背面が光る斬新なデザインのスマートフォンや、シースルーのワイヤレスイヤフォンといったデザインに特徴のある製品開発を手掛ける英Nothing Technologyは、日本で新製品をいち早くお披露目するイベントを4月18日に開催した。同イベントでは、ネーミングルールを改めた「Nothing Ear」とその廉価版にあたる「Nothing Ear (a)」の2つを発表。翌19日から、蔦屋家電や一部セレクトショップなどで先行販売を開始した。
2つのイヤフォンは生成AIの「ChatGPT」とも連携し、タッチ操作でアシスタントのように呼び出すことが可能になる。スマホのNothing Phoneも、ソフトウェアアップデートでChatGPTを組み込み、同モデルのユーザーインタフェースに合わせたウィジェットや、文字選択から呼び出せるメニューなどが追加される。
この発表会はグローバル向けという位置付けで、発表済みのモデルの日本版を導入したわけではない点が異例といえる。Nothing TechnologyのCEO兼創業者、カール・ペイ氏も来日し、イベントに登壇している。あえて日本を発表の場に選んだのは、同社にとって日本市場の重要性が高まっているからだという。では、Nothingはどうやって日本市場を攻略していくのか。発表会で語られたことやインタビューから、その戦略を解説していきたい。
スタートアップとして2020年10月にペイ氏が設立したNothingだが、翌2021年7月には最初の製品として「Nothing Ear(1)」を発表している。2022年には、スマホに進出し「Nothing Phone(1)」が登場。2023年には後継機となる「Nothing Phone(2)」も発売した。直近では、Nothing Phoneのエッセンスをミッドレンジモデルに落とし込んだ「Nothing Phone(2a)」の販売も開始しており、日本でも発売済み。4月22日には、家電量販店やIIJmioでの取り扱いがスタートする。
同社は、Nothing Ear(1)のころから日本での展開も視野に入れてきた。同モデルは、2021年8月に米国や英国、カナダなどと同時に発売された他、スマホも初号機となるNothing Phone(1)から、日本市場で展開している。新モデルのNothing Phone(2a)は、日本市場向けのローカライズにも注力し、同社のスマホとして初めておサイフケータイにも対応した。
ワイヤレスイヤフォンのNothing Earシリーズは、日本での販売も成功。ペイ氏によると、「アメリカに次いで、日本は2番目に大きな市場になった」という。これをきっかけに、Nothingは「日本に本格進出することを決定した」(同)。一方で、スマホのNothing Phoneは、「ソフトローンチ」(同)という位置付けだった。ペイ氏によると、その理由は次のようなところにある。
「振り返ってみると、われわれのスマホにはFeliCaなどの(日本市場における)基本的な機能がなく、そこまでのエネルギーを投下してこなかった」
ペイ氏自身も3週間日本に滞在し、「切符を買わなければならない煩わしさを感じた」(同)というだけに、Nothingがその重要性を認識していなかったわけではない。FeliCa対応を見送ってきたのは、日本独自の仕様がコストアップにつながるのはもちろん、SKU(商品管理上の品目数)が増えることでオペレーションが煩雑になるからだ。特に、Nothingのようなスタートアップにはそれが経営上のリスクになりうる。ペイ氏は、「コストやビジネスを成立させるのが難しかった」としながら、その理由を次のように話す。
「グローバルでSKUが同一だと、国や地域の間で在庫調整ができるが、FeliCaを載せたSKUができると、日本だけでそれを全て売らなければならない。認証も含めてコストもかかり、日本で数字を成り立たせることが重要になる」
「それでも、Nothing Phone(1)、Nothing Phone(2)は非常にポジティブな反響をいただけた」(同)のが、Nothingとしての評価だったという。「FeliCaのような基本的な機能がない中では市場のポテンシャルを正確に捉えられないので、Webもトラックした」(同)ところ、日本で150万のユニークユーザーが同社のサイトを訪問していた。これは、世界で5番目に多いアクセス数だったという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.