Nothing Earシリーズの販売規模や、過去に投入してきたNothing Phoneへの反響を踏まえ、NothingはNothing Phone(2a)にFeliCaの搭載を決定した。価格がこなれたミッドレンジモデルであれば、販売数も見込みやすい。ミッドハイのNothing Phone(1)や、ハイエンドモデルとして投入したNothing Phone(2)よりも、FeliCaへの対応はしやすかったはずだ。Nothing自身も、Nothing Phone(2a)でビジネスを拡大する方針だ。ペイ氏は、次のように語る。
「会社としてスケールする中で、異なるニーズにこたえる必要があった。世の中には、フラグシップモデルが必要な人もいれば、ミッドレンジモデルが必要な人もいる。会社の成長に合わせて、今後はエントリーモデルも必要になってくると思っている。ありがちだが、フラグシップモデルはこだわって作り込むが、ミッドレンジやエントリーモデルで手を抜くブランドはたくさんある。そういう現状があるため、逆にチャンスだと思っている」
同時に、ペイ氏は日本市場でも「規模を拡大していかなければいけない」と語る。スマホ業界は、「ニッチなプレイヤーが生きながらえる業界ではない」(同)からだ。
「スケールがないと投資ができず、投資ができないとエンジニアリングが磨かれない。エンジニアリングが磨かれないと、認知されずスケールが出せない。スケールがないと、ネガティブスパイラルに陥ってしまう。スケールすることで、それをポジティブスパイラルに転換することができる」
日本での成長戦略の一環として、Nothingは日本支社であるNothing Japanを開設。同社を統括するマネージングディレクターには“Xperiaの名付け親”でもある、元ソニーの黒住吉郎氏が就任した。黒住氏は、ソニー・エリクソン(現ソニー)でXperiaなどの企画に携わったのち、キャリア勤務を経て、再びソニーでイヤフォンなどのオーディオ商品を統括してきた。グローバルビジネスの経験も長く、海外企業でかつスマホとワイヤレスビジネスを主力とするNothingには“適任”といえそうだ。
黒住氏は、Nothing Japanのマネージングディレクター就任前から、Nothingを「気になるブランドとして見ていた」という。
「ブランドを作るためにコテコテにしたものではなく、フィロソフィーを持って向かい合う一方で、適正価格や技術的な取り組みもある。Nothing OSのような取り組みは、いろいろなメーカーがトライしてはやめてきたもの。ユーザーにすてきなプロダクトや体験を提供したいということは、外から見ても感じていた」
黒住氏は、日本での販路も「拡大したい」と意気込む。一方で、「日本ではキャリアや家電量販店などいろいろな販路があり、われわれに拡大したいという意思があっても、需要には合わせていかなければならない」と話す。体制を整え、一気に販路を広げていくというのではなく、徐々に拡大していく方針のようだ。販売量の大きいキャリアでの取り扱いについても、「まだその土俵には乗れない」としながら次のように語る。
「大きなビジネスをしようとすると、FeliCaなどの要求仕様を満たしているかや、供給がどれだけでできるのか、一緒にどれだけマーケティングができるかという話になる。今はそれを作っているステージ。最初に足場を固めてからでないと失礼になってしまうので、むやみにこれを売ってとは言えない。(日本市場では)モトローラもXiaomiもかなりの気合いを入れているが、われわれはお客さまやコミュニティーと一緒になって育っていくブランド。今はあまり無理をするのではなく、しっかりお客さまやコミュニティーとブランドの核を作っていく時期」
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