グラス型XRデバイス出展の狙いは? NTTコノキュー丸山社長に聞く、XRの現在と未来

» 2024年03月04日 12時04分 公開
[村元正剛ITmedia]

 MWC Barcelona 2024のNTTドコモのブースには、XR事業を手掛ける子会社のNTTコノキューが開発したARデバイスのプロトタイプが展示されている。発売は2024年半ばになるという。デバイス開発の意図やコノキューの今後の展開について、同社の代表取締役社長の丸山誠治氏に話を聞いた。

丸山誠治 株式会社NTTコノキュー 代表取締役社長の丸山誠治氏

自社で作ることで、ビジネスリスクもコノキュー側が負う

―― NTTコノキューとしては2回目のMWCで、今回は初めてデバイスを出展しました。その特徴についてお聞かせください。

丸山氏 XRのグラス型デバイスで、一般的に「ARグラス」と呼ばれるもの。非常に小さくて軽く、無線でつながる仕様になっています。チップはQualcommの「Snapdragon AR2」を使っていまして、スマホと無線(BluetoothとWi-Fiの組み合わせ)で接続する設計になっています。6DoFなどのセンサーを搭載し、カメラ、マイク、スピーカーも搭載する、かなり高性能なデバイスです。幅広い用途に使っていただけるのではないと期待しております。

NTTコノキュー
NTTコノキュー
NTTコノキュー NTTドコモブースに展示されているARグラスの試作機。普通のメガネにも見えるサイズ感が特徴だ

―― 幅広い用途の中で、特にこういうコンテンツや使い方に適していると想定されていることはありますか?

丸山氏 われわれが一方的に想定しても、マーケットが立ち上がらないと、何とも言えないのですが、まずは産業用が大きな柱になると思います。例えば、遠隔支援サービス。現場にいる方がこのデバイスを装着して、プロフェッショナルの方が遠隔で指示を出す。そういった使い方には非常に適していると思っています。

―― デバイスの製造は、シャープと一緒に立ち上げたコノキューデバイスで行われています。わざわざ新会社を作ったことには、どのような狙いがあるのでしょうか?

丸山氏 われわれがメーカーさんに「作ってください」と言っても、メーカーさんが納得しないと作っていただけないですよね。自社で作ることで、ビジネスリスクもわれわれが負うという認識です。また、今回われわれが開発したような高性能なXRデバイスは、あまりないんですよ。世の中にいろいろな製品があって、より取り見取りの状況だったらいいのですが、実際にはそうではありません。もちろん、コノキューのサービスは、いろいろなデバイスに対応していて、かつてはGoogle Glassも扱っていました。ですが、ある日突然終わってしまったわけで、そういったリスクもなくしたいと考えています。

コノキューの事業は想定通り 意図が明確な依頼が増えている

―― NTTコノキューの設立(2022年10月)から1年半がたちました。これまでの手応えはどのように感じていますか?

丸山氏 これまでを振り返ると、事業としては、だいたいわれわれが見込んでいた通りに順調に進んでいます。想定外だったのは、会社を設立したときは、メタバースがもてはやされていましたが、今はやや落ち着いていますよね。バズワードとして存在する市場が急速に落ち込んで、本当に役に立つ実需が残った状況。例えば「メタバースが話題だから、取りあえず何か作ってみよう」といった大企業さんからの発注は少なくなりました。しかし、大田区教育委員会さんが英語教育の一環としてメタバースを利用するといった事例は着実に増えています。意図が明確で、何かの役に立つ。そういった依頼が増えています。

丸山誠治 設立から2年目を迎え、「事業は順調に進んでいる」と話す丸山氏

―― コノキューは法人向けとコンシューマー向けの両方を手掛けていますが、現状は法人向けが主体なのでしょうか?

丸山氏 われわれが今持っている技術とサービスのほとんどは法人向けで、着実に伸びています。コンシューマー向けは、まだビジネスとしては成長していない状況で、それは他社さんも同じで、成功している事業者さんはいらっしゃらないのではないかと思います。ただし、VTuber向けのものは需要があります。

NTTが研究開発を行い、コノキューがビジネスにつなげる

―― メタバース・XRの事業はNTTグループ全体で取り組んでいる印象があります。各社の事業のすみ分けはどのようになっているのでしょうか?

丸山氏 コノキューはNTTドコモが100%出資する子会社で、ドコモはNTTの100%子会社です。足の長い開発はNTTの研究所が行い、その途中からドコモのR&Dが関わり、われわれはその実用化というか、ビジネスにつなげる。それぞれフェーズが違って、連携しています。それぞれの会社で別々の人がやっているわけですが、ストーリーとしてはつながっています。われわれが10年後に実現したいなぁと思うことを、NTTの研究所にお願いするといったことはあります。

―― 一般の人がコノキューのデバイスやコンテンツを体験できる場はありますか?

丸山氏 2023年3月から東京・秋葉原に「XR BASE」という、われわれのショールームといえる場所を設けて、誰でも無料で体験していただけます。新しく開発したデバイスがリリースされたら、それも体験できるようにします。

―― 今回のMWCでデバイスを出展した狙いは? デバイスの海外展開も視野に入れているのでしょうか?

丸山氏 今回の出展は、決して商品の発表ではありません。まずはデベロッパーさんに、こういう製品があるということを知っていただいて、われわれとの個別の交渉で、ソフトウェアを開発していただくきっかけになればと。XRのソフトウェアを開発する会社は世界中にたくさんあるので、多くのデベロッパーに紹介できる意義は非常に大きいと考えています。

デベロッパーと交流することで、デバイスの可能性が広がる

―― コノキューでこれから特に力を入れていきたい分野はありますか?

丸山氏 いくつかありますが、現在やっている法人向けの事業は着実に伸ばしていきたいです。次にデバイスですね。開発しているARグラスはいろいろな用途に使えるので、企業の方にも活用していただけます。サービスを拡充するきっかけにもなると考えています。また、デベロッパーの方々との交流の輪を広がることで、新しい用途に気づいたり、可能性が広がったりしていくことにも期待しています。3つ目はメタバース。今は沈静化をしていますが、次の波は必ずやってきます。それまでに必要な技術を開発し、投入できるサービスを検討していかなければなりません。

―― 通信会社がXR事業を手掛ける強みはどこにあるのでしょうか?

丸山氏 今のXRが未熟なのは、やはり通信のスピードが足りないとか、端末の性能が追い付かないといったことが根本的な要因になっています。やはり3次元のデータを扱うとものすごいデータ量になるので、通信速度もマシンの性能もさらに上げていかなければなりません。そうならないと本当のXRの時代は来ませんし、われわれはそれを目指して、いろいろなものの開発を進めています。データの処理はクラウドでも端末側でもでき、それをうまく組み合わせてやることが重要。全体が分かった上で取り組めることに、通信キャリアが行う強みがあると思います。



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