ソフトバンクは8月4日、2023年第1四半期(4〜6月)決算を発表した。決算説明会のプレゼンテーションで主題となったのは、生成AIへの取り組みだ。
宮川社長は生成AIについて「検索エンジンやOS、クラウドなどと比べても桁違いに重要なテクノロジーと考えている」と強調した。
ソフトバンクは生成AI開発において(1)計算基盤、(2)技術者、(3)顧客接点という3つの強みを有するという。
計算基盤はNVIDIAのスパコン「NVIDIA DGX SuperPOD」による環境を構築しており、9月末頃から稼働を開始する。自社開発の生成AIの学習は2024年の1年間をかけて行うため、本格展開は2025年以降となるようだ。
開発を担う組織としては、3月に設立したことが明らかになったが、ソフトバンクは生成AIの開発を担う100%子会社の社名が「SB Intuitions」となったと発表した。同社は8月1日から本格稼働しており、自社開発の(大規模言語モデル)の開発に取り組む。
日本語に特化した大規模言語モデルを開発する意義は、日本の文化や商習慣へ対応だ。日本語のデータセットで学習することで、日本語に基づいた知識の蓄積をできるようになるという。ソフトバンクでは特に行政や医療、交通や観光といった専門分野で活用できる生成AIの開発を目指すとしている。
一方で、ソフトバンクは他社が開発した生成AIエンジンの活用も進める。宮川社長はMicrosoft、OpenAI、Googleなどと提携し、「マルチ生成AI体制」で法人向けサービスを展開する方針を示した。
このうち、Microsoftについては8月2日に戦略的提携を発表している。Microsoft Officeなどと連携する生成AIサービス「Microsoft 365 Copilot」の早期アクセスプログラムに参加しており、ソフトバンク社内の業務で活用しながら知見を重ねている段階だという。
生成AIに関連して、「Yahoo!検索」のエンジンを刷新するのかという質問が寄せられた。
Yahoo!検索には、2011年からGoogleが検索エンジン技術を提供しているが、これが置き換えられる可能性がある。Yahoo! JAPANを運営するZホールディングスの出澤剛社長は、8月3日の同社決算会見の中で検索エンジンの切り替えを含めた技術的検討を行っていることを明らかにしている。
ソフトバンクの宮川社長は、「Zホールディングスが社内で一生懸命、検討している。決定事項は現時点ではないと聞いている。親会社として見守っていきたい」とコメントした。
検索エンジンの切り替え候補について「選択肢は3つあると思う。Googleを継続するか、Microsoftに切り替えるか、協業相手のNAVERさんのエンジンを使うか」と言及している。
ソフトバンクの2023年度第1四半期決算は、売上高が1兆4297億円(前年同期比プラス5%)、営業利益は2463億円となった。
このうちコンシューマー事業での売上高は6687億円となった。2020年のスマホ料金値下げによる収入減が続いているが、減少幅は縮小傾向となっている。宮川社長は「長いトンネルの出口が見えてきた」と値下げ影響からの脱却が近いことを表現した。
注力領域として重視するエンタープライズ事業は、売上高1841億円(同プラス4%)となった。LINE、ヤフーを主力とするメディア・EC事業は前年同期比2%増収の3852億円を記録した。
ファイナンス事業の売上高は526億円で、前年同期比で約2.8倍となった。一方で、同事業の営業収益はマイナス18億円の減益となった。これは、2022年度第3四半期にPayPayを連結子会社化したことが要因となっている。
質疑応答では、スマホの値引き規制について宮川潤一社長が本音をこぼす一幕もあった。また、楽天モバイルの動向に対して、宮川氏の見解を問う質問が続いた。
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