ジョルダンに聞く「乗換案内」30年の歩み 「iPhoneが新しい地平を開いてくれた」(2/4 ページ)

» 2024年03月19日 06時00分 公開
[石井徹ITmedia]

iPhoneがフィーチャーフォン時代の成約を解放してくれた

――  iPhoneの登場ですね。

安田氏  そうです。iPhoneの滑らかに動くUIには衝撃を受けました。それまでのモバイルOSは処理が重かったり、タッチ操作が不自由だったりしたので、iPhoneのような使い勝手は革新的でした。

 そこで、iPhone向けに最適化した乗換案内アプリの開発に着手。2008年のiPhone 3G発売に合わせてリリースしました。実はその前にも、「W-ZERO3」向けのWindows Mobile版など、スマートフォン向けのアプリを作っていたんですが、iPhoneほどのインパクトはありませんでした。

 iPhoneでは、公式サイトを介さずダイレクトにサービス提供ができるようになったので、「ジョルダンライブ!」を思い切り前面に出せるようになりました。フィーチャーフォン時代は、リアルタイム性の高い情報をユーザー同士で共有するようなサービスは、公式サイトの規約上難しかったんです。その制約からも解放された。そういう意味でも、iPhoneはジョルダンに新しい地平を開いてくれました。

乗換案内アプリ乗換案内アプリ 2024年現在の「乗換案内」アプリ

―― ビジネスモデルの変化という点ではいかがでしょう。

安田氏 それはもう、ピカーッと変わりましたね。

 iPhoneではキャリアを介さずダイレクトにユーザーにリーチできるようになった。課金についてもキャリア主導では立ち行かなくなり、自前での広告モデルへの移行を迫られました。

 しかもスマホの登場で、利用者の検索行動も大きく変わった。スマホはUIが洗練されていて、直感的な操作で素早く検索できる。そのサクサク感が利用者の心理的ハードルを下げたんです。

ジョルダンの安田正治氏 ジョルダンの安田正治氏

長岡氏 フィーチャーフォン時代は通信速度やパケット代の制約から、1回の検索でなるべく必要な情報を得ようと気を遣っていた。でもスマホなら、手軽に何度も検索を繰り返せる。1回にかかるユーザーの負担が格段に減ったことで、検索回数がグンと伸びたんですよね。

 これはビジネス的にはもろ刃の剣でして、手軽に検索できるようになった分、1回でズバッと求める情報を出せるような有料サービスのニーズは減ってしまった。利便性の向上が、皮肉にも課金モデルを難しくさせる側面もあったんです。

―― スマホの使い勝手のよさが、ビジネスモデルに影響を与えたのですね。

安田氏 アプリの時代になって、手ごわいライバルも登場しました。ヤフーの「Yahoo!乗換案内」は全ての機能を無料で提供していて、勢いよくサービスを拡充してきました。

―― スマホにプリインストールされた地図アプリも存在感を高めてきていますね。

長岡氏 はい。特にGoogleマップはこの時期に目的地検索で公共交通機関のルートを表示できるようになり、無視できない存在となってきました。

乗換案内アプリ 地図に工夫あり。目印になるコンビニやチェーン店のアイコンを大きく表示されている。

 ただ、私たちは日本の公共交通機関に特化したサービスとしての差別化を図っています。Google マップのようなグローバル企業と単純に機能を競うのではなく、日本の交通事情に精通した国産サービスならではのきめ細かさを武器にしているんです。

 例えば、駅構内の通路や出口、バス停の位置まで詳細にデータ化し、より最適な乗り換えルートを案内できるよう努めています。現地調査を欠かさず、利用実態に即したアドバイスができる。これは、海外勢にはまねできない強みだと自負しています。

―― 確かに、例えば駅周辺の地図を見てみると、細やかな配慮が行き届いているのを感じます。

安田氏 加えて、Googleマップにはない情報、例えば、定期券代の検索機能も搭載しています。ユニークなところではJRの普通列車だけを検索対象とする「青春18きっぷ検索」も提供しています。

―― 現地調査では、どのような点を重視しているのでしょうか。

長岡氏 ジョルダンは特に、交通結節点の案内を重視しています。つまり、駅と駅の乗換や、バス乗り場がどこにあるのかといった情報をしっかり案内できるように作り込んでいます。「デジタルの時代に最後は手仕事か」と言われてしまいそうですが、やはり自分の足で検証した情報の正確性こそが、ユーザーの信頼を得るために、欠かせない要素です。

 現地調査でまず調べるのは、「乗換にかかる所要時間」です。これは現地に行って足で検証しないと、基本は分からないです。ダイヤ改正時だけでなく、駅のホームが移設したり、新しい商業施設ができて導線が変わったりしても、乗換時間は変わります。どの駅で工事を実施しているかの情報を収集して、それに合わせて乗換時間を測りに行くようにしています。

 乗換時間の検証はアナログな作業で、ストップウォッチを片手に実際に歩いて時間を計測します。規制が厳しい駅構内では、機材を使った計測はしづらいため、この方法が最も適しているのです。

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