これは以前の記事でも指摘したが、回線契約時に追加費用の少ないサブ回線を追加で契約し、サブ回線の特典も合算して端末の値引きに加えるものだ。
例えばドコモなら、通常の料金プランに副回線の「データプラス」を追加契約することで、端末1台の場合は最大で6万6000円の利益供与が可能になる。これは端末の値引きは「回線ごと」に決められていること。SIM単体の契約は上限が2万2000円となるため、電気通信事業法としては問題とならない。
キャリア側としても、月額1000円ほどで利用できる副回線をタブレット端末で利用する、以前使っていた端末を「サブスマホ」として利用するといった案内も可能だ。このあたりは今後格安で利用できる「サブ回線」のようなものを各社展開してくるかどうかが鍵となりそうだ。
iPhoneが日本でも発売されてから15年が経過するなど、今や多くの方が利用するスマートフォン。買い替えにあたっては、キャリアの下取りサービスを利用するニーズも少なくない。この下取り金額を回線契約時のみ大きくアップさせることで、実質的な端末値引きとすることも考えられる。
端末の値引き規制はキャリア提供の端末に対するもので、利用者が持ち込む中古端末の下取りや買い取りの金額には関係がない。キャリアとしても下取り端末の回収によって、中古市場を活性化する役割を果たすことができる。
また、他キャリアで分割利用中の端末を「乗り換え」を条件に下取り額を高価に設定したり、特定の端末の購入を条件に通常より下取り金額を上げたりして、実質的な値引きとすることも法的には可能だ。
大手4キャリアでは回線の支払いに指定することで優位になるクレジットカードや銀行口座を提供している。これらには既に携帯電話の支払いでポイントが多く還元されるなどの利用特典が備わっている。これらの契約時特典はもちろん、継続的な回線、端末料金の支払いによって端末料金を値引きする形だ。
実際、これが最も現実的な抜け穴と考えられる。携帯電話の回線契約時に認められる端末値引きとクレジットカードの契約、利用特典。銀行口座開設による特典はそれぞれ別々のものとなる。
例えば9万円の機種を購入するにあたって、回線契約で4万円の値引きができる。これに提携クレジットカードの契約特典で3万円、指定銀行口座開設特典で2万円の計9万円の値引きを行う場合、端末が0円になろうとも電気通信事業法としては違法とはならない。
また、該当するクレジットカードや銀行口座から回線料金を支払う場合に、一定期間端末料金の一部を「値引き」という形で利用者に還元することも問題ないはずだ。端末料金の還元が1〜2年に渡って行われるのであれば、「ホッピング」などの回線利用を目的としない短期契約も防げる可能性が高い。
ここまで法令改正に伴い、今後考えられる値引きやそれに準ずるものを列挙した。結局のところ、行政とキャリアの攻防はあいも変わらず「イタチごっこ」となる可能性が高い。
特にメーカー値引きや物品、外部サービスの提供は「値引きの出所」を変えてしまえば、法改正後の規制もすり抜けると考えられる。キャリアが裏で手を回すことも考えられるため、この部分があまりにも横行すると、再度規制強化の対象となる可能性がある。
サブ回線への誘導も行き過ぎれば、レ点ビジネスとして指摘される「半強制のオプション」となり果てる可能性がある。かつての割引に必要な有料コンテンツ同様に、この「サブ回線」が新たなトラブルの火種になりかねない。
下取り額のアップも状況次第では十分に考えられる。キャリアとしても下取りした端末を適切な市場で販売することで、中古市場の活性化という役割を果たせる。ただ、中古買い取り価格から懸け離れた過度な下取り金額を提示して市場に影響を与える場合は、上限などが設定される可能性がある。
提携クレジットカード特典や口座開設による端末の割引は、韓国などでも行われている。日本では回線値引きとは別口の値引きとなることで規制をすり抜けることに加え、ある程度値引き額が大きくても契約する要件が増えることで、過度な転売を防ぐ観点からは有効だと考える。
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