Apple Payの登場前後で日本の決済シーンが大きく変化した。特に非接触決済に着目した場合、それまで利用の少なかったQUICPayがApple Pay登場後はトランザクションが急増し、JCB内におけるQUICPayの位置付けが大きく変わり、JCBが同ブランドでの“タッチ”決済を開始するにあたってさまざまな苦慮があったという話も聞いている。
いずれにせよ、Apple Payの登場が2010年代後半以降のiDやQUICPayの利用を底支えしていたことは間違いない。Appleのルール緩和により、今後新規発行カードを中心にApple Payを通じて両サービスに対応しないものが増えることで、徐々に非接触決済がFeliCaからEMVCoによる国際ブランドの“タッチ”決済へとその比重がシフトしていくことになるだろう。
すぐに両サービスがなくなるわけではないものの、少し時間をかけて終息へと向かうことになると思われる。現在のところ、Apple Payには冒頭に挙げた楽天Edyを除く残りの全てのFeliCa系決済サービスが対応しているが、恐らく今後10年先を見据えたとき、Apple Pay上で変わらず使われているのは交通系ICに限定されるのではと筆者は考えている。「交通系ICのみ10年以上」としているのは、改札機の入れ替えサイクルを考えたとき、10年以内に既存のSuicaをはじめとする交通系ICカードを全て置き換えるのは困難だからだ。
クレジットカードの即時発行サービスなど、Apple Payによって大きく変化した日本の決済シーンは、いま再びAppleの方針転換で大きく変化しようとしている。少なくともその結果として、FeliCa系決済サービスの地位が今後下がっていく可能性は高く、既にイシュアやブランドの中にはその時代を見越して、国際ブランドの“タッチ”決済へと予算を集中投下し始めているところもあるという話も聞く。興味ある方は、そのような形で出てくる“サイン”を見逃さず、ぜひその先の変化に注目していてほしい。
iPhoneやApple Watchで「タッチ決済」を使う方法 どういうメリットがある?
徹底解説 「タッチ決済」をAndroidスマホやWear OSスマートウォッチで使う方法
「QUICPayモバイル」が2024年3月末で終了 Apple Pay/Google Pay経由なら継続利用が可能
交通系ICカードとモバイルの“悩ましい関係”
世界の決済事情から考える「日本でモバイル決済が普及しない理由」Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.