするサポートに関しては、端末購入補助とは見なされていない。端末を下取りして、その対価として支払額を相殺しているにすぎないからだ。割引ではなく、下取りの代金をユーザーに支払っているという理屈で、割引とは性格が異なるというわけだ。
ただし、ガイドラインでは、一般的な下取り額を超える際には、割引と見なされることも付記されている。ガイドライン制定時に、下取り額を盛ることで実質的な割引になる“抜け穴”が警戒され、このような規定になった経緯がある。Xiaomi 13T Proは現時点で未発売のため、下取り額を算定することはできないものの、1年前に発売されたXiaomi 12T Proですら、未使用品で5万円程度の買い取り額がついている。そのため、9万円を超える残債を免除するのは、割引と見なされる可能性が高い。
一方で、それだけで端末購入補助が上限を超えたとはならないのが、このガイドラインの複雑なところ。新トクするサポートが、ソフトバンク以外のユーザーにも提供されているためだ。これによって、回線がひも付くという条件がなくなる。誰でも購入できるということは、すなわち端末単体の割引と同じ。回線ひも付きの割引を規制したガイドラインの範囲から外れる。他キャリアのユーザーにも平等に提供している限り、いくらで端末を下取りしようが、ソフトバンクの自由な経済活動の範囲になるというロジックだ。
一時話題になった端末単体の割引とは違い、割賦を組むことが前提になっているため、この仕組みは、いわゆる“転売ヤー”対策としても有効に機能する。24回支払った後、ソフトバンクに下取りに出さなければ残債が残ってしまうからだ。いくらXiaomi 13T Proが実質24円とはいえ、すぐに転売した場合には端末本体の価格である11万4480円が丸々請求される。実際に2年間使う意思がなければ、購入するメリットはない。ユーザーに割引を提供しつつも転売は防げる、よくできた仕組みだ。他キャリアのユーザーも利用できるため、囲い込みにもつながりづらい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.