スループットだけでなく、体感品質向上に向けた取り組みも強化する。2023年10月には、SNSや機械学習を活用して、今後混雑が予想されるエリアを抽出することを発表していた。これに加え、ユーザーが利用するドコモのアプリも活用する。
2024年1月からは「d払い」アプリの利用データを既に活用している。具体的には、d払いアプリでバーコードが表示されるまでの時間を場所ごとに可視化する。バーコードが表示されるまでの時間データは、数年前から保持しているそうだが、これをネットワーク品質と連動させることで、通信品質の改善に役立てていく。
「d払いの支払いをするときに通信をするが、どの基地局で通信をしたかのログが取れるので、基地局ごとにd払いの表示が速かったか、遅かったかが分かる。それを地図上でプロットしている」(小林氏)
特に都心部では基地局が密集しているので、通信品質が悪化しているエリアがピンポイントで分かる。今後は、ドコモが提供している動画アプリや、Webブラウザでの利用状況も見ていくという。
d払いアプリについては、GPS情報は使用しておらず、ユーザーの個人情報には触れていない。動画についてはバッファリングの状況を見ること、Webブラウザについてはどれだけ多くのサイトを開いたのかを見ることを想定しているため、事前にユーザーから同意を得ることが前提となる。
【訂正:2024年2月3日9時55分 初出時、GPS情報の使用について誤った記述がありました。おわびして訂正いたします。】
ちなみに、d払いアプリはドコモ以外のユーザーも利用できるので、他キャリアの品質もチェックできる。ただ他キャリアについては「ネットワークのトラフィックデータがないので、(バーコードを表示するまでの)長さは分かるが、分析までには至っていない」と小林氏。それでも、ドコモの品質と比べることはできるので、しっかり検討していきたいとした。
動画やブラウザ以外にドコモが提供しているアプリの横展開についても視野に入れている。「お客さまが利用する代表的なところが決済、動画、Web。全部とはいえないが、大半のお客さまの生活での利用体感を確認できると思う。(それ以外に)こういう点も見なければ、ということがあれば、他にも展開はしていきたいと思う」(小林氏)
ドコモの通信品質低下問題は、ドコモ回線を利用するMVNOサービスにも影響を及ぼした。小林氏によると、MVNOにも情報は共有しており、今回のような説明会を行うことも伝えているという。「MVNOの皆さんの品質も改善されるので、情報共有をしていきたい。いろいろな契約があるので、一概に全部がそう(ドコモの影響)とはいえないが、エリア品質による影響は、恐らく大部分を占めると思う」(小林氏)
2023年以降に目立ったドコモの通信品質低下の要因は、コロナ禍が明けた後の人流の変化をうまく予測できず、増大したトラフィックに対応できなかったこと。2024年の対策について小林氏は「コロナのような大きなトラフィックの変化はないと思うが、変化があっても対応できるような厚みのあるネットワークをあらかじめ構築していく」と述べた。
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