ソフトバンクのモバイル事業、官製不況を脱し増収増益に 宮川社長「本当に胃が痛い2年半」と振り返る(1/2 ページ)

» 2024年05月10日 16時42分 公開
[小山安博ITmedia]

 ソフトバンクは9日、2024年3月期の連結業績を発表した。売上高は前年比3%増の約6兆840億円、営業利益は同17%減の8761億円だった。営業利益は前年度のPayPay子会社化に伴う再評価益の影響で減益となっており、再評価益の約2948億円を除くと14%の増益となるため、「実力ベース」(宮川潤一社長)では増収増益となった。

 特に主力のモバイル事業が増収となったことで、携帯料金値下げによる影響を脱したことが貢献。モバイルの減収をカバーするために注力していたエンタープライズなどその他の事業が好調で、全セグメントでの増益となった。

 宮川社長は、これまでに上方修正していた通期予想をさらに上回る業績となり、中期経営計画での予想も上回る見込みとして、予想超過分を生成AIなどの成長投資に振り分ける方針を示した。

ソフトバンク宮川潤一 ソフトバンクの宮川潤一社長

「ようやく」増収に転じたモバイル事業、全セグメント増益に

 コンシューマー事業におけるモバイル売上高は、携帯料金4割値下げという官製値下げ以降、減収が続いていた。2023年5月の中期経営計画では2023年度を底に反転して2024年度から増収になるとしていた。ところが実際は2022年度の時点で底を打ち、2023年度に前倒しで反転して増収になった。

ソフトバンク モバイル売上高の中期経営計画と実際の進捗

 営業利益も同様に2022年度を底に反転する計画だったが、計画以上に利益が積み重なり、増益幅が拡大。255億円の上方修正となった。中期経営計画でスマートフォン契約数を年100万水準で純増を続ける予想が、2023年度には147万増と順調に伸びていることも奏功した。

ソフトバンク 営業利益は予想から上振れした

 月額料金の値下げに対して付加価値サービスや新サービスによってARPU(1ユーザーあたりの月間平均収入)を向上させる取り組みも順調で、PayPayを始めとしたグループ経済圏をさらに拡大・強化していく方針だ。

ソフトバンク これまでの取り組み
ソフトバンク グループ経済圏の拡大を目指す

 宮川社長は、携帯料金値下げ後すぐに社長就任した2021年4月以来続いていた減収から増収に転じたことについて、「2年半、本当に胃が痛い思いでありとあらゆることを勉強し、各店舗も回った」と振り返って、「長いトンネルをようやく(抜けた)」と安堵(あんど)する。

 結果として他の事業も伸びてモバイルが反転し、中期経営計画の目標を上回る想定となったことで「思った以上に去年(2023年)はよかった。実は今期は本当に楽」と自信を見せる。

 さらに、現在の1株を10株に分割することで投資金額を引き下げて、新たに株主優待としてPayPayポイント1000円分(1単元あたり)を進呈する。これによって実質利回りが10.1%まで拡大することで、特に若年層の個人株主層を拡大したい考え。若年層株主によって長期的な成長にとって重要だと宮川社長は強調する。

ソフトバンク 1単元あたりの投資金額を引き下げるために株式を10分割
ソフトバンク 新たな株主優待によって実質利回りは10.1%になるという

 モバイル事業では5Gネットワークが前年比2万局増の8.5万局まで拡大し、5G人口カバー率が95%を超えた。5Gの利用率も40%以上の向上となったが、現状は4Gの転用が主力。5G SAの早期拡大を図るために、KDDIと協業して5G JAPANを設立したソフトバンクは、アンテナ、無線機、伝送路を共用として3.8万局以上を構築。CAPEXの削減効果は450億円以上に達したという。

ソフトバンク 5Gネットワークも順調に拡大

 これが成功したことから、地方都市の5Gのみという協業範囲をさらに拡大し、全国で4Gと5Gの基地局を共同構築することにした。2030年には累計で10万局、CAPEX削減効果1200億円を目指す計画だ。

ソフトバンク KDDIとの協業も順調。これをさらに進める

 この5G JAPANは、2020年にスペイン・バルセロナから帰国する際に田中孝司KDDI会長と同じ部屋になり、そこで「5Gへの投資は(従来と)桁違いになる」という話になったという。両社のユーザー数やカバーすべき国土の広さを考えると、エリア構築に苦戦するという認識で一致した。さらに携帯料金値下げが話し合いを加速させて5G JAPANへとつながったそうだ。

 現状は10万局を目指すが、「全然足りない」と宮川社長。5Gに続く6Gはさらに基地局が必要になると予想され、こうした取り組みはさらに拡大していく見込みだ。なお、他に楽天モバイルやNTTドコモが5G JAPANに参加したいという場合「ウエルカムだが、簡単ではない」という。両社がこれまで協議して取りまとめた仕組みのため、参加する場合は同様の議論が必要で、「時間はかかるが議論を進めることは可能」というのが宮川社長の判断だ。

 エンタープライズ事業も中期経営計画の目標通り、売上高、営業利益ともに前年比2桁成長となるそれぞれ16%増、13%増を達成。今後も継続して拡大を目指す。

ソフトバンク エンタープライズ事業の売上高
ソフトバンク 同営業利益
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