ROG Phone 8はクセこそあるが、Zenfone並みに強化されたカメラ性能、IP68の防水防塵性能を備えたことで、ゲーミングスマホながら普段使いしやすくなった印象だ。同社が「第3世代」と銘打った背景には、さらなるゲームパフォーマンスはもちろん、AIアシスト機能や、カメラ機能強化や防水などの普段使い要素までしっかり強化してきたことが含まれるのだろう。
一方で“ゲームに特化”した構成だったからこそ、前作までは他社製品と明確に差別化できていた面もある。特に本体スピーカーは顕著で、一般的なスマートフォンと比較すればROG Phone 8は高音質なものの、ROG Phone 7の左右対称のフロントステレオスピーカーと比較すると明らかに引けを取る。画面のパンチホールインカメラも、前作では「ないこと」で没入感を高められる点を他社への差別化になっていただけに、この方針転換には驚いた。
これらの部分は妥協したと取れるため、「ゲーミングスマホ」としては魅力が落ちた部分だ。それでも“ゲームに特化したサブスマホ”ではなく、普通に使うスマートフォンとしてROG Phone 8は使いやすく仕上がったと評価したい。
この変化を鑑みると、ASUSのスマートフォン戦略が少し変化したように思われる。今後はROG Phone は一般的な機種に近づき、Zenfoneはややゲーミング要素の強い機種になると考えられる。
この方針転換はコンパクトハイエンドをアピールした「Zenfone 10」や「9」の不振が原因と考えられる。日本では大きな支持を集める小型のZenfoneだが、諸外国ではその限りではなく、競合の多さや知名度不足からROG Phoneよりも売れていない地域も存在する。
この流れが世界的ならば、大画面を求める市場ニーズに応えるため、Zenfone 11 Ultraのような機種を展開するのは至って自然だ。むしろROG Phone 8はZenfone 11 Ultraにゲーミング要素を追加したチューンアップモデルと評価した方が適切なのかもしれない。
ベースがZenfoneという一般的なスマホなら、各種スペックが類似する点はプラットフォームの共通化と理解できる。同じパーツを使用することでコスト圧縮も可能だ。ROG Phone 8は自動車でいうところの、市販車ベースにサーキットを追い込めるようなオプションを装備した“レーシンググレード”に近い感覚だ。
さて、気になるのは価格だ。先行販売している香港ではROG Phone 8が8499香港ドル(約16万3000円)、上位モデルのROG Phone 8 Proは9498香港ドル(約18万2300円)、最上位のROG Phone 8 Pro Editionは11498香港ドル(約22万円)だ。いずれも日本でいう税別価格となり、決して安価ではない。オプションの空冷ファン「AeroActive Cooler 8」は799香港ドル(約1万5000円)だが、本体と同時購入すると日本円で約8000円割引されるなどの特典もある。
一方で、カメラハードウェアを変更してまで安価に提供した中国向けのTencent版は4799RMB(約10万円から)だ。グローバル版と比較するとかなり安価に仕上げたものの、ここまで落とさないと競合の「nubia REDMAGIC 9 Pro」(同4699RMB〜)に負けてしまう厳しい市場だ。カメラのスペックダウンは背に腹は代えられない苦肉の策と評価できる。
日本での展開はほぼ確実と考えられるが、為替の関係もあってROG Phone 8は高価になりそうだ。上記の価格は税別価格のため、日本で発売される場合はこの価格+消費税が参考価格となる。
最後になるが、ROG Phone 8は「ゲーム特化」のゲーミングスマートフォンだけでなく、本体の軽量化、カメラ機能の強化、IP68の防水性能、ワイヤレス充電対応などで普段使いでも選びやすい機種に仕上がった。MVNOなどで取り扱われると日本でも大きく注目される1台になりそうだ。
佐藤颯
生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。
スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。
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