「Apple Music Classical」提供開始 Appleが考えるクラシック音楽配信の在り方(2/2 ページ)

» 2024年01月25日 06時00分 公開
[山崎潤一郎,ITmedia]
前のページへ 1|2       

独立系レーベルの楽曲の取り扱いスタンスは?

 イベント終盤では佐渡さんと村治さんに対する質疑応答の時間が設けられた。筆者としては、Apple Music Classicalの運営方針や実務レベルについての質問がしたかったのだが、アンバサダーのお二方に聞くことがためらわれる内容だけに、肩を落としていたら、デモ体験の場で、ジョナサン・グルーバー氏が囲み取材に応じてくれた。

 まず聞きたかったのは、独立系レーベルの楽曲の取り扱いだ。メジャーレーベルの作品については、Appleは直接レーベル側と相対でビジネスを行っている。その一方で、筆者が運営するレーベルも含め、独立系レーベルの多くはアグリゲーターを介してビジネスを行っている。

 アグリゲーターを介した場合、アルバム名や曲名といった基本情報以外のより詳細な情報、例えば、アーティストのプロフィールや楽曲の背景など、詳しい情報などの提供が難しいという課題を抱えていた。メジャーレーベルとの間に発信情報の格差が発生しているのだ。独立系レーベルの中には、愛好家が歓喜する掘り出しモノ的な作品をリリースするところも多い。

 その点についてグルーバー氏は、「ビジネスは従来通りアグリゲーターを介して行ってもらうことになるが、音楽についての情報の共有は独立系レーベルであっても直接話をしている」と明かしてくれた。

 ちなみに、筆者のレーベルで提供しているアルバムもApple Music Classicalに早速登録されていた。ただ、前述のように、アグリゲーターにメタデータとして提供しているアーティスト名や楽曲名など、必要最低限の情報に限定されていた。

Apple Music Classical 筆者が録音・制作したアルバムも早速配信されていた

広大なクラシック楽曲の大海原に漕ぎ出そう

 もう1点気になることがあった。買収される前のPrimephonicは、キュレーターが顔を出して、名前や顔が見える形でレコメンドやプレイリストの公開を行っていた。ユーザーからすると「この人が推薦するなら」という安心感につながっていた部分もある。

 これは筆者の想像だが、各キュレーターには、特定のファンが付いていたのではないだろうか。Apple Music Classicalにおいても、同様の仕組みは提供されるのだろうか。

Apple Music Classical Primephonicでは、キュレーターが名前と顔を出して解説やプレイリストを公開していた

 「興味深い質問だ。これまでApple Musicでは、キュレーターは自分の名前を伏せて情報を提供していた。クラシック音楽には多様性が求められる。アーティストやサントリーホールなどの施設でない限り、誰か特定の人物が名前を出してキュレーションをすることは重要なこととは思えない」(グルーバー氏)

 すごく遠回しな回答だが、Apple Music Classicalも従来のApple Musicを踏襲し、特定のキュレーターの名前や顔が前面に出ることはないということらしい。

 そして、最後に「クラシカル・クロスオーバー」のようなポピュラーとクラシックを融合したジャンルの扱いはどうなるのか聞いた。著名なところでは、サラ・ブライトマンとアンドレア・ボチェッリの「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」などがある。

 グルーバー氏は「当然、Apple Music Classicalでも提供する」と言い切った。クラシカル・クロスオーバーには珠玉の作品も多いだけに、リスナーの耳に触れる機会が多くなることは大歓迎だ。

 多くのクラシック音楽愛好家の期待を背負い船出したApple Music Classicalだが、ある程度時間をかけて使い込んでいかなければ、アプリが提供する本質的な優位性を見いだすことができないと感じた。筆者も早速ダウンロードして、広大なクラシック楽曲の大海原に漕ぎ出してみたいと思う。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月25日 更新
  1. 「iPhone Duo」はLINEもポケモンGOも“黒い”余白だらけ? 日本の定番アプリは未対応が多く (2026年10月23日)
  2. 「Androidのマイナンバーカード」がスタートするもフル機能対応機種が少ない件 ポイントは「StrongBox」という仕組み (2026年10月24日)
  3. きょう発売の「iPhone Duo」、Apple 表参道でゲットしてきた 早速開封レポート (2026年10月23日)
  4. iPhone Duoを使って痛感した「Face ID」のありがたさ 充電スタンドに置いたまま通知が見られない不便さに苦しむ (2026年10月24日)
  5. ダイソーで1100円の「USB Type-C to HDMIケーブル」でスマホの画面をテレビに映すとどうなる? 対応機種なら試してみる価値あり (2026年10月24日)
  6. 進化した「Siri AI」で感じた、iPhoneの操作を一変させる実力 「AI出遅れ」の汚名返上なるか (2026年10月24日)
  7. モバイルSuicaの新決済「teppay」を早速試した 店員への伝え方や決済音は? スムーズに決済できる? (2026年10月22日)
  8. 「iPhone Duo」を試して分かった9つの疑問と本音 36万円超の折りたたみスマホは「買い」か? (2026年10月21日)
  9. ダイソーで330円の「人感・明暗センサーLEDバーライト(Type-C)」が意外と便利 1人暮らしの帰宅時や非常灯に便利  (2026年07月18日)
  10. デジタル庁が「Androidのマイナンバーカード」対応機種を公表 属性証明機能を使える機種は限定的 (2026年10月19日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー