「iモード」の登場でモバイルコンテンツの市場が生まれてから20年以上の歳月が経過した。本誌創刊から現在に至るまでの約20年間で、携帯電話やスマートフォンがどのようなコンテンツや文化を生み出し、社会に影響を与えてきたのかを振り返ってみたい。
現在のITmedia Mobileの前身に当たるZDnet Mobileが創刊してから20年。当時筆者はゲーム会社でプログラマーをしていたのだが、直後に携帯電話向けのコンテンツプロバイダーに転職。それから数年にわたってモバイルコンテンツの現場で仕事をしていたこともあり、ライターに転身して以降もモバイルコンテンツ関連の取材には力を入れてきた。そこで改めて、この20年にわたってモバイルがどのようなコンテンツや文化を生み出してきたかを振り返ってみたいと思う。
今から20年前の2001年といえば、携帯電話からインターネットサービスが利用できる「iモード」が誕生してから2年後という時期で、モバイル向けのコンテンツが急速に進化していた頃でもある。携帯電話のディスプレイがカラー化、そして大画面化したことでコンテンツの表現力が大幅に増したのに加え、同年には「iアプリ」がサービスを開始し、携帯電話でゲームなどのアプリが楽しめるなど、ハードとネットワーク、コンテンツの進化が明確にリンクして発展していたのがこの時代の特徴といえる。
それを象徴していたのが、2002〜2003年頃から始まった「3G」を活用したサービスである。1つはKDDI(au)が、レーベルモバイル(現・レコチョク)と協力して投入した「着うた」。30秒という制限があったとはいえ、着メロが主流の時代に生の楽曲を携帯電話でダウンロードして聴けることのインパクトは非常に大きく、2004年にはフルの楽曲を配信する「着うたフル」へと発展し、国内音楽配信サービスの要となって2010年頃までは音楽産業にとって必要不可欠な存在にもなっていたのである。
そしてもう1つは、2004年にNTTドコモがサービスを開始した「デコメール」である。画像をふんだんに活用してメールを飾り立て、従来の絵文字の枠を超えた表現ができるデコメールはグリーティングメールの定番となり、幅広い層に利用されるようになった。2006年にはその仕組みを活用して、画像を絵文字として扱える「デコメ絵文字」も登場。メールの表現力向上に大きく貢献したのである。
着うたもデコメールも、当時としては大容量の画像や音声を、3Gの大容量通信を生かして配信することで、新しい楽しみ方ができることをアピールするために提供されたもの。これらが3Gの普及をけん引するキラーコンテンツの1つとなり、日本での3Gサービスの普及を促していたわけだ。
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