ITmedia Mobile 20周年特集
連載
» 2021年04月21日 14時01分 公開

「格安スマホ」という言葉もなかった黎明期、MVNOはどんな発展を遂げたのかITmedia Mobile 20周年特別企画(1/3 ページ)

2001年に誕生したMVNOは、日本通信が最初にサービスを提供した。2000年代後半には、外出先で手軽にインターネットを利用できる手段として、モバイルWi-Fiルーターが支持を集め、MVNOと提携して販売を伸ばした。その後、MVNO市場の主役はスマートフォンに取って代わり、高速通信と低速通信を切り替える技術や、容量別プランが主流になる。

[佐々木太志,ITmedia]

 ITmedia Mobile 20周年、誠におめでとうございます。

 モバイル業界に身を置く一員として、筆者も業界の「中の人」としてITmedia Mobileにはたびたび寄稿してまいりましたし、時には取材を受け、記事にしていただいたこともありました。その度に、多くの読者の皆さまに記事を読んでいただき、SNSやリアルの場で温かい(そして時には厳しい)フィードバックをいただいたことには本当に感謝をしておりますと同時に、ITmedia Mobileの持つ影響力の大きさにも改めて驚嘆しました。

 ここを1つの通過点として、さらに発展を続けていかれることを、心より祈念いたします。

2001年に産声を上げたMVNO、本格スタートは2007年

 さて、ITmedia Mobileがスタートした2001年、筆者は、現在勤めているインターネットイニシアティブ(IIJ)に転職した直後で、駆け出しのネットワークエンジニアとして日々修行を積んでいた頃になります。既にインターネットの利用はそれなりに普及していましたが、その通信手段はというとアナログモデムやISDNによるダイヤルアップが中心で、ブロードバンド回線はようやくADSLがローンチしたばかり、光回線の普及はまだまだこれから、という状況であったように記憶しています。

 携帯電話はというと、世の中はまだ第2世代のPDCや(3Gである「FOMA」の開始が2001年8月)、この1月にサービス終了を迎えたPHSによる音声通話がメインであり、既に64kbpsのデータ通信が可能であったPHSはともかく、携帯電話ではデータ通信は9600bps程度の通信速度のパケット通信により、iモードやEZwebといったメールなどのコンテンツサービスを何とか利用可能だった時代でした。

 そんな中、産声を上げたのが「MVNO」です。日本での最初のMVNOは、現在もサービスを提供している日本通信であり、2001年にDDIポケット(その後ウィルコムに社名を変更し、紆余(うよ)曲折を経て現在はソフトバンクに吸収)のPHS網を借りて事業が開始されました。しかし、当時はMVNOという言葉は広く知られていたとは言いがたく、筆者も、まさか自分が将来MVNOの事業に携わることになるとは、この頃には想像もできなかったというのが正直なところです。

日本通信 2001年にDDIポケットのPHSを使い、日本初のMVNOサービスを開始した日本通信

 世界に目を向けると、MVNOは日本と同じく、この時代にスタートしています。世界で最初のMVNOとして知られているのは、英国のVirgin Mobileであり(※諸説あります)、1999年にMNOであるO2のネットワークを借りてスタートしたといわれています。このVirgin Mobileに端を発し、特に多くの先進諸国が陸上国境を接しており、かつ第2世代携帯電話のデファクトとなったGSMをいち早く推進した欧州で、基地局設備にバインドしないサービスをMVNOが展開しやすい素地が整い、MVNOという事業モデルが先行して発展を遂げていくことになります。

 その欧州に対し、スタートはそれほど出遅れなかったにしろ、普及面では残念ながら後塵を拝した日本におけるMVNOの発展が、本格化したのは2007年のことです。この年の9月に総務省が取りまとめた「モバイルビジネス研究会」報告書では、当時既に成熟期を迎えつつあった携帯電話市場のサービス競争を再び加速していくことを目的に、MVNOの市場導入やその発展に向けたさまざまな課題が指摘されました。

 この研究会の報告書と、それを受けて総務省が取りまとめた「モバイルビジネス活性化プラン」により、現在のMVNO振興政策のベースが確立したと言っても過言ではありません。筆者の勤めるIIJでも、この年の夏にMVNO事業の検討に向けた10人にも満たない小チームが結成されました。このとき、筆者もそのチームの一員となり、本来の担当分野であるネットワークの構築のみならず、顧客管理システムや物流管理システムの開発に従事して忙しい日々を送った記憶があります。

MVNO 「モバイルビジネス活性化プラン」の資料より。MVNOの新規参入促進が目的の1つに掲げられた

 社内でのごたごたはここには書ききれないほどありましたが、翌2008年1月に、NTTドコモのネットワークを利用する初のMVNOとして、無事に法人向け「IIJモバイル」の開始にこぎ着けることができました。

モバイルWi-Fiルーターが支持を集める

 さて、IIJはもともと得意であった法人向けビジネスにおいてMVNO事業を先行させましたが、この頃のMVNOはどのようなビジネスモデルを展開していたのでしょうか? この頃、最もよく見られたMVNOのサービスは、モバイルWi-Fiルーターの提供です。スマートフォンやタブレットが登場する前夜に当たる2000年代後半に、多くの利用者が外出時に使用していた端末はノートPCですが、公衆Wi-Fiは今ほど充実しておらず、外出先でどのようにノートPCをネットにつなげるか、それが大きな課題でした。

Pocket WiFi イー・モバイルから発売された、モバイルWi-Fiルーターの代表格「Pocket WiFi」

 この頃、利用者に大きく支持されたモバイル回線はイー・モバイル(後にソフトバンクに吸収)、そしてUQ WiMAXです。この2社が提供するモバイルブロードバンド回線は、7.2Mbpsや21Mbpsといった、当時にしては十分な高速通信を、しかも使い放題で利用可能というサービスでした。

 また後発のこれら2社は、MVNOと組むことで、自らリーチできない利用者にもサービスを提供したいとして積極的にMVNOを通じた拡販に挑戦しました。この頃MVNOに参入したのは、ADSLや光回線といった固定のインターネット回線をPC向けに提供するインターネットサービスプロバイダー(ISP)や、ノートPCを購入する客にモバイルWi-Fiルーターを合わせて提案したい家電量販店といったプレイヤーです。イー・モバイルやUQ WiMAXをそれぞれのブランドのショップで契約するよりも安く契約できる、これらISPや家電量販店系のモバイルWi-Fiルーターは、ノートPCを自宅外でも使いたい多くの「モバイラー」が契約し、急速に拡大を遂げていきました。

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