その反面、黒住氏は「通常のやり方だけにとらわれたくない」と語る。冒頭で挙げたように、KITH TOKYOやビームス、ユナイテッドアローズといったアパレルが中心のセレクトショップでNothingの製品を販売しているのは、その一環だ。デザインにこだわり、ライフスタイルを提案する製品だからこそ、既存のキャリアや家電量販店以外への広がりがある。
また、Nothingはコミュニティーを生かし、日本語フォントを開発している。Nothing Phoneには「Ndot」というドットで構成された独自のシステムフォントが内蔵されているが、現状ではアルファベットしかない。英語のままだと特徴的な設定画面などのユーザーインタフェースが、日本語にすると一般的なAndroidとほとんど変わらなくなってしまうという問題があった。
「フォントが日本語対応していないが、今、コミュニティーの方と一緒に作っている。どうやってシステムに入れるかは、サイズ感などを検証しなければならないが、原型はでき、いいものになりつつある。われわれとしても作りたいと思っていたが、フォントは難しい。日本の方の力を借りて、今後しっかりやっていきたい」
黒住氏は、あくまで日本支社の代表的な立場のため、「今のポジションだと、そこまで深くデザインやプロジェクトをリードすることはできない」。とはいえ、「日本の声はしっかり伝えていきたい」と話す。Nothingでも、「日本の声は非常に強く、市場や文化、デザインへのこだわりにはリスペクトがある」(同)という。こうした日本のニーズをしっかりよく理解し、本社に伝えていくことも同氏の役割だという。
現状、日本に研究や開発の拠点を設ける予定はないというが、「日本は最先端のテクノロジーに強いので、ここから学ぶことができる」(同)。ペイ氏も、「テクノロジーに関して期待値が高く、われわれでも気付かないところに指摘をいただけたり、意見を持っていたりする。この市場でブランドを確立し、ニーズに応えられれば企業として成長していける」と語る。Nothingの規模を拡大するにあたり、日本市場の果たす役割は大きい。
とはいえ、当初は目新しかったデザインやギミックも、何世代も続くと飽きられてしまう恐れが大きくなる。日本市場でもそれは同じだ。次にNothingが他社と差別化していけるのはどこになるのか。ペイ氏は「この数年でソフトウェアの成熟を達成できた。世の中にあるAndroidの中で、最良のものが作れていると自負している」と語る。黒住氏も、Nothing EarやNothing PhoneのChatGPT対応を挙げ、「ここまでシームレスにChatGPTを融合させているメーカーはあまりない」と話す。
ペイ氏は、「今後もそういった形のものはたくさんやっていきたい」としながら、生成AIへの期待をのぞかせる。
「モバイルのテクノロジーはそこまで姿を変えていないが、生成AIが出てきて、可能性の領域が広がっている。イノベーションの動きが活発化しているので、その先端を走り、自分たちの中に取り入れていきたい。生成AIにはエンジニアも必要で、そこはコストもかかるところ。強いとはいえないが、全力を尽くしたい」
対話型のAIを上手に統合できれば、スマホとワイヤレスイヤフォンの両方を主軸に据えているNothingの強みになる。黒住氏も「両方出している意味が出てくる。そこはNothingが時代を切り開きたい」と語る。ChatGPTの統合はあくまで、その最初のステップ。AIの統合は「野心的なロードマップを描いている」(同)というだけに、今後の展開にも注目したい。
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